天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

【空京万博】海の家ライフ

リアクション公開中!

【空京万博】海の家ライフ
【空京万博】海の家ライフ 【空京万博】海の家ライフ

リアクション

 内情はどうあれ、雅羅ロボの登場は掃除屋達にとって心強いものであった。
 これで戦局的には、イコン二体対巨大クラゲ二桶のイーブンになったのだから。
 因みに、セルシウスは未だ触手プレイを受け、青息吐息の様子。
 そんな中、雅羅ロボがクラゲの触手を手で掴む。
「夢悠!! 弾丸ジャイアントスイングでこいつを投げ飛ばすわよ!!」
「雅羅!! やっとわかってくれたようだね!! 了解だ!!」
 言葉の一部に感激した夢悠が雅羅のオーダーに頷く。
 雅羅ロボが足腰に力を入れ、クラゲを振り回し始めた時、思った以上に柔らかかった海底の砂地が崩れる。
「あ!?」
 バランスを崩す雅羅ロボ。
 倒れた拍子にコクピット内にも衝撃が走る。
「く……夢悠、大丈夫?」
 雅羅が見ると、夢悠が目を回している。倒れた時にどこか頭をぶつけたらしく、ぷくりとタンコブがある。
「どうして……こう厄災が私ばっかり……」
 モニターには巨大クラゲが迫るのが映る。
 覚悟を決める時かな……と雅羅が思う。
 だが、雅羅ロボに迫っていた巨大クラゲは突如、横へはじき飛ばされる。
「!? だ、誰!?」
「甘いぞ、雅羅!! この私の助けを借りねば厄災とやらは吹き飛ばせぬか!!」
 雅羅ロボの傍に立つ、身の丈3メートル程のサイズの人形ロボット。コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)である。
 その白く大柄なボディの胸には様々な色に変化するジュエルが輝いている。
「私は、蒼空戦士ハーティオン!!」
 ハーティオンが、ビシィッと巨大クラゲを指さす。
「骨抜きにされたクラゲよ!! だが、貴様達がいくら私達を脅かそうとも、人の心には決して抜けない骨がある……人、それを正義と言う……」
 上空から黒いユニットがハーティオンに向けて降りてくる。
「貴様らに名乗る名はない!! いくぞ!! 龍心合体!」
「名乗ったじゃん?」という突っ込みが聞こえてくるのを無視したハーティオンが華麗に跳躍し、太陽を背にした逆光の中、ユニットと合体する。
「蒼空勇者! ドラゴ・ハーティオン! 見参!」
 ズズーーンッと着地するイコンを一回り小さくしたサイズまで巨大化したコア。
「う……ううん」
 意識を取り戻した夢悠が頭を振って目を瞬く。
「あ、あれ? 何か増えてる?」
「夢悠! 私達も行くわよ!!」
 雅羅ロボがドラゴ・ハーティオンと共に、巨大クラゲに飛びかかる。
 さながらロボットアニメの様な燃える戦いに、見守る客は「ショーなのか?」とざわつき始める。
 ハーティオン達、掃除屋イコン軍団と巨大海獣達の戦いを見ながら、
「……何あの怪獣大戦争。あ、触手で沈められた。でも負けてない、沈め返してる」
 そう呟いたのは、観客の中にいた小さな少女。コアのパートナーであるラブ・リトル(らぶ・りとる)であった。
「あ、見物人が……え〜と」
と、ラブがマイクを手にする。
 コホンと咳払いを一つしたラブが、声を張り上げる。
「え〜、皆様! あれが万博記念海水浴場名物、「正義の勇者ロボット達と、悪の海獣大決戦プロレス」になりまーす♪ 是非、海の家で飲み物でもお買い上げになられながら、ご見学下さい♪」
 突如始まったラブの実況中継に、観客の大半が「なーるほど」と頷く。
「両者とも本気と書いてマジで盛り上げようと頑張っているので、余り近寄らないで下さいね〜! 危ないですよ〜? あ、こら、そこー! 写真は1枚10Gよ!」
 ラブのマイクによる解説が皆のボルテージを上げていく。

「盛り上がってるなぁ……こっちは大体終わったけど」
 エンリルから降りた朔が、ロボットプロレスを見ながらそう呟く。
 イコンも朔も先ほどまで続いた戦いでかなり消耗しており、そっちの参戦は見送らざるを得ない。
 ふと海を見ると、激戦の末何とか仕留めた巨大クラゲの残骸が見える。
 その体は既に水と化し、海へと還りつつあるようだ。もう一人も然り……。 巨大クラゲを倒す隙を作るために、朔に投げられ、苗床となったエリヌースである。
「クスクス……どうしようかしら、このまま苗床で放っておいてもそれはそれでいいんだけれど」
 苗床化したエリヌースを前に、アテフェフが言い、みすみが抗議の声をあげている。イロハは消耗しすぎたようで、浜で大の字である。
「アテフェフさん! エリヌースさんの犠牲を無駄にしちゃ駄目です!!」
「……そうね、じゃあ、朔が私のマッサージを受けてくれたら、治してあげようかしら?」
 みすみがバッと振り向くも、朔は咄嗟に顔を海へと向ける。
「朔さん!! お願いします!!」
「……アテフェフ、普通こういうのはマッサージをしてくれたら、だと思うんだ?」
「クスクス……却下よ。朔は疲れているんだから……」
 朔が、頭を掻いてエンリルから飛び降りる。
「アテフェフ……くれぐれも変なことは……」
「ええ……たっぷりしてあげるわ……クスクス」
 顔を上気させたアテフェフが、手をワキワキさせて朔に近づいていく。
……その後、復活したエリヌースを前に、目を充血させたみすみが言った一言が全てを物語っていた。
「大人って……凄いんですね……」