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とりかえばや男の娘 二回

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とりかえばや男の娘 二回

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「どうして、こんな所に隠れるのです?」
 エッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)は六角道元に尋ねた。
 道元は、鎧に身を固めて壁の裏の隠し部屋に潜んでいる。そこには、エッツェルの姿もあった。彼は、今回もヤーヴェ側についているのだが……。
「正々堂々と戦ってやればいいのではないでしょうか?」
 すると、道元はあざけるように言った。
「あのような連中、わしが相手にような者ではない」
「そうでしょうかねえ? 私には彼らが善戦しているように思えますが……。ほら、間なく忍び達を倒してここに向かってきますよ」
「ふん。どのみち、奴らはここに入る事はできん。この壁にも仕掛けが施されている。向こう側から無理に開けようとすれば、ここと、七番目の部屋をのぞき、全てが崩壊する仕組みになっている。そうなれば、奴らは家もろともガレキの下敷きだ」
「……そういうことですか」
 エッツェルはうなずいた。
「道元さんは腹黒どもと違い、なかなか忠義心のありそうな武人であると思っていたのですがねえ……」
 その言葉に、道元は何も答えようとしない。
 エッツェルは重ねて聞いた。
「そうそう、一つ気になったのですが 道元さん。あなたは邪鬼に忠誠を誓っているのですか? それとも刹那さんに忠誠を誓っているのですか? または己の野望や欲で動いているのですか?」
「なぜ、そのような事を聞く?」
「ふふふ……すこし興味がでまして、ねぇ」
「良いだろう。教えてやる。
始めは、あの十兵衛とかいう奴を倒すのが目的であった。客分のくせに、大殿にやたらと気に入られている奴が気に入らなかったのよ。刹那殿や腹黒殿に味方したのも、ただ、奴と倒したいがためであった。しかし、今は違う。もっと大きな目的のために戦っている」
「大きな目的とは?」
「この、葦原を手に入れるためよ」
「葦原を?」
「そうだ。今の刹那殿は、この葦原を拠点にこの世界全てを手に入れる事を考えておられる」
「書院番頭としの日下部家の力を利用してですか?」
「そうだ。刹那殿はきっと望む物を手に入れるであろう。わしはあの方について行く。そしてわしも全てを手に入れるのだ。今となっては、十兵衛や竜胆などという小物達には既に眼もくれておらぬ」
「しかし、日下部家を手に入れるには竜胆が邪魔だから、刹那と共謀して無実の罪を着せたと……よく、分かりました」
 エッツェルはうなずくと、奇剣「オールドワン」を手にした。
「何をする気だ?」
 六角が青ざめる。
「裏切る気か?」
「裏切る? ふふふ……私は美しきモノの味方です? あらゆる意味で美しくない邪鬼ヤーヴェと強く生きようとする輝きに満ちた美しい竜胆。もはや付く側は考えるまでも無くなった」
 そう言うと、エッツェルは六角に斬り掛かって行った。とっさに飛びすさる道元。しかし、部屋が狭すぎて十分な距離がとれない。
「うぬ……!」
 しかし、彼とて忍びの頭領までつとめる男である。とっさに刀を抜き、エッツェルにを袈裟懸けに斬る。確かに手応えはあった。エッツェルの体から血がほとばしる。
 しかし、
「なぜ、倒れぬ? それほどの傷を負いながら……」
「ふふふ……私は痛みも急所もないアンデッド」
「アンデッドだと?」
 道元の顔に焦りの色が見えてくる。
「アーマードさん。みなさんに、ここを開いて差し上げましょうか」
 エッツェルはアーマード レッド(あーまーど・れっど)に言った。
「エッツェル様 ノ 行カレルママニ……」
 アーマードは答えるとガトリング砲で部屋の壁に大穴を開けた。隠れていた道元の姿が露になる。
「さあ、外に出ましょう」
 エッツェルは奇剣「オールドワン」でじりじりと道元を追いつめて行く。道元は、あとずさり、ついに十兵衛達のいる壁の外へと姿を現した。
 ネームレス・ミスト(ねーむれす・みすと)が叫ぶ。
「ククク……たのしい……パーティ……の……時間です」
 そして、まだ戦っている道元手下の忍び達に無数の「瘴気の獣」をけしかけた。巨大な毒蛇や猟犬や虎が忍び達に襲いかかって行く。
 ネームレスも2m、200kgの大戦斧を手にし忍び達の中に躍りかかって行く。
「ク……クハハ……アーーーハハハハハハ!!!」
ネームレスは笑い声とも、叫び声ともつかぬ奇声を上げながら忍びを叩き斬って行く。


「見ろ、あそこに道元が」

 シオン・グラード(しおん・ぐらーど)は十兵衛に呼びかけた。
「うん」
 十兵衛はうなずくと、道元に向かって移動しはじめた。シオンもその後を追い、さらにその後をナン・アルグラード(なん・あるぐらーど)が追いかけて行く。
「勧善懲悪は好きではないが…大義名分を持って悪を討てるなら、話は別だ、これがね」
 ナンは小さくつぶやいた。
 しかし、
「行かすか!」
 忍び達が襲いかかってくる。
 シオンはスタンスタッフをふるった。忍びの体に電流が走り動けなくなる。

 ナンは殺気看破で十兵衛を狙う敵の気配を察知した。そして、心頭滅却で敵の位置をさぐりあてると、
「そこだ!」
 と、叫んで上を見た。
 天井から忍びが降りてくる。
 ナンは軽身功と先の先で素早く忍びに飛びかかると、ヒートマチェットで忍びの体をざっくりと斬った。忍びが悲鳴を上げて床に落ちて行く。


「うぬ……なぜこのような事に……」
 道元は目の前に繰り広げられる光景を見て歯噛みした。
 その道元の目の前に、十兵衛が立つ。まるで戦意などないかのごとく、両手ともだらりと下げて……。
 その後ろではシオンがスタンスタッフを構えて立っている。
 シオンは言った。
「六角道元と見受ける。覚悟してもらおう。あんたはここで倒されてもらう」
「笑わせるな」
 道元は言った。
「お前らごとき雑魚に、わしが倒せると思うか?」
 すると、十兵衛がからかうように言った。
「その割に何だ? 鎧など着込んで。道元殿ともあろうものが、それほど命が惜しいか?」
「なんだと?」
 道元が気色ばむ。
「わしには、野望がある。お主らごとき虫けら相手に命を落とすわけにはいかぬ」
「守りに入ったが、運のつき時」
「まだ、言うか!」
 道元は血相を変えて叫ぶと、刀を抜いて飛びかかってきた。十兵衛はにやりと笑い、腰を沈めつつ刀を抜く。そして、逆袈裟斬り! 道元の手首から血がほとばしった。
「く……!」
 道元は腕をおさえる。その隙を狙い、シオンが背後から正義の鉄槌を叩き込む。そして、ナンが最高温度まで熱くなったヒートマチェットで道元の体を鎧ごとバッサリ行った。身動きの取れなくなったところを、シオンが逮捕術で捕縛。

 こうして、一同は道元を倒し、いよいよ残るは、七つ目の部屋。刹那の待つ部屋のみとなった。