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とりかえばや男の娘 二回

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とりかえばや男の娘 二回

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 刹那の言葉に、奈落人達が襲いかかってくる。
 彼らは口々に、呪文のように唱えていた。

「私たちは蘇るのだ」
「求めていた愛を手に入れるために」
「この、魂の痛みから逃れるために……」

 それを聞いた椎名真は、頭の中で諒に問いかける。
『魂に刻まれた痛みって、本当にもう一度欲しいものを手に入れることで解放されるのか、諒?』
『さあな。しかし、襲いかかってくるのは蹴散らすしかないだろう』
『そうだね』
 真は頭の中で答えた。

 その二人に向かって、刀を持った女が襲いかかってくる。
 諒は【用意は整っております】で女の動きを把握すると、【ナラカの闘技】の手刀で女の手から剣をたたき落とした。そして、怪我をさせないように拘束する。

「しっかりしろよ! おい!」
 諒は女の肩をつかんで揺さぶった。

「……あいつの言うような方法で解放されるんだったら、ナラカは今頃空っぽだ!」
「空っぽ?」
「そうだよ。騙されてるんだよ、貴様は……」
「騙されている?」
「ああ、目、覚ませよ見ててこっちが辛い」
 諒の言葉で女の目に光が戻ってくる。
 そして、やがて……
「ここは……?」
 と、女は不思議そうに辺りを見回した。
「正気に戻ったか?」
 諒は笑顔を浮かべる。頭の中で真が話しかけてくる。
『よかったね。諒。その人はとりあえず、拘束しておいて……でも、奈落人に憑かれるってことは少なからず付け入られる要素があった、ってことは覚えててもらいたいかな
俺が言えた節じゃないけど(苦笑
諒、そこらあたりもちゃんと伝えてくれ……るかな(汗)


『言いたい事は言ったから、後はカガチと葵に任せるよ』
 アナスタシアは、頭の中で葵に語りかけた。
 すると、葵が答えた。
『任せると言われても主導権はアナだから』
『あたしに戦えっていうの?』
『大丈夫。僕の言う通りにするといい。まずはそうと息を潜めて、そう【隠形の術】だ。それで敵の後ろに回ったら一体ずつ仕留めるンだ。【ブラインドナイブス】の要領で、【殺気看破】を巧く使って幻術を見破ってね』

 アナスタシアは、言われたとおりに息を潜めてみた。アナスタシアの姿が見えなくなる。そして、武器を持って暴れる男の後ろに周り、背後から首を絞めた。殺さない程度に締め付けると、気を失った男を縄でしばる。
 すると、葵が頭の中でアナスタシアに語りかけた。
『その調子だ。大丈夫、全て僕の体に染み付いている。アナは思うがまま動けば良い。いざとなったらカガチが盾になるよ だろ?』
 言葉通り、カガチはアナスタシア(葵?)の前で、奈落人を相手に戦っていた。
 【超感覚】を駆使するために…猫耳と尻尾が生えている。
 その時、頭上から、突然忍びが現れた。忍びはアナスタシアを狙っていた。カガチの【超感覚】が察知する。
「危ない!」
 叫ぶと、蛟紡【銘刀【風雅】】を手に気配のした方に駆けていく。
 忍びがくないを投げて来た。カガチは【スウェー】でそれを避けると【受け太刀】で、忍びの二の太刀をかわした。
 と、アナスタシアが葵の声で【恐れの歌】を歌いだす。忍びの心に恐れの感情がわき上がり、一瞬の隙ができる。それを見逃さず、カガチは忍びを一刀両断した。


「生前の記憶をろくに有しておらぬ者に生前のままの姿で蘇らせてやる、いったいどの口がそのようなたわ言を言えるのか?」
 中原 鞆絵(なかはら・ともえ)に憑依した、奈落人木曾 義仲(きそ・よしなか)は薙刀をふるいながら怒っていた。
「聖なる力を持つ者を一振りで滅ぼす魔剣? 力に聖も邪もないわ、あるとしたらそれは使い手の心のありように過ぎん。いかな無銘も聖人君子が振るえば聖剣、いかな名刀も外道が振るえば妖刀、それが理。死してなお苦しむ魂に更なる咎を与えるなど見過ごせようはずもない!」
 義仲の声を聞いて鞆絵は思う。
『悲恋といえば聞こえはいいけれど、誰かを殺してまでとなるとそれはちょっと違うはず。かつて死まで共にしようとした自分を生かすため、袂を分かつ決断をした義仲様ならきっと諫めてくれるだろう……』
 義仲は、あらかじめ鞆絵に言われていたとおり、ディテクトエビルをかけていた。それで、四方から襲いかかってくる敵の気配を察知する。
 義仲はナラカの闘技を展開。サイコキネシスの力で薙刀があらぬ方向へと繰り出される。

 ズガズガ!

 義仲の周囲で四人の忍び達が悲鳴を上げて倒れる。

「おのれ!」

 手に武器を持った奈落人達が、義仲一人を狙って襲いかかってくる。敵とは言え、憑依されてるのは罪のない葦原の人々だ。一瞬義仲は躊躇した。
 奈落人達の凶刃が義仲の体を穿つ。

 その時リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が咆哮を浴びせた。その声に、奈落人達は愚か味方までもおののく。

「何をしてるんだ、リカイン……」
 禁書写本 河馬吸虎(きんしょしゃほん・かうますうとら)がリカインの手荷物の中でつぶやいた。彼は前回に引き続き潜伏中だ。周りの意向はどうでもいいけれど、竜胆自身がどうしようとしているのかを徹底的に追いかけている最終的にどんな言葉をかけるのが「真なる己の解放」への一撃となるかを見極めるために。
 一方のリカインは、もともと男も女もいけそうな竜胆君を歌劇団に誘えたらな……というちょっとピントのずれた理由で護衛に参加してたものの、今回は凄まじいやる気に満ちている義仲に押される形で六角の屋敷へ来た。
 まあその辺の理由はどうあれ襲ってくるなら返り討ちにしてあげるのが世の情け。とはいえそこはやっぱり歌姫、歌で勝負をしたいのである。
 が……
「リカイン。今のはわしにもダメージが来た」
 義仲が我が身(といっても体は鞆絵だが)にヒーリをかけながら言った。
 その言葉にリカインは苦笑いする。
「どうしても蒼空歌劇団が歌姫の真髄を味わいたいって熱烈なファンがいるならしょうがない……って思ったんだけど……問題なのは個人の貸切じゃないから周りにも聞こえちゃう(主に味方に)ことなのよね。やっぱり駄目だったかあ」
 リカインは気を取り直すと、激励の歌を歌った。義仲ののSPが大きく回復する。さらに、震える魂で義仲達の心を奮い立たせた。
「ちくしょう。邪魔な女め」
 忍び達がくないを投げつける。しかし、リカインは超感覚でそれを察知。素早くブルーラインシールドを構え、くないを回避した。