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パンツ四天王は誰だ?

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パンツ四天王は誰だ?

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集結

 
 
「おう、俺にもそのなんとかってのを一つくれ」
「はいはい、毎度ありーなのだよ」
 モヒカンにパンツを被せたPモヒカン族の男に請われて、ドクター・ハデス(どくたー・はです)が量産型Pアームを彼の背中に取りつけました。
 ランドセル型のその機械からは、複数のマジックハンドがにょっきりと突き出ています。
「これがパンツアームか」
「違〜う! パンツァーアームなのだ!!」
 思いっきり力を込めて、ドクター・ハデスが訂正します。
「だから、パンツをとるためのパンツアームだろ?」
「違うと言っているであろうが!!」
 自らの世紀の発明をパンツ専用とされて、ドクター・ハデスはちょっとおかんむりです。
 とはいえ、パンツ四天王にだけ従う宿命を負ったパンツモヒカン族にとっては、パンツ狩りにだけ使えれば充分なのでした。
 そう、今日は、彼らPモヒカン族にとっては、予言された運命の日、彼らを束ねる救世主たるパンツ四天王が空京に降臨するとされた日なのでした。つい先日シャンバラ大荒野にばらまかれた真新しいミニコミ誌にそう書いてあったので間違いありません。
 ちなみに、彼らPモヒカン族は少数民族ですので、パンツ四天王が通常の四天王のように招集をかけてもほとんど集まりません。だいたいにして、パンツ四天王ことP級四天王は文字通りのPちゃんですので、D級四天王よりも遥かに階級が下です。ただし、あまりに下すぎて、すでにそれは別次元の物であり、彼らはパンツ四天王は別格と自称するに至っています。
 ともあれ、パンツ四天王空京に現るというパンフレットを握りしめたドクター・ハデスによって、悪魔の兵器がばらまかれたのでした。
 その他にも、空京でパンツ四天王決定戦があるとか、パンツ四天王が歌手デビューとか、パンツ四天王の実演販売とか、なんだかいろいろと訳の分からない噂が蔓延しており、すでに大元の話の出所がどこにあったのか分からない状況となっています。そのため、何がなんだか分からないままに、何がなんだか分からない連中が好き勝手に空京に集まっていたのでした。
「さあ、やって参りましたSPSタ〜イム。この番組は、四天王を目指す方々に勝手にポイントをつけ、あわよくば勝手に四天王を認定してあげちゃおうという剛毅な番組です」
 マイク片手に、荷馬車を改造した中継馬車に乗った風森 望(かぜもり・のぞみ)が声を張りあげました。荷馬車を牽くのは、馬ではなく金剛力全開のノート・シュヴェルトライテ(のーと・しゅう゛るとらいて)です。御者台には葦原島 華町(あしはらとう・はなまち)がカメラを構えて、決定的瞬間をバッチリ撮影する気満々ですし、荷台にいる伯益著 『山海経』(はくえきちょ・せんがいきょう)はその画像を刻々とネット配信しています。そのおかげで、ますます空京に訳の分からない者たちが集まってきているのでした。
「中継は私、風森望、牽引は、復興記念コインで作った下着を履いていて最終的に小ババ様に食べられてすっぽんぽんになったことのある1馬力のノート・シュヴェルトライテさんがお送りいたします」
「ちょっと、いきなり変な黒歴史を暴くのはやめてくださいません?」
 ドドドドドと荷馬車を勢いよく牽いていたノート・シュヴェルトライテが、後ろを振り返って叫びました。
「コインパンティーか、うん、それはすばらしい」
「ちょ、ちょっと、あんた誰?」
 突如隣に降って湧いたブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)を見て、風森望が叫びました。
「あっ、どうも、解説のブルタ・バルチャだよ」
「同じく、ジュゲム・レフタルトシュタイン(じゅげむ・れふたるとしゅたいん)だ」
 いつの間にかちゃっかりと便乗していたブルタ・バルチャとジュゲム・レフタルトシュタインが葦原島華町のカメラにむかって自己紹介したのです……。
「きゃー!!!!」
 どう見ても巨大ゴキブリにしか見えないジュゲム・レフタルトシュタインを見て、女性陣が悲鳴をあげます。
「ふっ、また女性の歓声が……。まだまだ、オレのモテ期は終わっていないよ……げぼっ!?」
 照れるように、前足で頭を掻いたジュゲム・レフタルトシュタインの周囲に、突然煙幕ファンデーションが炸裂しました。
 ――しばらくお待ちください。
 テロップが写ります。
 少しして、なんだかリボンでグルグル巻きにされた物体が、モザイクつきで映し出されました。
「ただいま害虫は駆除されました。不適当な物がお茶の間に映りましたことをおわび申し上げます」
「オ、オレはホタルだ! 解いてくれー」
 ジュゲム・レフタルトシュタインが叫びましたが、華麗にスルーされました。ブルタ・バルチャも、いつものことと、あまり気にしていません。
「さあ、四天王バトル、最初の登場は……、おおっと、誰かが演説しています。さっそく聞いてみましょう」
 カフェテラスの前で勝手にテーブルの上に乗って叫んでいる男を見つけて、風森望が言いました。
「中継、良好なのだよ」
 パソコンを操作しながら、伯益著『山海経』がOKを出しました。
「諸君、パンツは良い。おっぱいと違って、大きさの違いが戦力の決定的な違いではないところがポイントだ!」
 テーブルの上に乗った、武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)が熱弁を振るっています。
「なんですって、おっぱいを愚弄するというの!」
 すっくと、葛葉 明(くずのは・めい)が武神牙竜のむかいのテーブルに立ちあがりました。
「愚弄はしない。だが、パンツには劣る!」
 言い切りました、武神牙竜。うんうんと、話を聞いていた漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が、無意識のうちにうなずいてしまいます。
「お前ら、正気に戻れ。世の中、パンツだけでも、ブラだけでも生きてはいけないんだぞ。パンツだけ集めても片手落ちだ」
 漆髪月夜のすぐ横で、樹月 刀真(きづき・とうま)がひらりとテーブルの上に乗って参戦しました。どうやら、彼はどっちも大事派のようです。
「一目で分かるおっぱいの方が、視覚効果は上です!」
 樹月刀真を無視して、葛葉明が言いました。
「いいや、パンツには見えそうで見えないよさがある。そして、艱難辛苦の上にわずかに見えるという究極のチラリズム、これこそがパンツにあっておっぱいにはないものだ。スカート丈の微妙な調整によるその効果は、実に計算されたものとなる。また、重要になるのは、パンツと肌の色の違いによるコンボ攻撃だ。まさに穿いてないと紙一重という、究極のチラリズムがそこに存在する。そこには、先天的なちっぱいとかたっゆんとかの差は存在しない。全てが後天的に鍛えられるセクシーポイントであり、そこに貧富の差はない。みな、平等なのだ。そうだろう、そこのガーターベルトを着けていそうなお嬢さん!」
 いきなり武神牙竜に指さされて、ちょっと複雑な気分の漆髪月夜です。
「愚弟もよくやる。む、敏感に好みの下着を嗅ぎつけたかな……」
 近くのテーブルで他人のふりをしながら優雅にアフタヌーンティーを楽しんでいた武神 雅(たけがみ・みやび)が、微かに嗤いながらつぶやきました。
「愚弟の今日の好みは、ローズデルタブラレット&ガーターベルト&ショーツと見た。だが私は知っているぞ。いつでも惚れた女に穿かせられるようにと、そのポケットの中にクマさんパンツを忍ばせていることをな」
 天罰の下る日もそう遠くはないだろうと、熱く語る武神牙竜を冷ややかな目で武神雅は見つめました。
「なぜ、下だけを話題にする。うちの月夜は、確かに今日は黒のガーターベルトに黒のレースのショーツだ。だが、ちゃんとブラジャーもそれに合わせた黒のレース飾りつきのセクシーな物であることを俺は知っている。このコラボレーションこそが美なのだ」
「ほほう、どれどれ……」
「きゃっ」
 本当かなという顔で、玉藻 前(たまもの・まえ)が素早く漆髪月夜のスカートをめくりました。樹月刀真の言葉どおりのセクシーな黒レースのショーツとガーターベルトが現れます。ついでとばかりにブラウスまでめくりあげて、同じ意匠のブラも半分顕わにしました。
「おおっ」
 観客たちから、どよめきがあがります。正直です。
「それに、隣にいる白花の下着は、純白のリーブラ・ランジェリーだ。こちらもふんだんにレースを使い、月夜と対のデザインとなっている。その上でこのたっゆん!」
 話に熱がこもりすぎて、樹月刀真がいきなりテーブルから飛び降りて、封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)の胸をむんずとつかみました。
「ああっ、刀真さんっ」
「刀真、何をする。こらっ!」
 なんとかブラウスを元に戻した漆髪月夜が、高々と上げた脚をまっすぐに樹月刀真の後頭部に落としました。
 直撃です。
 変な声をあげて、樹月刀真が地面に突っ伏して動かなくなりました。どうやら気を失ったようです。