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パンツ四天王は誰だ?

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パンツ四天王は誰だ?

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    ★    ★    ★
 
「なんで、こんなに下着泥が堂々と横行しているんだ。これはなんとかしなくては……」
 空京に来たとたんこの騒ぎに巻き込まれて、緋桜 ケイ(ひおう・けい)は頭をかかえました。
「ここは、やっぱり頭を潰すしかないだろう。雑魚のモヒカンをいくらやっつけても埒が明かない。パンツ四天王。奴らをおびきだして徹底的に叩く。それで、やっとこの騒ぎが収まるはずだ」
「そこで、あたしたちの出番というわけね」
「うむ、まあ、仕方ないのう」
 緋桜ケイの言葉に、囮役を引き受けたチアガール姿の桜月 舞香(さくらづき・まいか)悠久ノ カナタ(とわの・かなた)がうなずきました。
「うん頼むよ。連中にとって、下着売り場で売っている新品の下着ほど価値の低い物もないだろう。連中が狙うとすれば、それはただ一つ、人が穿いているパンツだ。それも、できるだけ有名人の物を狙うだろう。雑魚たちはスカートをめくってパンツを見るだけでも満足してしまうかもしれないが、パンツ四天王ともなれば違ってくる。奴らが欲しがる物は、脱ぎたてほかほかのパンツだけだ。それを被ることこそパンツ四天王の崇高にして唯一の目的と見た。だから、これ見よがしに、高級そうなパンツをちらつかせてやれば、絶対に食いついてくるはずだ」
「ケイよ、言っていて恥ずかしくはないのか?」
 ボソリと悠久ノカナタが言いました。
「こほん、とにかく、さっさと退治してしまおう」
 なんとか適当に言って、緋桜ケイがごまかしました。
「ふっ、パンツ四天王など、ミスパラミタのこのわらわの美貌で一発だ」
「でも、和服だと近寄ってこないんじゃ。だいたい、和服って下着着けてないのよね?」
 なぜか始める前から勝ち誇る悠久ノカナタに、桜月舞香が訊ねました。それを聞いて、緋桜ケイが「えっ?」という顔をします。穿いてないから大丈夫は大丈夫ではありません。囮としては、きっちりとパンツを穿いていてくれないと困ります。できれば、いつもの和服ではなく、魔法少女の衣装の方がよかったのですが……。
「やっぱり、囮って言うのなら、こう、いかにものぞいてくださいって言う格好じゃないと」
 そういう桜月舞香の格好はチアガールです。ミニスカートと見せパンであるフリルつきのアンダースコートもバッチリと装備してあります。これで、踊っているところに近づいてきたパンツ四天王を、高く蹴りあげた足の一撃で大地に沈めるつもりです。
「何を言っておる。ほれ、このように、なんとも色っぽい下着を着けておるではないか」
 そう言って、悠久ノカナタが着物の裾をチラリとめくりました。下に着ている白衣の下から、白い腰巻きがチラリとのぞきます。
「スカート?」
 桜月舞香と緋桜ケイが声を揃えて聞き返しました。
「ば……、馬鹿か、そなたたちは。ちゃんとした和装の下着も知らぬのか!」
 悠久ノカナタが呆れます。
「よいか、和服の場合、下着としては肌襦袢を用いるのが普通なのだ。下には腰巻きをつける。これこそが、正しい下着なのだ」
 高説をたれる悠久ノカナタですが、やっぱり普通に見たらただの巻きスカートです。
「それで、その下にパンツは?」
 もうパンツという言葉に抵抗感のなくなった緋桜ケイが、悠久ノカナタに訊ねました。
「だから、腰巻きがパンツなのであるから、それ以上に何か穿くことなど必要ないではないか」
 力説する悠久ノカナタの言葉に、穿いてないから大丈夫という言葉が頭の中を駆け巡る桜月舞香と緋桜ケイでした。
「とにかく、作戦開始だ」
 大通りに出て、パンツ四天王が引っ掛かるのを待ちます。
 ところが、引っ掛かるのはPモヒカンたちばかりです。それも、一直線に桜月舞香の方にやってきます。
「き、貴様ら……。ててててててて……キラン
 何か、見えないプライドを傷つけられた悠久ノカナタが、則天去私でPモヒカンたちを吹っ飛ばします。
 おかげで視界が開けました。
「ターゲット発見なのだ」
 悠久ノカナタたちを見つけた毒島大佐が、ドドドドっと走ってきました。
 さあ、こいと、悠久ノカナタと桜月舞香が身構えます。いつの間にか、囮勝負になってしまっているようです。もっとも、今のところ、桜月舞香の全戦全勝ですが。
「どんなパンツを穿いているのであるか、見せるのだ!」
 そう言って、毒島大佐が緋桜ケイに迫りました。
「えっ、俺!?」
 予想外の展開に緋桜ケイが呆然とします。
「興味があるのだよ。見た目女の子の男の娘が穿くのは、はたして女物のショーツか、男物のトランクスか。あるいは意表を突いて褌とか、それとも穿いてない?」
 ぐいと顔を近づけて毒島大佐がまくしたてます。その手が、緋桜ケイのズボンにのびました。
「一昨日来い!!」
 その瞬間、桜月舞香と悠久ノカナタの合体技が毒島大佐に炸裂しました。
「あーれー」
 勢いよく毒島大佐が空に吹っ飛んでいきます。
「よりによって、わらわたちをさしおいてケイに興味があるだと……」
 悠久ノカナタと桜月舞香は憤慨していますが、よく考えたら毒島大佐は女の子ですから、極めてノーマルな反応だったと言えるのですが……。
「いったい何だったんだ……」
 困惑しているところへ、次のPモヒカンの集団がやってきました。さりげなく、猪川勇平も混じっています。
「ひゃっほい、パンツ狩りだぜー」
 お祭り好きの猪川勇平は、今日は最初からノリノリで思いっきりモブの人たちに混じって楽しんでいます。
「ここは、もう競争している場合じゃないわ。私が、あいつらを引き寄せるから、一撃で決めてね」
 そう悠久ノカナタたちに言うと、桜月舞香が道の真ん中に出ました。
「いや、わらわも参加するぞ」
 そう言い返すと、悠久ノカナタが思いっきり着物の裾をめくって、ほっそりとした足を惜しげもなく顕わにしながらぴらぴらと腰巻きを大きくゆらしました。
「はーい、みんな、見たい〜♪」
「おおおおお!!」
 桜月舞香に思いっきり誘惑されて、Pモヒカンたちが突っ込んできます。
「ふっ、見せパンごときでたわいないわね」
 スカートをつまんでいた手を放して、桜月舞香が身構えました。
「こらあ、見せパンはいけないぜ、反則、反則!!」
 突然、そんなジュゲム・レフタルトシュタインの叫び声と共に、風森望たちの中継荷馬車が突っ込んできました。
「ひーっ、カサカサ言わさないで。きもーきもー」
 涙ながらに、ノート・シュヴェルトライテがゴッドスピードのライド・オブ・ヴァルキリーで突っ込んできました。
「ちょ、ちょっと……うわーっ!」
 敵味方……というか、その場にいた者を誰彼構わず、荷馬車が弾き飛ばしていきました。まるでボーリングのストライクが決まったかのように人々が弾き飛ばされます。
「いたたたた……」
 弾き飛ばされた悠久ノカナタが、大きく股を開いたまま尻餅をついて呻きました。はっと気づいて、あわてて全開になっていた腰巻きを合わせて股を閉じます。
「いたた……、大丈夫か、カナタ」
 少し前の方に倒れていたらしい緋桜ケイが、肘をさすりながら悠久ノカナタに訊ねました。
「だ、大丈夫に決まっておろう。そのう……、何か……、いや、なんでもない」
 そう言って、悠久ノカナタはちょっと疑わしそうな視線で、緋桜ケイを見あげた後、赤い顔でぷいと横をむきました。
「いてえなあ。ここまで順調だったのに、ひどい目に遭ったぜ」
 桜月舞香たちとは反対の方向に吹っ飛ばされた猪川勇平も、なんとか軽傷で立ちあがりました。
「おっ、新たなターゲット発見。みんな行こうぜ!」
 もはや意気投合したPモヒカンたちを従えて、猪川勇平が新たに見つけた少女たちめがけて走っていきました。
「さあ、みんなここは僕に任せて早く逃げて」
 他の女の子たちを先に逃がすと、スカート姿の松本 恵(まつもと・めぐむ)が猪川勇平たちの前に立ちました。ちょっと裾の広がった赤い吊りスカートで、品よくレースをあしらったブラウスの胸元は大きめのスカーフで隠しています。短めのポニーテールは、珍しいイエローサファイヤの髪留めできりりと纏められていました。
「ここから先は、魔法少女ガーディアン☆めぐむが通さないよ!」
 そう叫ぶなり、素早い回し蹴りで先頭にいたPモヒカンをふっ飛ばします。飛んできたPモヒカンを受けとめる形で、後続のPモヒカンたちの隊列が崩れました。
「怯むな、引っぺがせー」
 ノリノリで、猪川勇平が言いました。もう気分は完全にパンツ四天王です。
 おうと応えたPモヒカンたちが一斉に襲いかかります。
「めぐむんファイアー!」
 ファイアストームと体術を駆使して、松本恵がPモヒカンたちを蹴散らしていきます。動きが速いのでチラチラとしか見えませんが、縞パンを着用していらっしゃるようです。
「そうそうやられてばかりはいられないぜ」
 後ろから忍びよった猪川勇平が、隙を見て一気に男の娘向け魔法少女コスチュームのスカートを引きずり下ろしました。吊りバンドがパチンと弾けて、縞パンが顕わになります。
「うっ!」
 それを見たPモヒカンたちが、喜ぶどころか青くなって逃げだしていきました。
「みんな、いったいどうしたんだ」
 すかさず松本恵を放して回り込んだ猪川勇平が、どれどれと縞パン……ともっこりを直視してしまいました。
「あう!?」
 一瞬凍りついた後、悲鳴をあげて猪川勇平も逃げて行きます。
「ふっ、この程度で、情けないんだよね」
 スッと立ちあがると、松本恵はスカートを引き上げて直しました。