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Blutvergeltung…導が示す末路

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Blutvergeltung…導が示す末路

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第1章 出迎えの準備
 封神台に向かった十天君を追った者たちが、アヤカシの女たちを倒すべく挑んでいる頃。
 オメガ・ヤーウェ(おめが・やーうぇ)の屋敷の方では、リュース・ティアーレ(りゅーす・てぃあーれ)やレヴィア、清泉 北都(いずみ・ほくと)白銀 昶(しろがね・あきら)たちによって、金光聖母が送りつけたゴースト兵器は全て葬られた。
「壊れかけた玩具もいないみたいですよ」
 おばさんたちが送りつけた品たちが潜んでいないみたいですね、とリュースは屋敷の回りを点検する。
「ひとまずオメガさんに状況を、お伝えしてきたほうがよさそですね」
 だが、ゴーストたちの襲撃があったことを、すでに知ってしまっただろう・・・。
「お屋敷に招いていないお客様たちは、全てお帰りいただきましたよ」
 その恐ろしさを思い出させないように気遣い、お客様がお帰りになりました、と伝える。
「もういらっしゃることはないでしょうね」
 帰った先はナラカだがそれは告げずに、もう2度と現れることはないでしょう、というふうに言う。
「―・・・お怪我はありませんの?」
 亡者たちに傷つけられたりしてないか、オメガが彼を見上げる。
「えぇ、大丈夫ですよ」
 心配そうに見つめる彼女に、にっこりと爽やかな微笑を向ける。
「ねぇ、屋敷の中の片付けているんだけど。手伝ってもらえるかな?」
 話しかけるタイミングを見計らっていた北都がリュースに声をかける。
「すみません、外でちょっと作りたいものがあるんです」
「何を作るのかな?」
 それが何なのか聞きたそうな様子で目を丸くする。
「たまには出張のお仕事をしようかと思いましてね」
 リュースは特技の華道を生かそうと、美しい花を積みに屋敷の外へ向う。
「仕方ないね。修理出来そうなところだけ、直しておくよ」
「だな」
 狼の姿のままオメガの傍に座り、頑張れー!とふりふりと昶はしっぽを振る。
「そうだ、オメガさんの食べたい物があったら教えてね?」
「えっ、・・・はい、そうですわね・・・えっと・・・」
 やっぱりまだ戻ってきていない者たちが心配なのだろう。
 北都の声が耳に届いていなかった彼女は返答に困っている。
「大丈夫だ。皆強い奴ばかりだからな!」
 それはオメガも知っているだろ?と彼女を見上げる。
 封神台に向った者たちは、昶や北都たちがオメガを守ってくれると信じ、今・・・自分たちが成すべきことを成しに行ったのだ。
 ゆえにオレたちも信じて待っていなきゃな、と言葉に出さず笑顔を向ける。
「なぁ、終わったら何がしたい?」
「―・・・私は、皆さんが無事に戻ってきてくれるなら・・・」
「やっぱりパーティーかな。ハロウィンだし」
 これ以上、多くのものを望むのは・・・と遠慮がちに言うオメガに、今の時期にパーティーをやるなら、それがいいのかな?と聞く。
「そういえば、北都が初めてオメガに会ったのってハロウィンパーティーだったよな」
「えぇ、確か魔女の仮装をしていましたわね」
「その時オレはまだ契約していなかったけどよ。今度は参加してみたいな、と思ってさ」
 パーティーやろうぜ!と、しっぽを振る。
「では・・・準備をしながら、皆さんのお帰りをお待ちしましょう」
「じゃ、決まりだな!まだ不安もあるだろうけど、オメガは一人じゃないんだし。オレも支えるから、終わったら外の世界に出てみようぜ」
 僅かに笑顔を見せるオメガの手を握ろうとしたその時・・・。
「(これ『お手』じゃん!?)」
 狼の姿のままだということに気づき、はっと目を丸くした。
「まずはキッチンの片付けからだね」
 ゴーストの襲撃でおそらく壊れてしまっているだろうと、北都はその片付けをしようと部屋から出た。



 北都がキッチンへ行くと皿が割れているだけでなく、レンジなども壊れてしまっている。
 それでも修理すればなんとか使えそうだと、工具箱から道具を取り出し、電源フィルターの修理を始める。
「ガラス管が割れちゃってるね、交換すればなんとか使えそうかな・・・」
 破損した部分だけ外し、予め手配しておいたそれに付け替える。
「今のうちに食材も注文しておこっと」
 ぽちぽちと携帯を操作し、カボチャやチョコレート、小麦粉などをネットで注文する。
「さすがにイルミンスールの森へ取りに行く時間もないからね」
「何かお手伝いすることありません?」
「うーん・・・。何か食べたいものがあれば、教えて欲しいかな」
 まだ帰ってこない者たちを心配するあまり、耳に届かなかった言葉を改めて言う。
「ハロウィンパーティーですし、カボチャのプリンタルトとかがるといいですわね」
「うん、美味しそうだね。キッチンを直したら作ってあげるから、部屋で待っててね」
「はい、分かりましたわ」
「皆、早く戻ってくるといいな!」
 昶はトコトコと寄り添うように傍を歩き、部屋へと戻っていった。