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【重層世界のフェアリーテイル】オベリスクを奪取せよ!(後編)

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【重層世界のフェアリーテイル】オベリスクを奪取せよ!(後編)

リアクション

“地上第1防衛システム砲撃開始!”
 マシューの命令で、地上の数カ所から銃器が現れて、ガトリング砲の砲撃が放物線を描く。ドールズの進軍ルートを限定させるための挟撃だ。
 挟撃に即し、葦原 めい(あしわら・めい)八薙 かりん(やなぎ・かりん)ウサちゃんで【20ミリレーザーバルカン】の対空砲火の支援。
「拠点防衛型のウサちゃんを舐めないでよね!」
 めいの言う通り、ウサちゃんは対空に特化している。防衛の主軸としてはフィーニクスよりも勝手が良い。
「敵軍左翼を抑えます! 射線を集中してください!」
 かりんが通信指示。ドールズが横に広がって防衛を抜けていくのは避けなければならない。そして、敵を固めておけば、砲撃において効率も良くなる。クレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)の《防衛計画》案だ。
「なんなのよ! このドーブツの数は!? 聞いてないわよ!?」
「お姉さま、ドーブツじゃなくてドールズですよ」
 リオ・レギンレイヴ(りお・れぎんれいぶ)の間違いを冷静にマール・レギンレイヴ(まーる・れぎんれいぶ)が訂正する。
 マールも予想外に多い敵には肝を冷やしている。
「戦力差は圧倒的にてか? ハッ、上等だ!」
 ラグナ・レギンレイヴ(らぐな・れぎんれいぶ)は息巻く。
「この前の敵数なら一体一体、確実に粉砕しましたのに、今回はそんな暇なさそうですわ」
 とリオが言う。
“何言ってるのよ、あなた。これだけ敵の数が多いってことは弾をばら撒けば、どれかに当たるってことじゃない!”
 【ガトリングガン】を無造作に放つコームラントより葛葉 杏(くずのは・あん)が通信する。リオはなるほどと、大いに納得した。
「さすが、杏さんですぅー。でも、杏さんなんで防衛に参加したんですか? 攻撃部隊のほうが華がありますよぉ?」
 目立ちたがり屋の杏が、地味な防衛部隊を希望するなんて。と、橘 早苗(たちばな・さなえ)は不思議がる。
「ふっ、何もわかってないのね早苗」
 そして杏は自信たっぷり言う。
「攻撃部隊には華があっても、アウェーに行ったら見てくれる人がいないじゃない。それに、アウェーな攻撃部隊より、目の前で自分たちを守ってくれるヒーローのほうがファンがつきやすいじゃない!」
「さすがですぅー! 杏さんは何処まで言っても私欲まみれですぅ!」
 早苗、それは褒めているとは言えない。
“遊撃部隊、敵を射線に誘い込め!”
“サー! 中将!”
 マシューの命にグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)が答える。
「エルデネスト、あなたのサポートが必要になる。頼んだぞ」
「ふふ……悪魔の私に“頼む”など、と――」
 フィーニクスの後部座席でエルデネスト・ヴァッサゴー(えるでねすと・う゛ぁっさごー)が哂う。サポートとして、機体の制御修正を行う。
 機体はフィーニクス量産機、シュヴァルツ?をこの世界に持参していなかったため、慣れない機体での出撃となった。
 ワープ移動はできなくとも、機動性能は十分に高い。グラキエスは《加速》《高速起動》でドールズを【ビームサーベル】で遊撃する。
「敵の機動力はそう高くない様です。十分に引き付けましょう」
 エルデネストが敵弱点を読み取る。
“エンド、無理はしないでください”
 ロア・キープセイク(ろあ・きーぷせいく)が基地司令室のオペレーションPCから指摘する。慣れない機体の制御には精神が割かれる。サポーターのエルデネストを心配してのことだ。
「心配するならグラキエス様ですよ。グラキエス様、危険な時は戦線離脱して下さい」
「だが、俺の仕事はキッチリこなす。敵の数が多い。砲撃部隊の射線に誘導する」
 《加速》、フィーニクスを鳥型へと変形させて引き寄せる。
“引きつけの補助は任せろ!”
 戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)龍神丸の【アサルトライフル】でバラける敵一群を誘導補助する。
「小次郎、水平方向右45°がバラけてますわ!」
「わかっている! 回りこむぞ」
 リース・バーロット(りーす・ばーろっと)の指摘より、ドールズの合間を縫って、位置を変える、射撃は続ける。
「誘導部隊が散開次第、【ナパームランチャー】と【バスターライフル】を使います。いいですね!」
 志方 綾乃(しかた・あやの)の指示に{ICN0003816#マーナガルム}の搭乗者が一様に頷く。
「姿勢制御、バンカー地面に固定したぜ!」
「敵、自動ロックオン! 誘爆距離算出したよ!」
「誘導部隊回避して下さい! 【ナパームランチャー】全弾発射!」
「全機撃ち落しますわ!」
 綾乃の指示よりリオが発射ボタンを押す。ナパーム弾が飛来する。遊撃部隊《加速》で回避散開。
 更に、ウサちゃんとの【バスターライフル】同時射撃で誘爆範囲を広げる。
 爆発に巻き込まれたドールズがボロボロと落ちる。落ちていく過程でナノマシンが分解、離散する。
「撃破数フィーバーです!」
 かりんが追撃数を見て嬉しがる。
「では私たちもやるぞ」
「了解です。『ハルパー』安全装置開放します」
 フィーニックス試作機が鳥型から人型へと変形し、『ハルパー』の穂先を敵密集地帯に向ける。
 形状は切っ先が鎌のように反り返った剣で、その先端にエネルギーの発射口がある。
 『ハルパー』内部のナノマシン保有核が有機的に構造を変える侵食ナノマシンのデータをトレースし、ナノマシンを分解する情報波をエネルギーとして掃射する。
 エネルギーのレーザー光は一筋だが、その有効範囲は更に広い。見方を巻き込まずにドールズだけを瞬時に分解霧散させていく。
“残った奴らに銃弾をくれてやれ! 一斉掃射開始!”
 大将機のスフィーダも新型武器を構える。
 後方部隊から【レーザーガトリング】が放射させる。回転数の高い波状攻撃がドールズに襲う。一発一発の威力は低めではあるが、被弾数が増えるため、破壊面積を稼げるため弱点のないドールズには有効な攻撃だ。
“エネルギー、弾の切れた奴は補給に戻れ! ”
 部隊の入れ替えを支持すると、スフィーダも基地へと戻っていく。フィンクスが司令室にて指揮を再開するためだ。
 部隊の現地指示はマシューに代わる。
「――、思った以上に侵食率が高いな」
 強力な対ドールズ兵器であるが、『ハルパー』は未完成だ。
 完成には彼らの成功を待つしかない。