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第二章:ヒラニプラからこっちの話


もみワゴンの旅は、当然のことながら、一日や二日で終わらない。
 空京を出発し、途中の村々で小休止や宿泊を重ね、のんびりと走った後にヒラニプラに到着していた。
 ワゴンの内部は、すでに和気藹々で、修学旅行のような雰囲気になっていた。特に贅沢もなく、ある意味貧乏旅行なのだが、みんな楽しそうだ。
 みすみは、停車するたびに種もみを配り、それ以外の時間は一心に訓練を続けていた。そんな彼女を指導するのは、東 朱鷺(あずま・とき)だ。朱鷺は、最高レベルまで上がりきってしまって能力知的にはもう上昇の見込みがないみすみに、戦術や戦闘における立ち回りを教えていく。
「朱鷺は出し惜しみするつもりはありませんよ。この技、全て盗むつもりで励みなさい」
「はい、お姉さま!」
「なんだか、変な関係になっている気がしますが……」
 ルビー・フェルニアス(るびー・ふぇるにあす)はそんな二人を眺めながら微笑む。
 だが、残念なことに、あれ以降ヒャッハーは現れない。
 そして、それは当然のことだった。
「……」
 みすみを陰から護っていたのは、鬼崎 朔(きざき・さく)だった。
 彼女は、みすみの前にはまったく姿を現さずに、内緒でこっそりと後をつけ、ずっと護衛を続けていたのだ。最初のヒッチハイカーは意外だったが、それ以外のモヒカンは、全て彼女の前に倒れている。
 みすみの友人である朔は、旅の行く末を案じ先回りして道を作る。
「出発しましょう」
 ヒラニプラでの休養を思い思いに過ごしていた乗客たちを集め、ツアーのようにもみワゴンは出発した。
(いってらっしゃい)
 ワゴンが無事に姿を消すのを見計らって、朔は静かに姿を消す……。