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謹賀新年。黄金の雨の降り注ぐ。

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謹賀新年。黄金の雨の降り注ぐ。

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「なるほどね」
 宵一達の報告を聞いてセフィー・グローリィア(せふぃー・ぐろーりぃあ)がうなずく。彼女は、十兵衛達の依頼を聞きつけ、
オルフィナ・ランディ(おるふぃな・らんでぃ)エリザベータ・ブリュメール(えりざべーた・ぶりゅめーる)とともに、調査に参加していた。
元々は賞金首の義賊ということの興味から参加したのだったが……。
「むしろ怪しいのは、ウサギ小僧より、その中条って奴よね。でも、ウサギ小僧の話も聞いてみなきゃ……いっそ、
両方つかまえて一挙両得といきましょうか。けど、ウサギ小僧が忍者で変装の達人なら一筋縄ではいきそうに無い
わね……綿密に作戦を立てないと……」
そして、セフィーは一計を案じた。
「もうしわけありません。この辺りでウサギ小僧を見かけた方はおられませぬか?」
 茶店で、巫女装束の少女が尋ねている。
「いいや」
「あたしは見てないね」
 客達が首を振る。
「そうですか。ありがとうございまする」
 少女は二礼二拍手一礼をしっかりして、客達に頭を下げる。
 よく見れば、それは大岡 永谷(おおおか・とと)だった。彼女もウサギ小僧探索に協力をしていた。
 しかし、いつもの国軍の制服では流石に浮きすぎるから、正月と言うこともあって巫女装束を着て、巫女のふり
をして街を歩いて聞きこんでいたのである。一応、実家では、俺も巫女の修業していたという事もあり、ちょっと
見では本職の巫女にしか見えない。こうして集めた情報を随時竜胆に報告し、さらに集まっている情報が無いかを
聞いて効率的に聞き込みを進めていった。
「しかし、なんでウサギ小僧なんて探してるんだね? 巫女さん?」
 茶店の女将が永谷に尋ねる。
 永谷は答えた。
「実は、本日、知り合いが、下渡屋様から、お旗本の中条小町様のお屋敷まで千ゴルダ運んでいくと言う話を聞い
たので、心配しているのです」
「下渡屋っていうと、あの有名な悪徳商人高利貸しか」
「あいつのおかげで首くくった貧乏人は数知れないからな」
「自分は、中条様に賄賂を贈って上手くしてもらおうってハラだろ」
「そりゃ、ウサギ小僧に狙われるかもしれないな」

 客が口々に言う。
 実は、この噂は意図的に流しているものである。ウサギ小僧を恨んでいる下渡屋と、おそらく同じく恨んでいる
であろう中条小町に協力を頼んで仕掛けたセフィーの計略だ。
「中条家に千ゴルダいくと聞けば、きっとウサギ小僧は乗り出してくるはず」
 とセフィーは踏んでいる。
その頃、オルフィナは、下渡屋から預かった偽千ゴルダ箱(中は石ころ)を小型飛空艇に積んで中条家に向かっ
ていた。
「ウサギを名乗るとは、俺達への挑戦か彼奴……だったら軽く捻って素顔も身体も俺がさらけ出させて食ってやろ
うか……ついでウサギ野郎の懸賞金も戴きだぜ!」
 オルフィナは飛空挺の操縦桿を握り、不敵に微笑む。その側を、エリザベータ・ブリュメールが、同じく飛空挺
に乗って護衛についていた。エリザベータは、はりきっているパートナー達を横目につぶやく。
「セフィーもオルフィナも狼の血が騒ぐって言っているけど、相手は魔獣じゃないんだから程々にね……それと…
…どうしても合い言葉の後に甘噛みしないと駄目なんでしょうか……


「本当にこれで現れるのかな?」
 永谷は飛んでいく飛空挺を見上げてつぶやく。
「現れてくれるといいですが……」
 竜胆が隣で答えた。
 その後ろにはセルマ・アリス、リンゼイ・アリス、フレンディス・ティラ、ベルク・ウェルナート、アリッサ・ブラン
ド、レティシア・トワイニングらの姿も見える。
 ここは、中条家の敷地内だ。皆、ウサギ小僧の出現に備えて結集していた。
「あ、そうだ、竜胆さん」
 永谷はふところから禁猟区のお守りを出して竜胆に渡した。
「これ、念のために」
 飛空挺が降りて来る。
 中条家の家臣がやって来て一礼した。どうやら、彼が代表で金を受け取りに来たらしい。
 オルフィナは、千ゴルダ箱を飛空挺からおろして家臣に渡した。
「確かに、渡したよ」
「確かに」
 男は箱を受け取ると小脇に抱え、歩き始めた。
「ちょっと、待って」
 セフィーが呼び止めた。 なんだ?」
 と男が振り向く。

 すると、

「合い言葉は?」
 と男の耳元に囁き、耳朶を甘噛みした。
「!」
 男は驚いて顔を赤くする。しかし、合い言葉は答えられないようだ。
「答えられないようね」
 そう言うと、セフィーは相手に察知されない様に自然に掴み掛かって綾刀を首に当てて耳元で「狼を騙すなんて
百年早いわよ、ウサギさん」と妖艶に囁き拘束した。
「ふっ……バレたか」
 男は観念したかのように笑うと、セフィーの手をすり抜け煙幕をはった。
「現れた!」
 待機していた一同は、一斉にウサギ小僧に向かって躍り出る。
 しかし、その時には、白煙が皆の視界を遮っていた。
「しゃらくせえ!」
 ベルクは『ディテクトエビル』を展開。ウサギ小僧の居場所を察知する。
 ウサギ小僧は今まさに屋根に逃げようとしていた。
 ベルクは『紅の魔眼』『絶対闇黒領域』発動して闇の化身となり、魔法攻撃力を上げると
「攻撃魔法が効かねぇのなら…これでどうだ?」
 『その身を蝕む妄執』『エンドレス・ナイトメア』などの闇系精神的攻撃を展開。
 ウサギ小僧は、多少の混乱を見せながらも、屋根の上に逃げた。その時には変装を解き、ウサギの面をかぶって
いる。
「ちっ……」
 ベルクは舌うちをすると、
「アリッサ、お前追え!」
 と氷雪比翼でウサギ小僧を追いつつアリッサにバトンタッチした。
「はーい! アリッサちゃん、ウサギ小僧ちゃんと追いかけっこで遊ぶよー!」
 アリッサは無邪気に箒スパロウに乗って追跡していく。
 一方、屋根に逃げたウサギ小僧に向かってエリザベータが、小型飛空艇を操り、フェザースピアを構えて騎馬戦
の要領で襲い掛かかってきた。
「インフェルミーナの姫騎士エリザベータ・ブリュメール参る!」
「うわ!」
 さすがのウサギ小僧も飛空挺には叶わないようだ。
 とっさに避けうとして失敗。怪我を負いつつ、屋根の上を逃げていく。その後をアリッサが箒スパロウに乗って
追いかけていった。ウサギ小僧は凧にを広げて大空に舞い上がる。しかし……
「そう来ると思ったんだよねーー」
 アリッサは、『風術』を駆使して凧の動きを邪魔した。
 さらに『舞い降りる死の翼』を使い落下を狙う。
「くそ」
 ウサギ小僧は、風と重力に逆らいながら印を結んで魔法を防御しようと試みている。その試みは半ば成功し、凧
は軌道を取り戻したようだ。

「……それならば……」
 リンゼイが【クロスボウ】で凧を狙う。

 ボス!

 見事に命中。凧に穴が開く。


 ボス!

 ボス!

 リンゼイは何度も凧めがけて【クロスボウ】を撃った。凧のあちこちに穴が開き、うまく風が受けられないよう
になる。凧はよろよろと地面に向かって落ちていった。
 そこへ、セルマが【レッサーフォトンドラゴン】に乗ってやって来る。ウサギ小僧が地上に落ちて大けがをしな
いようにとの配慮からである。

 ドサリ

 ウサギ小僧がドラゴンの上に落ちて来た。その衝撃でレッサードラゴンが驚く。

「ごめんよ」
 セルマは、怒っているレッサードラゴンを宥めた。
 その隙を狙い、ウサギ小僧は見を翻して地上に飛び降りた。
「ああ!」
 セルマが叫ぶ。
 しかし、降りた先には、オルフィナが待ち構えていた。そして、拳と蹴りでウサギの面を叩き割ろうとする。
 ウサギ小僧は、オルフィナの攻撃をかわし、その脇をすり抜けて逃げようとした。
 その、擦れ違い様、オルフィナは、黒狼の毛皮の外套をウサギ小僧の顔に投げ付け、視界を奪って背後から掴み
掛かって固める。ウサギ小僧は必死に抵抗を試みるが、傷を負った手が思うように動かないようだ。
「黒狼のオルフィナを嘗めるなよっ!」
 オルフィナは勝ちどきを上げた。