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インテリ空賊団を叩け!

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インテリ空賊団を叩け!
インテリ空賊団を叩け! インテリ空賊団を叩け!

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〜 Prologue 〜


 「……目標の母船から交渉船が接近してきたようです」
 「ええ、こちらからも見えています」

護衛役のダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)からの報告を傍らで聞きながら
レティーシア・クロカス(れてぃーしあ・くろかす)は覗いていた望遠鏡を胸元におろして答えた

場所はタシガン空峡
彼女達の乗る大型商船は目の前の空賊の一団に囲まれ、誘導されるように崖が聳え立つ一角に停泊させられている
明らかに犯罪行為そのものなそれが、ここでは日常だといわんばかりに
他の商船や輸送船が遠巻きに関わらないようにちらほらと通り過ぎていく光景が異様なのだが
レティーシア一行としては、そんな事は予定通りなのでいう事はない、むしろ逆に有難い位である

理由はひとつ……自分達の役割が【陽動】だからである

彼女の乗る大型商船は【正真正銘の商用船舶】なのであるが、その目的は交易などではない
むしろ【件の空賊に見つかり、囲まれる事】こそ予定範囲内であり
その予定範囲の延長線上に、これからの行動があるのである

おのずと船内に緊張が走る中、レティーシアの傍ら護衛役のティー・ティー(てぃー・てぃー)が彼女に語りかける

 「予定通り、私はレティーシアさんの傍でお守りさせて頂きます。よろしくお願いしますね。
  ちょっと頼りなく見えるかもですけど…作戦なので大丈夫。交渉はお任せします」
 「わたくしだってがんばります!ティーや船員さんのフォローはバッチリです!」
 「わかってますイコナちゃん。
  でも戦闘になったら危ないから、今は奥の方に下がっててくださいね
  船室を見て廻ってる鉄心も心配だって言ってましたよ?安心させてあげてください」

ティーの言葉に続いて張り切って語りかけるのはイコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)
12歳の幼いパートナーの決意をティーがやんわりとたしなめると、ハーイと言ってイコナは奥に消えていった
 
 「さて、自分達ももさっさと配備につくとするか、オルフィナ」
 「了解だマクスウェル
  というわけで姿は見えなくなるが、ちゃんと様子は見てるから安心していいぜ、エリザベータ」
 「……あなたの場合、別の視線でない事を祈りたいですけどね」

各員が前もって決められた持ち場につき始める中、援護のサポート役の二人
マクスウェル・ウォーバーグ(まくすうぇる・うぉーばーぐ)オルフィナ・ランディ(おるふぃな・らんでぃ)が物陰へ移動を開始する
オルフィナに言葉を投げかけられ
エリザベータ・ブリュメール(えりざべーた・ぶりゅめーる)が彼女の悪癖を知ってるが故の小言を言うが
本人はそれに動じずひらひらと手を振り、意気揚々と視界の外に消えていった
毎度の事ながら溜息をつくエリザベータにレノア・レヴィスペンサー(れのあ・れう゛ぃすぺんさー)が彼女なりの励ましを述べる

 「彼女の力は折り紙つきだ、問題ないだろう?エリザベータ・ブリュメール」
 「それはパートナーの私も知ってるわ。でも言いたいのはそういう事じゃなくて……」
 「何を言う、戦場は力こそ全てだ。人となりは勝った後に問うもの、それでいいだろう?」

……そういえばレノアとオルフィナは旧王国時代からの戦友だったっけ?
会話をしながらエリザベータはそのことをふと思い出す
生粋の鋼鉄の軍人気質の彼女と【狂戦士】だの【エロ狼】だのと言われるオルフィナが何故仲がいいのか?
常日頃疑問に思っていたのだが、その理由が何となく垣間見えた気がた
気づかなくてもいい発見をして二度目の溜息をつくエリザベータに
主人のセフィー・グローリィア(せふぃー・ぐろーりぃあ)が今度こそ本当のフォローを入れた

 「まぁそれ位の余裕があってしかるべき、でしょ?
  ここからは頭脳戦と強襲戦のタイミングが勝負、1秒だって狂いは許されないのよ。
  そうでしょ?レティーシア」
 「その通です【鋼鉄の白狼騎士団】としての交渉のサポート役、頼りにしてます」

そう言って微笑むレティーシアの前で
外を見ていたリブロ・グランチェスター(りぶろ・ぐらんちぇすたー)が部屋中に響くばかり声で高らかに宣言する
作戦開始の合図である

 「空賊側の交渉船の接舷を確認した。各員、すみやかに作戦行動に移れ!
  ……さぁ、行こうかレティーシア。前哨戦……交渉の始まりだ」


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 『ダリルから作戦開始の連絡が来たよ。ルカもすぐ戻らないと、そっちは大丈夫?』
 「予定通りに巡航速度で作戦ポイントに移動中、心配しないで!任されたっ!」

一方、場所は変わってレティーシアの船を遠くに望む輸送船の甲板

ルカルカ・ルー(るかるか・るー)の通信を受け、魔法で強化された望遠鏡を覗きながら
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は遠くの船にいる彼女の問いに元気に答え、通信を切った
その様子を見てパートナーのコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が声をかける

 「どう、様子は?」
 「予定通り、目標側と接触したって
  まもなく交渉のはじまりだから、私達の出番はもうすぐだね、うまくいくといいけど……」
 「……そうだね、なるべく人が傷つかないのが望ましいよね」

美羽の言葉を受け、コハクも受け取った望遠鏡で遠くの大型商船を覗く
【判官(ジャスティシア)】である美羽、そしてパートナーの自分が望む事は相手の殲滅ではなく首謀者の逮捕だ
だが相対する相手の組織規模や行っている事のレベルの高さを考えると、並みの技量では相手に出来ない
そういう点で一番デリケートな部分である【交渉】において
生粋の軍人肌であるリブロ・グランチェスターが適任なのは誰が見ても明白なのだが……
戦闘になった際、軍人が取る鉄血の行動もそれこそ容易に想像できる

だが時間はすでに進み、作戦は開始された
後はそれぞれが取るべき行動を取るのみなのだ

一抹の不安を胸に収め、美羽は改めてコハクに呼びかける

 「コハク、全員に作戦開始の合図があったと連絡して!後はいつでも出られるようにだよ!」

言葉と共に階段を下りる彼女の脳裏には、一週間前の事件のはじまりの記憶が蘇っていた……