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立ち上がれ、僕らのヒーロー!!

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立ち上がれ、僕らのヒーロー!!

リアクション

 危機迫る袋小路。

「ほら、痛いのは終わりですわ」
 ユーリカは先ほど膝をすりむいて泣き続ける少年を『リカバリ』で治療していた。

「ありがとう、おねえちゃん」
 涙を拭きながら少年はユーリカに礼を言った。

「きっと救援が来てくれるはずですから。それまでの辛抱です」
 近遠は一緒に避難した人々に不安を感じさせないように明るく言った。
 これほどの騒ぎになっていればきっと誰かが救援に駆けつけてくれるはずだと。

「……救援が来るまで護らねばならぬ」
 イグナは呼吸を整え、後方にいる三人と一般客を見てから前方に溢れる雑魚戦闘員を鋭く見た。引きつけてしまったのがそれだけならばよかったのだが、たった一匹だけ大物がいた。眼帯をした魚人だ。明らかに別格。そのため、一般人並の体力の近遠と一般人な客を伴っての脱出劇は危険すぎる。幸い魚人は雑魚戦闘員に前を阻まれている。

「……支援するですわ」
「絶対に無事に帰るのでございます」
 ユーリカとアルティアは近遠の前に立ち、前方をイグナに任せ、後衛の防御と支援に回ることにした。

「……このままの状態を維持する方が得策であろうな」
 前方を雑魚戦闘員で溢れさせておけば、当分は厄介な相手は来られない。
 イグナは一振りで倒せるところを『歴戦の防御術』で攻撃を避け、時には防いでいく。
 そんな戦いがしばらく続いた。

「……本当に助けは来てくれるのか」
 男性客が不安を言葉にした。長く膠着した状態が余計に煽る。
「大丈夫です。必ず来ます」
 近遠はしっかりとした口調で男性客に答えた。
「不安は無用でございます」
 そう言ってアルティアはゆっくりと『幸せの歌』を歌って客達の不安を癒した。持久性に置いて体力と共に精神力も大切なので。

『スカイレンジャーはどこだーーー。この、この左目の仇を取ってやる!!』

 しびれを切らした魚人が三叉槍を振り回し、雑魚戦闘員を蹴散らしてし、イグナの前に躍り出た。

「……スカイレンジャー?」
 屋上でショーをしていることを知らない近遠は理解不能なことを口にする怪人に思わず言葉を洩らした。

「……とうとう」
 イグナはじっと魚人から目を離さず、相手の出方を窺う。

「……ギュギュビだ」
 怪我を治療して貰った少年トーイが叫ぶと同時に魚人は三叉槍を素早く突き出した。
 イグナは『ライトニングランス』で三叉槍を刃で受け取った。

『うぉぉぉぉぉ』

 突然、魚人は唸り声を上げたかと思ったら口から妙な泡を吐き出した。

「危ないよ!! あの泡に触れたら爆発するよ!!」

 トーイはが必死に叫んだ。

「大丈夫ですわ」
 ユーリカがグレートヘイストの魔法固定具で時間を加速して割り込み、泡が周囲を囲い切る前に『ブリザード』で凍らせて床に落下させた。

『貴様ら俺の邪魔をするというのかぁぁぁ』

 怒り狂った魚人は三叉槍を頭上で素早く回転させた。

「……む」
 イグナは構え、いつどんな攻撃が来てもいいように警戒する。

「止めた方がよろしい動きでございますね」
 アルティアは、カイロスの懐中時計を使って相手よりも速く動き、『稲妻の札』で稲妻を敵の足元に落とした。

『うげぇあ』

 驚き、動きを止めたかと思ったらジタバタと足踏みをして立ち上がる煙を消した。

 ユーリカとアルティアは見事にイグナを支援した。

『スカイレンジャーを倒す前に貴様らを倒す!!』

 魚人が改めて武器を構え直した時、

「ここにいたか、怪人」
「世界征服は許さないんだからね!!」
 
店内の怪人を一掃した巽とティアが現れた。

「スカイブルーにスカイイエローだ!!!」
 トーイは嬉しそうに目を輝かせヒーローを見た。

『現れたか、スカイレンジャー。この左目の仇を思い知れぇぇ』

 再び三叉槍を頭上で回転させ始めた。

「まずいよ、レッド。あの動きは雷を呼ぶつもりだよ」

 イエローことティアはスカイレンジャーを欠かさず見ているためすぐにどのような攻撃が来るのかを見抜いた。

「問題無い。協力技で一気にとどめだ! ドジるなよ、イエロー」
「もぅ! そこまでドジじゃないもん!!」
 気合い十分、巽は飛竜の槍を構え、ティアは鬼払いの弓を構えた。

「ストームスピア! 疾風一閃!!」
「迅雷! ツイン・スカイラッシャー!」

 槍と矢が怪人の体を見事に貫き、雷を呼ばれる前に決着がついた。

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ』

 むなしい叫び声と共に跡形もなく消えた。

「やっと力を取り戻せたね」
「あぁ。しかし、使命は終わらないぞ。全ての力を取り戻すまでは」
 怪人を倒しても目の前に人がいる限りショーは終わらない。
「ありがとう!! レッド、イエロー」
 トーイは嬉しそうに二人に駆け寄った。

「大丈夫だったか? 少年」
「うん!!」
 巽はヒーローらしく少年の頭を撫でながら訊ねた。
 トーイは嬉しそうに頷いていた。

 この後、一般客は急いでデパートを離れ、残ったのは持久戦を耐え抜いた四人とヒーロー二人だけだった。

「……一体、どういう訳であろうか」
「まるでヒーローショーのようでしたが」
 イグナは敵と戦った違和感から近遠は突然始まったショーのような出来事からヒーローに訊ねた。

「ヒーローショーだよ」
「色々と訳があるんだが……」
 ティアはあっさりと答え、詳しい事情は巽の口から語られた。

「物を実体化する装置が壊れてスカイレンジャーの怪人が暴走でございますか」
「そうなの。だからボク達はこうやってスカイレンジャーになってるんだよ」
 事態を把握したアルティアにティアは楽しそうに言った。

「それでお二人は誰ですの?」
 ユーリカが抱いて当然の疑問を口にした。
「声も違うから分からないよね。蒼空学園のティア・ユースティと」
「風森巽だ」
 ヒーロー声のまま二人はそれぞれ名乗った。

「そうですか。風森さんにユースティさん、助かりました」
 代表して近遠が二人に礼を言った。

「大したこと無いよ。ね?」
「そうだ。さて、イエロー、これでここでの戦いは終わった。次の戦場に行くぞ」
 近遠に答え、二人は屋上へと向かった。

 ヒーロー達を見送った後、

「……どこかで一休みでもしましょうか」
 近遠達は、どこかで一休みをすることにした。