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新入生とパートナーには友達が少ない?

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新入生とパートナーには友達が少ない?

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「へえ、俺もベルクの話を聞いてみたいと思っていたんだ。良いだろうか?」
 グラキエスが興味深々といった様子で、フレンディスたちに視線を向ける。
「ええ、わかりました。樹さんたちの後で、面白い話が出来るかは判りませんが……」
 一息吐く様に、フレンディスが紅茶を飲む。
「えぇと……。里の母様より明倫館での修行の命を仰せつかり、パラミタへ向かった時の事です。契約者という者でないと暮らすのは無理とそこで伺い、アテを失くした私は途方に暮れて彷徨っておりました。やがて、夜が更け、そこで結界が張られたお屋敷に一晩だけでもと思いお邪魔しました。しかし、そこには棺の中で封印された吸血鬼さんがおりました。私の侵入で封印が解けたのでしょうか。初めは殺気を放つほどに苛ついていた彼ですが、会話する事で次第に落ち着いて下さいました。私の事情をお話した所、『俺のモノになれば契約してやる』と言われました。私の力を必要として下さるのは光栄でしたので、仕える事を誓わせて頂きました。ただ……契約方法ですが、首筋から血を吸われるのが恥ずかしかったです。けれど、お陰で、今ここで過ごしていられている所存です。出逢えたのがマスターで本当に良かったです」
 一息に話し終えた後のフレンディスに続き、ベルクもその時の心境を思い返す。
「俺の最初の記憶は目の前に知らねぇ奴……フレイが覗き込んでいたんだよな。とりあえず寝起きの頭でも、俺自身の事ととか、でもって俺が誰かに封印されてたっつー事は理解出来た。だが、俺自身が関わったであろう人々の記憶だけ一切思い出せねぇでやんの。ま、誰かに消されたと考えるのが妥当だろ。あまりに思い出せねぇから八つ当たりでアイツを殺そうと思ったが……。直後に冷たい目で刀を突きつけられたのは忘れねぇ。殺気に対して無意識に反応しちまったんだろうな。すぐ物凄ぇ低姿勢で謝られたし。で、俺はアイツのポヤポヤしてる癖に内面に抱える深い闇に興味持ったのと、よく見ると、その……なんだ好みだったんだよ……」
 顔を赤らめながらも、ベルクはその後を続ける。
「だから俺は手に入れたくて俺のモノになれと言った。アイツが即答してきた事に驚いたが、まさか酷い鈍感かつ天然だとは思わなかったさ……。何でアレで主従だと思うんだっつの。はあー。いきなり俺の事をマスターとか呼び出すし。んでもって、訂正する余地さえ貰えずに、引きずられるように葦原へ行く事になっちまって、現在に至るって訳だ。まー、色々苦労はしてるが充実はしてるぜ? 記憶に関しては、そんな大した過去でもねぇって事だろーさ」
「今のベルクの話を聞いても、フレンディスは理解してないようだしの。不憫なものだ」
 レティシアの指摘に、ベルクはピクリと眉を寄せる。
「そこは言うな。そういうお前はどうなんだ」
「つまらぬ事を我に聞くな。話す事など何ひとつない。必要もない」
 バッサリと切り捨て、レティシアは黙々とお茶を飲む。
「私たちに関しては以上です。それでは、次の方のお話をお聞かせ頂いても宜しいでしょうか」
 二人の空気が不穏なものになったのを読み取ったのか、そうでないのか。
 フレンディスは次へ、と話を促す。
「では、俺が主との馴れ初めを話したい!」
 やる気満々、という風に手を挙げたアウレウス。
「では、次はエンドロアたちの話を聞かせてもらうとするか」
 アキレウスから了承を得、グラキエスは周囲を見る。
「俺たち、といってもこれだと順番的に俺からか?」
「まあ、簡単に話せば良いだろ。足りなかったらゴルガイス達が補足してくれるだろうしな」
 たまにお茶を補充したり、菓子を並べつつ。
 今はサボりつつグラキエスの近くに腰掛けていたロアが、促すように助言する。
「そうだな。まずはゴルガイスとの出会いから話すか。といっても、気がついたら一緒にいたわけだが」
 ロアの言う通り、ゴルガイスが補足する様に口を開く。
「我等が出会った時、グラキエスは重傷を負っていた。到底助からぬと思ったが、その時ふと契約者の話を思い出したのだ。常人より高い身体能力を持つ契約者になれば、あるいは……。そう思った時には、契約を結んでいた。以来、グラキエスと共に生きてきた。グラキエスを見守り、助ける。それが我の契約、我の誓いよ」
「そういえば、そうだったな」
 グラキエスは思い出したように頷く。
「キースに関しては、俺が持っていたメモリーカードが変化したんだ」
「それが、エンドとの出会いでしたね」
 キープセイクの瞳が回想に沈む。
「私は魔道書になる前に自我がありました。ですが、エンドが苦しんでいても、何もできなかった。それなのに何故、自我が存在するのか、私は何なのか、酷く悩んだ事もあります。でも魔道書に変化した時、すべて分かりました。……アラバンディットと同じですね。エンドの傍にいて、エンドを守る。この姿とこの自我は、そのためにあるんです」
 語りながら、キープセイクはグラキエスの髪を優しく撫でる。
「主、僭越ながら、主との出会いは私から話したい」
 そんな中、アウレウスがうずうずとしたように、グラキエスに許可を請う。
「ん? ああ」
 どうぞ、とでもいうようにグラキエスがアウレウスに視線を向ける。
「俺を作った悪魔は、俺を宝物庫に閉じ込め、氷で封印した。それから一体どれほどの時を過ごしたか、俺は正気を失い宝物庫を破壊して回っていた。そこに主が現れたのだ! 愚かにも俺は主に襲いかかったが、その美しいお姿は正気を失った俺ですら心奪われた。そして脳を(物理的に)貫く衝撃(攻撃)! 俺はその場に跪き魔鎧としてお仕えする許しを乞うた。ああ、その時の言葉にできぬ歓喜……。主は寛容にも俺を僕にして下さったのだ! そして……!」
「ああ、もういいです。それくらいにしなさい、アルゲンテウス」
 キープセイクの制止の声に、アウレウスは不満そうに見遣る。
「なんだキース、まだこれからだと言うのに!」
「いや、俺も十分だと思う。それに、他の人の話も聞きたいし」
 暴走しそうな気配を感じ、グラキエスも意見する。
「む、主が他の話をお聞きになりたいなら私に否やはございません」
 アウレウスはあっさりと引き下がった。
「と、俺たちはこんな感じだ。さて、次は……」
 誰にするのかと、アキレウスに視線を移すグラキエス。
 アキレウスが発言しようとしたところに、遅れてひとりが到着した。