天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

七不思議 戦慄、ゆる族の墓場

リアクション公開中!

七不思議 戦慄、ゆる族の墓場

リアクション

 
 

調査隊

 
 
「ゆる族失踪事件、それと、この間の空京神社付近から見つかった大量の着ぐるみ消失事件、この二つは、ゆる族というキーワードで繋がっているんじゃないだろうか」
「それって、ただのこじつけじゃねえのか?」
 緋桜 ケイ(ひおう・けい)の言葉に、雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)が素知らぬふりで答えた。
「本当にそうなのか? いや、ベアなら、何か知ってるんじゃないかなって思って」
「さあ。で、ちょっと俺様は用を思い出したんで行くぜ」
 そう緋桜ケイに言うと、雪国ベアはそそくさとどこかへ行ってしまった。
 しばらくして、雪国ベアのパートナーであるソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)が緋桜ケイの所へとやってきた。
「あのう、ベアを捜しているんですけれど、見ませんでしたか?」
 どうやら、ソア・ウェンボリスも着ぐるみの事件が続いて、気になってゆる族である雪国ベアに聞いてみようと思ったらしい。だが、肝心の雪国ベアが見つからないというのだ。
「ベアなら、さっき話したんだけどなあ。なんだか、うまくごまかされてしまったみたいで。まだ、そのへんにいるんじゃないのか?」
 二人で雪国ベアを捜していると、イルミンスール魔法学校の掲示板に毎度のごとく、いろいろな探索依頼が貼ってあった。もしかして、そのうちの一つにでもでかけて行ってしまったのではないだろうかと一応目を通してみると、何やらゆる族関係の調査課題が出ている。
『最近の各種情報から予測される地点にあるであろう、ゆる族の墓場を調査せよ』
 イルミンスールの森北部にある山岳地帯の一点に×印がついた地図が、張り紙に添付されていた。すでに、何人もの生徒がその地図を手にして、出発していったらしい。その中には、たまさかイルミンスール魔法学校に来ていて張り紙を見た他校の生徒も若干混じっているようだ。
「二人とも、こんな所にいたのですか、さあ、早くこれに着替えてください」
「きゃー、なんですか、それ!!」
 いきなり声をかけられて、振り返ったソア・ウェンボリスが悲鳴をあげた。
 そこには、着ぐるみ魔法少女ショーに出てくるような頭でっかちの魔法少女姿の着ぐるみが立っていたからだ。しかも、その衣装はどことなく見覚えがある。
「あなたのハートにサンダーブラスト! ストレイ☆ソア只今参上です!」
「ええっと、カナタだよな、中の人は」
 緋桜ケイが少し引きつりながら訊ねた。声は、悠久ノ カナタ(とわの・かなた)そのものだ。
「私は、ストレイ☆ソア、でっす!」
 なんだか一所懸命に中の人が答える。
「それよりも、早くこれに着替えてください。ゆる族の墓場に行くには、ゆる族の姿をしていないといけないんです」
 そう言って、ストレイ☆ソアが二人に白い着ぐるみを渡した。
「こ、これは白熊の着ぐるみ……」
 渡された、ちょっとリアル顔の雪国ベア似の着ぐるみを見て、緋桜ケイが言った。
「私のは、雪国ベアグッズの、おねんねベアちゃんです……」
 ちょっと丸い白熊の着ぐるみをかかえて、ソア・ウェンボリスが言う。これは、地球で売られていた雪国ベアグッズのパジャマ用着ぐるみだ。
「これを着なければダメなのか?」
「そうです。早く着てください」
 ちょっと裏声気味に、ストレイ☆ソアが言う。しぶしぶ、緋桜ケイとソア・ウェンボリスは白熊の着ぐるみを着込んだ。
「さあ、出発です」
 ストレイ☆ソアにうながされて外に出ると、そこには同じ目的らしい生徒たちが何人かすでに集まっていた。彼らに混じるようにして、箒にまたがったストレイ☆ソアと雪国ベアくんたちが出発していく。
「それにしても、ベアったら、どうしたんでしょう。私に何も言わないで一人で行っちゃうなんて。はっ、まさか、死期の迫ったゆる族は、誰にも気づかれずに姿を消すなんてことは……」
 ソア・ウェンボリスが、心配そうに言った。
「大丈夫よ。あのベアが、そんなに簡単に死んだりするものですか。きっと、自分一人で調べて、自慢するつもりなのよ」
 ちょっとソア・ウェンボリスを慰めるように、ストレイ☆ソアが言った。
「カナタ……だよな。その声なんとかできないのか?」
 ちょっと疲れたように、緋桜ケイが小さく溜め息をついた。
 
    ★    ★    ★
 
「頭が傾いているぞ」
「うーん、ちょっと据わりが悪いかなあ」
 二頭身の虎猫の着ぐるみが、中から頭の位置をよいしょっと直した。外についている両手はほとんど飾り物状態でブラブラとしている。その代わり、中で自由に動かせるため、カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)はしっかりとカメラを握りしめていた。このカメラで、目の部分の穴からしっかりと周囲を撮影するつもりなのだ。
「でも、カメラの方はばっちりだよ。これで、このドキュメンタリー映像で、ボクもますますす伝説に近づくって寸法よ」
「ドキュメンタリー映像って……ゆる族解剖ビデオと大差ないと思うのだが……」
 すぐ隣で、SD化したプラヴァーの着ぐるみを着たジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)が溜め息をついた。これでは、よくよく注意してやらないと、あっと今に正体がばれて逆さ磔だろう。
「じゃ、出発するよー」
 カレン・クレスティアが、空飛ぶ箒シーニュに乗って飛びあがった。また頭が、ちょっと変な方向に傾く。
「やれやれ」
 愛用のレールガーンを背部アタッチメントにセットすると、ジュレール・リーヴェンディは着ぐるみに取りつけた加速ブースターでその後を追った。