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七不思議 戦慄、ゆる族の墓場

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七不思議 戦慄、ゆる族の墓場

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「もふもふー☆(何あれ、以前見た似非ゆる族にそっくりだけど。まさかね)」
 立川 るる(たちかわ・るる)が、偶然よく見知ったヒトデのような着ぐるみを見つけて、思わずもふもふ言った。
 今の立川るるの姿は、アルパカの着ぐるみである。自らは、るるぱかと名乗りたいのだが、自分設定的には「もふもふー☆」としかしゃべれないことになっているので、ほとんど意思疎通ができない。
「ふふふふ、見てるんだもん。これで、ワタシをゆる族などではなく、りっぱな悪魔だと認めてくれるはず」
 るるぱかの視線を一身に浴びて、星辰総統 ブエル(せいしんそうとう・ぶえる)が胸を張った。
 これでも、一応は自分の姿と寸分違わない着ぐるみを着てはいる。とはいえ、その姿はどこをどう見てもヒトデ型のゆる族にしか見えない。本当は悪魔なのに……。
 「ここに悪魔がいるぞー!」という叫びを期待して、星辰総統ブエルがわくわくして待ち続けた。だが、るるぱかは「もふもふー☆」としか言ってくれない。
「もう、それしかしゃべれないんかなあ!」
 地団駄を踏んだ星辰総統ブエルのそばに、猫井又吉が近づいてきた。
「あれは、ただのゆる族だな」
 そうつぶやくと、猫井又吉は行ってしまった。
「違う! ワタシはただのゆる族ではない! 本当は……」
 星辰総統ブエルが猫井又吉を呼び止めようとしたが遅かった。
 がっかりしながら前を見ると、自分が立っていた。
 いや、正確には自分と瓜二つのゆる族が立っていたのだった。
「おい、おまえ、魂をよこせ」
 自分の姿と同じヒトデ型の着ぐるみを着た五芒星侯爵 デカラビア(ごぼうせいこうしゃく・でからびあ)が、瓜二つの星辰総統ブエルに言った。
「何それ、カツアゲなんだもん?」
 当然のように、星辰総統ブエルが突っぱねる。
「魂集めて、新しい着ぐるみを作るんだよ」
「魔鎧の間違いだよね。変なの」
 なんだか、二匹のヒトデが、重なるようにしてじりじりと小突きあいを始める。
「もふもふー☆(何あれ、似非ゆる族が二匹。趣味悪〜)」
 るるぱかが、残念感二倍で笑った。
 
    ★    ★    ★
 
 猫井又吉が、また怪しい二人を見つけて近づいていった。
「私の嫁」
「私の嫁」
 九尾の金狐と、北斗七星模様の黒狐が、何やら言い合っている。
「おい、そこの怪しい奴……」
「私の嫁キーック!」
「私の嫁パーンチ!」
「うぼあ!!」
 突然の二人の攻撃に、猫井又吉が巻き込まれて吹っ飛ばされていった。
「くそう、最近の若いもんは乱暴で困るぜ」
 何ごともなかったように、猫井又吉が立ちあがった。
 どうやら、墓場の入り口付近まで吹っ飛ばされてきたらしい。
「もう、いったいどこにいっちゃったかなあ。絶対ここに来てるはずなんだけれど」
 何かを探しながら、日堂 真宵(にちどう・まよい)がそこへ近づいてきた。あろうことか、いつも通りのチャイナドレスに魔女帽子という姿だ。
「ちょっと待てえい!」
 さすがに、猫井又吉が呼び止める。
「あによお。今、あたしは忙しいんだから」
 ギロンと日堂真宵が猫井又吉を睨み返した。
「この先は、ゆる族しか入れない聖地だ。帰れ!」
「そんなの関係ないわよ。でも、やっぱりこの先に、着ぐるみが集められているのね。きっと、わたくしのバイト先から脱走した着ぐるみも、この中にあるに違いないわ。通しなさい!」
「ダメだ」
「通せー」
 もみ合ううちに、二人の姿が忽然と消えた。
「きゅうぅぅ〜」
 少し前に猫井又吉が掘っておいた落とし穴に、うっかりと落ちてしまったのだった。
 
    ★    ★    ★
 
「もふもふー☆(ああ、このもふもふ感がたまらない〜)」
 広場に集められている着ぐるみの中からもふもふしている物をだきしめながら、るるぱかが悦に入っていた。
 もちろん、着ぐるみ越しでは肝心のそのもふもふ感を直に肌で味わうことはできないのだが、もふもふは見ているだけでも和めるのである。そのもふもふした毛先を見れば、脳内もふもふ麻薬が分泌されて、あの柔らかな感触が思い出される。
「ああ、あそこでもふもふしているゆる族、あれももふもふしててステキだねえ。もふりたいなあ」
 その様子を見ていた曖浜瑠樹が、ふらふらと引き寄せられていく。
「こら、りゅーくん、サボっちゃダメだよ」
 マティエ・エニュールが、あわてて曖浜瑠樹を引き止めた。
「はーい、そこの人たちも、サボってないで古い着ぐるみを運んで運んで。みなさんのお仲間がお世話になった大切な着ぐるみですからね。敬意を払って丁寧に運んでくださいねー」
 るるぱかや曖浜瑠樹たちにむかって、墓守が声をかけて指示をした。