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リアクション
〜 第十一楽章 passionato 〜
「合図が来た!強襲班行きますよ!」
アジト近くからあがった信号団を確認し
叶 白竜(よう・ぱいろん)は近接の小島から【小型飛空艇】を勢い良く飛翔させる
世 羅儀(せい・らぎ)やエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)
囚人救出を買って出た戸次 道雪(べつき・どうせつ)達多くの仲間が続いて飛び立つ中
それぞれに異変を感じて動き始めたアジトの空賊達が迎撃に動き出したようだ
監獄棟らしき場所への突入口に向かう最短ルートを目指す白竜達に、数隻の【小型飛空艇】が接近する
だがそれを迎え撃つ新たな戦力が彼らの死角から現われ、迎撃に向かった
鬼院 尋人(きいん・ひろと)率いる【陽動兼迎撃部隊】である
「目標ポイントまで援護する!ついてきてくれ!」
呀 雷號(が・らいごう)と共に乗る【レッサーブレードドラゴン】を巧みに駆り
気流と障害物の巧妙な死角をつなげたルートに白竜達を誘導していく
タシガン周辺に住む貴族の護衛の経験などで培われた【薔薇の学舍】ならではの優れた彼の土地勘
それはこの土地に長く住む空賊をはるかに凌ぎ、追撃を翻弄するのに十分な程であった
そんな彼らに完全に巻かれ、隊列を乱した空賊の飛空艇をさらなる迎撃部隊の刃が襲う
「相手は空賊!ならばこちらは遠慮なく全力全開で行かせて頂きますよ!」
気流の乱れから身を守る為、低空で飛行していた空賊の飛空艇に地上からの雷撃が襲い掛かる
先行して島に到着し待機していた御凪 真人(みなぎ・まこと)による魔術
十分に魔力を溜め込んだ【サンダーブラスト】による一撃であった
そんな彼に雷撃の発動を感知した地上の見張りの空賊達が接近する
だが、彼らが次の魔法の詠唱に入る真人の背後に到達しようという時、それに立ち塞がる新たな影
「残念!真人の方には行かせないわ!」
言葉と共に影の放つ【ソードプレイ】で空賊達の剣が全て打ち返された瞬間
詠唱を保持しつつ【歴戦の魔術】に強制的に切り替えた真人の魔弾が彼らに襲い掛かる
それを必死に回避し、安堵するのも束の間……彼らはそれが単に次への牽制だったことを知る
何故なら、彼らの懐深く先程の影が入り込んでいたからだった
華麗に【黎明槍デイブレイク】を回転させ影……セルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)が叫ぶ
「女の子を攫うなんて最低な行為……覚悟は出来てるんでしょうね!」
言葉と共に放たれた【疾風突き】が空賊の一人に炸裂する
単体の攻撃スキルだが、吹っ飛ぶ男に巻き込まれる様に他の男達も雪崩のように倒れていく
真人の先程の牽制……それは隙を作るだけでなくこの効果を生む為の陽動も兼ねていた
全ては【オーバクロック】による加速された思考の賜物である
「上出来です!しかし今の守りの動きって……」
「べ、別に【お下がりくださいませ旦那様】を使ってる居るけど、悪い!?
他意は無いわよ!そ、そりゃ恋人だけど…主人って言うにはまだ早いし………」
「セルファ!上っ!!」
「ひゃぁぁぁぁぁあ!?」
油断ならぬ『デレ』の隙を突くように引き返した飛空艇が二人の上を掠めていく
刹那の銃弾の嵐をしっかり回避するのは流石と言った所だろうか
再びこちらに狙いを定めて旋回する飛空艇だが……それこそが【雷速の魔術師】の狙いだった
「戦力を集中させるなら……魔法も派手なのが良さそうだから、これです!」
すでに詠唱が完成され、召還された【召喚獣・サンダーバード】の突撃が追撃者を飲み込み爆発した
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真人達の追撃者への迎撃が行われている間に、白竜達は目的のポイントまで無事に到着し
次々に地上に降り立って行く……だがそこは門前
侵入をさせないとばかりに入り口前の門から迎撃の為、空賊達が次々と姿を現していく
そこに只一人、地上に降りずに飛竜を駆って突入する者がいた……鬼院 尋人である
「いくぞ!薔薇の学舍の騎士は、なにものも恐れない!」
陽動も担っている彼の豪快な【空中戦闘】のスキルにより誘導された【レッサーブレードドラゴン】が
彼共々空賊の集団の中央で高らかに舞い上がる
そこから鮮やかに飛び降り降下した彼の一撃が中央から隊列を混乱させた
【龍飛翔突】を応用した落下技である
その技に一瞬怯んだものの、敵は只一人懐の中
背後の数人が同時に彼に向かって襲い掛かったが、不意の銃弾を喰らって次々倒れていく
【隠形の術】で気配を消した雷號のサポートだが、援護は尋人だけに留まらず
すぐさま【弾幕援護】に移行した攻撃が、突入を開始する仲間を巧みにフォローするのだった
「やっと来た!こっちよ!!」
入り口にたどり着く刹那
先行して中に潜入していたディミーア・ネフィリム(でぃみーあ・ねふぃりむ)が背後から門番を迎撃
白竜達を迎え入れる手助けをする。そのまま牢獄への誘導を開始するべく合図を送った
「作戦通りここからは二手だ。連中の迎撃と強襲は任せろ、ガイナスまでの道を切り開いてやる!」
「お願いします、こちらは予定通り人質救出のミッションに入ります!」
エース・ラグランツ達【強襲班】と別れ
白竜達は囚人及び人質救出のためディミーアと共に監獄のある棟へ移動する
一方のエースは進入を阻もうと現れる空賊達に構わず、取り出した百合の手入れを始めた
「さて、ここからは俺達のターンと行こうじゃないか?
万人が女性に対して紳士であれとは言わないけれど、
女性を蔑ろにする奴をそのまま見過ごす事も出来ないのでね
猛獣は猛獣らしく檻にでも入っていてもらいますか」
「全くもって同感ね……女性を蔑ろにするような輩は、
一度しかるべき報いを受けてもらわなきゃ……というわけで、ごめんね」
同意の言葉と共にエースの背後から姿を現したのは一人の姫騎士
彼女…リリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)が男たちの前に立ち塞がる
愛剣【ソード・オブ・リリア】が閃いたと思った刹那、4人の空賊が衝撃と共に壁に打ち付けられた
【ライトブリンガー】と【ライトニングランス】による電光石火の4連撃である
「ああもう!すぐ前に出るんだから!
リリアさんは近接戦タイプだから、前に出ても仕方ないですけど!
あまり突出しないで下さい!皆さんのお世話は僕がしますから!」
姫騎士の一番槍にすぐに仲間のエオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)が抗議する
端麗な容姿とその隙だらけの佇まいにすかさず残りの男達が襲い掛かる
だがこちらも同様、多方向からの攻撃が一つ足りとて当たる事はなく
一瞬で多くの男達が剣撃を喰らって地に臥した
【殺気看破】と【乱撃ソニックブレード】を極限までつなげた複合技
その容姿と雰囲気に反して、彼のクラスが【侍】である事を彼らが知る事が無いのが悔やまれる
そこまでして、目の前の連中が只者ではない事を空賊達はようやく悟る
だが慌てて態勢を立て直そうとした瞬間、残り数人の体が炎に包まれ
果敢にもエースに挑んだ一人は足の力を奪われ、彼の足元に倒れこんだ
ちなみに発火はエース3人目のパートナー
メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)のスキル【パイロキネシス】によるものである
果敢にも全ての迎撃が終わり、地に臥した男にエースは歩み寄りその身を引き起す
「足の腱を切っただけだ、殺すつもりはないから安心しろよ
最も、これから言う質問に答えられるかどうかで方針はかわるけど?……ガイナスはどこにいる?」
「大人しく喋った方がいいと思うぞ?黒焦げになりたくなければ」
エースの言葉に抵抗を見せていた男も、メシエの言葉に先程の発火を思い出して顔を青ざめさせる
程無くして、そこに残ったのは質問された男を含め眠らせ縛り上げた空賊達の山だった
知りたい情報を確保し、エース達はコロッセウムに足を進める
既に戦いは激化し、あらゆる所で喧騒が聞こえていた