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【神劇の旋律・間奏曲】空賊の矜持

リアクション公開中!

【神劇の旋律・間奏曲】空賊の矜持
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リアクション

  
 「レンちゃん!凶司ちゃ〜ん、お嬢ちゃんは無事よ、伝えてくれるぅ〜」
 「セラフ……さん?」

魔獣が解き放たれ、最後の援軍が到着してかつてない乱戦が始まる中
自分の傍に現れたセラフ・ネフィリム(せらふ・ねふぃりむ)の姿に
パフューム・ディオニウス(ぱふゅーむ・でぃおにうす)は茫然とその名を呼んだ
マスターへ状況と位置確認の通信を終えたセラフが、やっほ〜と手を振ってそれに答える

 「末っ子一人で頑張ってたみたいじゃない〜?
  みんなで助けに来たわよ、うちの人達もすごい剣幕だったけど来てるわよ
  凶司ちゃん人のこと言えたクチだったかしらん?」

そこまで言って、クスクスと楽しそうに話しかけていた彼女の声色が低くドスの利いたものに変わる

 「そんなわけで、今回は助けてあげるけど…二度目はないと思いなさい?」

それでも優しく身を起こすのを手伝ってくれる処に彼女らしさを感じるパフューム
そのギャップが、彼女なりの本気な叱責と安堵なのだと理解した時
上空からレン・オズワルド(れん・おずわるど)が天馬に乗ってやってきた

セラフの誘導で二人を発見し、傍までレンを乗せて舞い降りたそれが
フリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)の愛馬【エネフ】だとわかり、パフュームが駆け寄る
その顔に彼も嬉しそうに鼻をこすりつけるのだった

 「待たせたな、フリューネには衿栖が助けに向かってる。もう大丈夫だ
  このまま一気に動く、力を貸してくれパフューム!」
 「うん!」

そのまま彼の後ろに飛び乗るパフュームに見送りの声をかけるセラフ

 「あたしらの助けはここまで。後は自分の責任果たしてきなさい」

飛び立つエネフの背でその言葉を受け止め、レンとともにパフュームは舞い上がる
それを見た赤城 花音(あかぎ・かのん)が【空飛ぶ箒】で接近してきた
眼下に広がる戦いを見ながら、レンと花音が彼女に声をかけた

 「フリューネ周辺の安全を確保する、魔法援護を頼む」
 「ボクもパフュームちゃんたちと、一緒に行動するよ!
  歌姫の能力は魔法の力を増幅できたりするからね♪落ち着いて詠唱して魔法を使ってね☆」
 「ありがとう!……いっくよぉ〜!!【ファイアストーム】」

ようやく完全にいつもの元気と明るさを取り戻した彼女の手から炎が放たれた

 
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 「どいてください、お仕事のジャマです」
 「お断りします、そんなにデスマッチが好きなら詩穂がお相手しましょう☆」

【レジェンドレイ】の攻撃を不意に割り込んだ【オートガード】に阻まれ
珍しく不機嫌な声でアユナ・レッケス(あゆな・れっけす)が発動主を見つめる
そこには彼女と同じ身の丈のロイヤルガード騎沙良 詩穂(きさら・しほ)が立っていた
帰り血の汚れで彩られた【フレイムワンピース】に身を包んだアユナとは対称的に
【伝説のメイド服】と【ご奉仕ブーツ】で身を固めて剣を構える詩穂

可憐とやや場違いが生み出す壮絶な彼女達だけの結界に
今まで戦っていた閃崎 静麻(せんざき・しずま)達は手が出せず、そのまま魔獣の対応に移行する
元々竜造の援護が目的なアユナとしては、不利な状況で即座に逃亡を当初選ぶ予定だったのだが
詩穂の様相に何かを感じたのか、嬉しそうに愛用の【ナタ】を研いでほほえんだ

 「ふふ…うふふふ★トモちゃんの事をなにか知ってるかな?」
 「詩穂に勝てたら教えてあげますよっ!」

【ナタ】の連撃と詩穂の剣技【ソードプレイ】の応酬が始まる
そこにお互いの微かな意地の張り合いを感じた人間は少なくはない


一方、ステージ上の松岡 徹雄(まつおか・てつお)の前には
申 公豹(しん・こうひょう)リュート・アコーディア(りゅーと・あこーでぃあ)が立ちふさがる

 「二人か……おじさんにはちょいとキツいかな〜」

そう言いながら、先程の相手……小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)達を追い詰めたコンボを
徹雄は容赦なく二人にも放つ
【ブラックコート】と【隠形の術】を合わせての接近……だが公豹も【ディテクトエビル】で回避し
上半身狙いの【盗賊の鎧通し】もリュートの【オートバリア】で防御され、攻め手を防がれる
再び距離を置いた彼の手に光る【さざれ石の短刀】を見て、不敵に公豹が笑う

 「ふん、貴公の石化と私の雷……どちらが先にその身に降りかかるか勝負です
  こちらも遠慮なく行きます……リュート、心肺蘇生は止めませんから」
 「師叔の思うままに。守りは僕が、どんどん盾にしてください」

AED片手に答えるリュート
そんな彼らに再び接近を試みる徹雄に、公豹は【雷公鞭】を放つのだった


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 「え〜と、あなた達は?」

多くの助っ人の参入で、激しい戦いで流れが変わる中
当然フリューネとリネンの前にも援軍は現れた
しかしこちらは今までと違うオーラにちょっと戸惑う手負いの女空賊二人

 「助ケニ来マシタふりゅーね!コレヲ!!」
 「えっと……コレ何?」

そんな援軍の一人ロドペンサ島洞窟の精 まりー(ろどぺんさとうどうくつのせい・まりー)
手に持った【パンドラの箱】をフリューネの前に置くと箱が開いて
どこかで見たような鎧がこれまたどこかで見たような天馬のオブジェ状に収まっていた
何となく望まれている事は理解しつつ、状況とのギャップに思わず問いかけるフリューネ
その問いこそ望んでいたものとばかりに胸を張って答えるマリー

 「貴女ナラコノ【天馬星座】の闘衣ヲ身ニ纏エルハズデス!」
 「追い待てマリー!その前に大事な事があるだろう!!」

そんな彼女をたしなめるようにもう一人の援軍が口を開く
そんな彼……弥涼 総司(いすず・そうじ)の手には一房のバナナが握られており
これまた意図を測りかねるフリューネ
そして彼もまりーに負けず劣らず胸を張ってその疑問の眼差しに答えるのだった

 「まず大事なのは回復だ!どうせ捕まってて碌な食事取ってないんだろう?
  俺の自慢のバナナでも食べてばっちり回復してくれ!」
 「ちょっと、あなた達何ふざけて……ふぁっ!?」

思わず半分怒った体で口を挟もうとした隣のリネンだが、そんな彼女を拘束する力があった
総司のフラワシ【ナインライブス】によって動きが止められた彼女の口に先にバナナが押し込まれる

 「無理やりってのも嫌いじゃないぜ!オレのバナナはそんなに美味いか?
  さぁ次は本命だ!覚悟……いや回復しろふりゅ……」
 「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

続けざまにバナナ片手に迫った総司の姿が当然消え、次の瞬間金網に轟音とともにめり込んでいた
原因である爆走からの豪快な蹴りを放った新たな援軍の姿に見覚えがあり
フリューネは、ついてこれない思考とともに、その名をよぶ

 「え〜っと……シルフィスティ……?」
 「覚えててくれて嬉しいわ、馬鹿バルキリー!」

名前を呼ばれ、ふふふと援軍にしては凶悪かつ壮絶な笑みを浮かべるの助っ人
彼女、シルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)は豪快にフリューネを指さして叫んだ

 「まさかあの英雄様がドジって捕まったなんてね!
  積年の怨みをはらし勝ち誇る大チャンス!
  派手に一発飛び蹴りかまそうと思って、なんかバナナに邪魔されたのは残念だけど
  ことあるごとに目の前に立ち塞がり貶めてきてくれた積年の恨み晴らさせてもらうわ!
  まずその恰好をたっぷり笑い飛ばしてから……!?」

そこまで言って不意にごぃぃぃぃぃんという音とともに機能停止するシルフィスティ
銅像のように倒れた後ろには【七神官の盾】を振り下ろした姿のこれまた新たな影があった

 「……もう気は済んだんだから静かにしてくださいフィス姉さん
  ただでさえ【執筆遅延】に泣いてる天の声が聞こえてるんですから
  これ以上馬鹿やって横道にそれるとGMのライフがゼロになりますから……」

【レゾナント・アームズ】による怪力で動かなくなった義姉をつかみ上げ
目の据わった体でリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が呟いていた
そのまま奥で魔獣相手に戦っている仲間
ミスノ・ウィンター・ダンセルフライ(みすのうぃんたー・だんせるふらい)に呼びかけた

 「あなたの【先生】は確保したわよミスノ!
  どうせ置いていかれた憂さ晴らしするなら、帰り道の確保よろしくね!」
 「先生の敵は僕の敵ぃぃぃぃぃぃ!」

リカインの言葉の返答が聞こえると同時に【レジェンドストライク】による火柱が奥であがった
バラエティに富んだ援軍の入れ替わりに一瞬事態を忘れかかるフリューネだが
そんな隙を狙って飛びかかる魔獣の咆哮にようやく我に返った
若干反応に出遅れた彼女とバナナに苦悶してるリネンに獣の牙が襲いかかる

だがそこでようやく援軍らしい援軍が到着した

 「待たせたな!この無茶、貫き通してみせるッ!」

巨大な【パラミタ虎】の猛攻を、割って入りざまの大剣【ヴァナルガンド】でいなし
桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)はHA【雲耀之太刀】による雷速の剣戟をその爪に繰り出した
獣の躍動すら凌駕するその剣にバランスを崩し、魔獣が腹を見せた刹那
新たな援軍琳 鳳明(りん・ほうめい)の【神速】を上乗せした【黒縄地獄】が炸裂した

 「ヴァイス!」
 「了解しました、支援射撃を開始します」

再び群れの中に吹っ飛んだ魔獣にヴァイス・フリューゲル(う゛ぁいす・ふりゅーげる)の援護射撃
【機晶ガトリングレールガン】【六連ミサイルポッド二門】の一斉射撃で煙幕が立ち昇る中
ようやく【黒縄地獄】の構えを解いた鳳明がはぁぁぁと息をもらした

 「だぁぁぁ!ドッキドキだった!綺麗に決まってよかったぁ〜!
  フリューネさんリネンさん久しぶりっ。一匹狼もいいけど、無理はダメだよっ!?」
 「鳳明!?」
 「私もいますよリネンさん!」

知った顔の登場に傍らのリネンが声を上げた時
茅野瀬 衿栖(ちのせ・えりす)が新たにかけつけ、彼女に声をかけた
そのまま隣のフリューネに自己紹介する

 「フリューネさん大丈夫?安心して、私はレン・オズワルドの仲間です
  じゃあ、彼に無事を知らせる為にも派手に暴れちゃいましょう!」
 「天樹!これを美羽さん達に!」

そのまま鳳明が傍らにいた藤谷 天樹(ふじたに・あまぎ)に【石化解除薬】を投げ渡す
松岡 徹雄(まつおか・てつお)によって石化していた3人
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)
そして伏見 明子(ふしみ・めいこ)達を【粘体のフラワシ】にて守っていた天樹が
早々にそれで石化を解く中、魔獣と交戦中の煉の叫びがこだました

 「奥義、真・雲耀之太刀!この一太刀で魔獣を一刀両断する!」

【ウェポンマスタリー】の剣技【アンボーン・テクニック】の魔力による身体強化
さらに【サイコキネシス】で加速させた必殺の一撃が魔獣を一刀両断した



そんな賑やかな救助者達の姿を見ながら、なぜかフリューネは楽しくて仕方がなかった
(何てデタラメで、賑やかで、力強いんだろう)

自分を助けに来た多くの援軍を見て、彼女は確信する
自分はこの多くのパラミタに生きる人達が大好きなのだと
そんな大好きな人達を自分の戦いに巻き込んで、傷つくのが嫌だから
だから自分は孤高を貫いてきた……そう思い、それを自分の掲げる矜持への灯としてきた

だが、その心の裏に隠れていたもう一つの本心にようやく辿り着く
自分は、この全ての人と、全てのしがらみを越えて手を繋ぎたい、仲良くなりたいのだと
このどうしようもなく真面目で、デタラメで、力強くて、頼もしい仲間
彼らに囲まれてこその【孤高の女空賊】……それは一見矛盾した存在かもしれない

でも……それでいい、それが自分の力だ


 「あははは……あはははははは……あははははははは!」
 「!?ふ、フリューネ!?」

突然のフリューネの笑い声に、自分の数時間前の演技を棚に上げてリネンが戸惑う
助けに来た誰もが顔を見合わせるその笑いをひとしきり済ませた後
実に晴々しい笑顔でフリューネは立ち上がる

 「ありがとう……その鎧、借りるわね!」

そう言うと、まだ場違いのように据え置いてあった【天馬星座の闘衣】に手を伸ばす
まりーが装着シーンを見て感動にうち震えている中、まだ伸びてる総司の手からバナナをひとつ取り
全員があっけにとられてる中、それを口に放り込む

 「私も戦うわ!ガイナスを倒しましょう!」

そこにいるのは、いつもの誰もが憧れる女空賊
鎧とか武器とかそういうもので決まらない彼女の在りようが、いつもの気高さを取り戻す
衿栖が【ぽいぽいカプセル】から取りだした【トネリコの槍】を受け取り、足の鉄球を壊すと
そこで戦う全ての仲間に聞こえるように、大きな声で叫んだ

 「みんな!もうちょっとだけここをお願い!私はガイナスを倒しに行きます!」

それだけで、その場の仲間の戦意が上がる
彼女をガイナスのもとに案内するためにレンとパフュームを乗せたエネフが近づいていく

 「私が案内します、ついてきてください。レンは操縦を!」

愛する主人とパフュームを乗せ
レンとメティス・ボルト(めてぃす・ぼると)の乗る【ジェットドラゴン】に誘導され
コロセウムを後にするフリューネを見送ったリネンは、ふとステージ下を見下ろす
そこには密やかに退場しようとするエッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)がいた
その視線に気が付き、彼は何でもない風にリネンに声をかけた

 「こちらの仕事は終わりです。もう大丈夫でしょう
  私のメッセージを受け取ってくれて感謝します、リネン・エルフト」
 「……単にあなたの言った【お礼】を素直に受け取っただけよ
  別にあの時、あなたに逆恨みをされる様な事はしていないし
  あとは、あなたと陰で連絡を取ってくれた彼女に礼を言わないとね」

リネンの言葉に彼もその苦労者の方を向く
そこには石化から解放された伏見 明子が居心地が悪そうに顔を赤くして座っていた

 「確かに……あなた達みたいな方がいて助かります
  たとえ怪異と成り果てても、私は私らしく最後まで在ることが出来ますから」

そう言ってネームレス・ミスト(ねーむれす・みすと)と共に死霊術師は立ち去る

 「あなた達の美しい翼も気高くあらん事を……ご武運を祈ります」