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はじめてのお買い物

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はじめてのお買い物

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 本日は快晴、雲もなし。絶好の買い物日和。うん、ひとつ頷く。
 鏡の前でくるりと一回り。どこに出しても恥ずかしくない。うん、ひとつ頷く。
 丸っこい字で書かれた買い物リストの再確認。上へ下へ見直して書き漏らしはなし。うん、ひとつ頷く。
 最後に軽やかな足取りで同室のパートナーを振り返って、ルシア・ミュー・アルテミス(るしあ・みゅーあるてみす)は笑いかけてみせた。
「それじゃあリファニー、お土産を楽しみにしててね」
 ルシアのパートナーリファニー・ウィンポリア(りふぁにー・うぃんぽりあ)は、笑顔を向けられても不安げで、
「大丈夫ですか? ここからデパートまでの道のりは把握していますか?」
 何度目かになる質問に、ルシアは今度もまた、さらさらと答えてみせた。
「へいきへいき。まずここから天沼矛で上がって、空京のシャンバラ宮殿前に行くでしょ、あとはそこから歩きですぐ。ほら、ちゃんと憶えてるわ。心配しないで」
 ルシアは、どうだと言わんばかりに胸を張るが、リファニーはやはり浮かない顔。心配性だなあ、とルシアは思う。ここはバッチリ見事に買い物をこなして、心配性のパートナーに信用してもらわなきゃ。
 ぐっと手を握って、
「じゃあ、行ってきます。お留守番、よろしくね」


 軽い音を立ててルシアが出ていった扉を、リファニーはしばらく見続けていた。
 最後まで不安は取り除けなかった。なにせ今の今まで買い物をしたことがなかったというのだから、不安にもなる。そのことからも分かるように、ルシアは常識が危うい部分が多々ある。言ってしまえば世間知らずで、今回のことにしたってデパートどころか空京市街には行ったこともない。そのくせ聞きかじりの道のりを、さも簡単そうに並べ立てる姿には危なっかしさしか感じられなかった。
 世間知らずと言っても、ルシアは賢い子だし、大丈夫だろう、とは思うのだ。思うのだが、やっぱり不安で、ルシアに内緒で友人や知人に、ルシアが無事に買い物を済ませられるよう、協力を仰いだ。
 これで大丈夫、もう安心。そう思って風景写真集へと目を戻した。
「…………」
 ペラ、ペラ、と速読でもしているかのようなページをめくる音だけが響く。風景なんてろくに目に入らない。口元へ傾けていたカップの中身はずいぶん前から空っぽのような気がする。ちらと時計を見た。ルシアが出かけてから十分も経っていない。
 これで大丈夫、もう安心、に違いない。違いないが、
「……落ち着きませんね」
 落ち着かない時間に耐えかねて、写真集を閉じた。
 結局、リファニーは直接見守るため立ち上がった。