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リアクション
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場所は移って聖堂内部。
そこでは千年王と契約者たちの戦いが続いていた。
「――千年王、こっちじゃ!」
パートナーであるギャドル、ウォーレンとで散らばるように動き、千年王をかく乱するルファン・グルーガがそういった。
ちょこまかと動き回っては攻撃を加える3人に、千年王はイラだったように手にしたサウザンドソードを振り回す。
「……なるほどなぁ」
そんな千年王の動きをつぶさに観察していた瀬山 裕輝(せやま・ひろき)は、思案深げにアゴをさする。
彼はさきほどから、歴戦の立ち回りであらゆる角度から王を観察し、その動作を頭に入れていた。
そして自身の博識な知識にそれを当てはめ、千年王の意識的や無意識的にもしてしまう動きと癖を探し出そうと試みている。
そんな裕輝の鋭いホークアイは、千年王の隙を見逃さずに捉えた。
「そこやでぇッ!」
裕輝はその体から闘気を発して、それを千年王へとぶつける。
歴戦の必殺術で狙い定めた遠当ての一撃は、地味だが千年王の動きを確実に鈍らせる。
「1発でダメなら、何発でも喰らわせてやるで。そうすりゃ、いつかガタがくる」
と、聖堂の内部に突如として轟音が鳴り響いた。
戦いっていたものたちや歌っていたものたちは、その音に思わず手を止める。
「わっ! なんなのよ、この音は!?」
小鳥遊美羽はキョロキョロと辺りを見回すが、大きな音が聞こえてくるモノは周囲にはない。
「美羽さん、上!」
と、ベアトリーチェ・アイブリンガーが天井を仰ぎ見て叫んだ。
その声に美羽も上に視線を向ける。
すると空から轟音が近づき、突如として天井が崩れた。
「危ないッ!」
源鉄心は崩れ落ちてきた瓦礫から守るように、ティー・ティーとイコナ・ユア・クックブックの上に覆いかぶさる。
そんな鉄心と同じように、他の契約者も自身のパートナーやを守るように動いた。
『ガアアアアッ!?』
崩れた瓦礫に埋もれ、千年王の姿が消える。
と、壊れた天井に開いた穴から、炎に包まれた飛空艇が通り過ぎていくのが見えた。
そしてその飛空艇の姿が見えなくなったかと思うと、どこかに墜落して大きな爆発音が鳴り響いた。
「――エンヘドゥさん、大丈夫?」
不滅軍団を展開し、エンヘドゥや周囲の人たちを瓦礫から守った涼介・フォレストはそういった。
それにエンヘドゥはうなずいて答える。
「それにしても今のは一体なんだったのかしら?」
水原ゆかりはぽっかりと開いた天井を見上げてつぶやく。
「飛空艇……みたいだったわね?」
そんなゆかりのつぶやきに、マリエッタ・シュヴァールはそう答えた。
「――敵の増援がそこまで来てるのか」
マリエッタと同じように飛空艇の影を見た国頭武尊は、光学迷彩を解いてつぶやく。
そして機晶爆弾を取り出して、霊廟と前のフロアを結ぶ唯一通路の前にその爆弾をセットした。
「外の仲間を信じてないわけじゃねぇが、いざって時はこいつを爆発させて増援を遮断するか」
武尊はそういうとその姿を再び光学迷彩で隠し、武器を構えた。
「どうやら回収部隊も攻撃にあっているようですね」
東朱鷺はそういいながら、Mへと視線を向けた。
「……くッ!」
「作戦は完全に失敗です。そろそろ引き上げた方がいいんじゃありませんか?」
天神山葛葉はMにそういって、この場を脱出するための策を考え始める。
だが、Mは前に出て戦う姿勢を見せた。
「……ここで、引く……わけに……――」
と、Mの体が突然ぐらりと揺れてその場に倒れ込んだ。
それを見た朱鷺は慌ててMの体を受け止める。
「マリアンヌお姉ちゃん、寝ちゃったの♪」
「おいおいッ、ソイツどうしちまったんだ?」
斎藤ハツネと大石鍬次郎が倒れたMを見ていった。
「この症状……どうやら毒吹き矢にやられたようじゃの」
辿楼院刹那は、Mの首筋についた傷を見てそうつぶやく。
先ほど天禰ピカの放った吹き矢の毒が、じわりじわりとMの体を蝕みはじめていた。
「ボクにまかせてください!」
と、アルミナ・シンフォーニルが前に出て、Mにキュアポイズンをかけた。
するとMの苦しそうだった顔は楽になったような顔つきに戻る。
「毒はなんとかなりましたけど、かなりのダメージがあるみたいで起きませんね」
ヒールでMを回復しながらアルミナは皆にそういう。
それを聞いた葛葉は皆を見回す。
「依頼者がこれでは任務は遂行できない。やはり、ここは脱出した方がいいでしょう」
『――オオオオオオッ!!』
と、聖堂内に千年王の咆哮が響く。
瓦礫を吹き飛ばし、王はその姿を再び現したのだ。
「千年王、おまえはいつまでそうやって戦い続けるつもりだ!」
レンオズワルドが前に出て、千年王に向かって叫んだ。
だがその言葉は千年王には届かずに、空しく宙に消える。
「歌いましょう」
と、エンヘドゥが立ち上がってそういった。
その声に共に歌っていたものたちも立ち上がる。
そんなエンヘドゥたちの姿を見て、中願寺綾瀬は思わず口を開いた。
「皆様の行為が無駄とは言いません。ですが、あなた達の歌で千年王を静めてもまた同じことの繰り返しにしかなりませんわ」
「同じことの繰り返し?」
「そうですわ。今回のように過去の英雄に泥を塗るような真似をする輩はきっとまた現れる……そんなことを私は望みません。それを許すくらいなら、英雄に敬意を払い……ここで終わらせるべきですわ」
「確かにあなたのいう通りかもしれませんわね」
エンヘドゥはそうつぶやいて、千年王を見つめた。
「でも、千年王は世界が平和になったことを知らずに今も戦い続けていますわ。だからわたくしは、平和な世界になったことを伝えたい。そして、英雄である千年王には穏やかな最後を迎えてほしい……わたくしは千年王のことを信じたいのですわ」
エンヘドゥはそういい終えると、目をつぶり再び歌をうたいはじめる。
「……それが、あなたの答えなのですわね」
綾瀬は真剣な眼差しでエンヘドゥを見た。
彼女も自分なりに真剣に考えて出した答えが、千年王に敬意を払い討つというものだった。
他者にどう思われようが、綾瀬は自分の行いを決して恥じたりはしない――そんな強い想いをエンヘドゥからも感じ、綾瀬も千年王へと視線を移す。
『オオオオオオ――ッ!!』
千年王は雄叫びを上げて、ヘルファイアを吐き出した。
千年王へとさまざまな想いを思った契約者たち。
だが、彼に強い想いをもった者がもうひとり、この場へと近づいていた。