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ヴァイシャリーでのめざめ

 
 
「ふふふふふ、なければ作っちゃえばいいんだよねっ!」
 フロイライン・カサブランカを前にして、ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)がほくそ笑んだ。目の前にあるのは高機動パック仕様の素のプラヴァーであるが、カスタマイズに目覚めたネージュ・フロゥの設計によって、これから百合園女学院のイコン工房で改造してもらうのである。
「いいかげん、百合園にも人型イコンがあってもいいと思うのよね。作りかけたこともあるわけだし……。とにかく、このプラヴァーの技術を使えば、絶対完成だよ」
 とはいえ、イメージを作らなければ始まらない。
 実際の改造は専任の技術者に任せるとして、どうしたものか……。
「イメージとしては、百合園生という感じかなあ……」
 スケッチブックを広げると、ネージュ・フロゥがデッサンを描き始めた。
「まず、素体は……公式水着のデザインかなあ……」
 スケッチブックに描き描きしていく。
 イメージとしては、旧制服の方が高機動型にはしやすいかもしれない。スカート部分を高機動ブースターにして、華麗に翻しながらベクターノズルで縦横無尽に飛び回る。うん、いいかも。
 カチューシャのお団子をセンサーとして、頭部はちょっと大型化した方がいいだろうか。手首のカフスにはハードポイントを設定すれば、武器の取り回しも便利かもしれない。
「後は、エプロン型追加装甲と、ランドセル型ミサイルかなあ。バスケット型ミサイルランチャーなんかもいいかも。一斉攻撃すれば、敵は跡形もないよね。オーバーキル……いいかも……」
 ちょっと自分の妄想にうっとりとしながら、ネージュ・フロゥがデザインをまとめあげていった。
「できたあ。後は、本物にしてもらうだけだよ。職人さーん、これ見て見てー!!」
 完成したイメージの書かれたスケッチブックをブンブンと振り回しながら、ネージュ・フロゥはイコン工房へむかって走りだした。
 
    ★    ★    ★
 
「職人さーん」
「きゃあ!」
 突っ走る弾丸、ネージュ・フロゥにぶつかって、ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)が転けた。それには気づかず、あっという間にネージュ・フロゥが見えなくなる。
「痛い……」
 べちっと、思い切り顔から胸から一気に地面と仲良くなったミルディア・ディスティンが、反動で跳ね上がった脚がスカートから大きく飛び出しているのも構わずに、ピクピクとそのままの姿勢を維持していた。
「こ、これは……、痛……気持ちいい……」
 なんだか変な感覚に目覚めて、ミルディア・ディスティンは動けずにいた。
 一般的に、契約者の肉体は非契約者と比べて何倍も頑丈になる。ソフトボールをぶつけられたとしたら、一般人であれば「はうっ」と気絶してしまいかねないわけだが、契約者であれば飛んできた砲丸を「ていっ」と手刀で叩き落とすか、難なくたっゆんではじき返せるほどだ。当然、「んっ? 今、何かしたのかなあ」と言わなければならない。
 つまり、転んだ程度では痛くないことがほとんどだ。むしろ、適度な刺激で、気持ちいいのかもしれない。
「気持ちいい……」
 なんだかうっとりとした口調で、ミルディア・ディスティンがつぶやいた。
「もう一度……。でも、わざと転ぶのもなあ……。誰かに見られたら、変だと思われるだろうし……」
 いや、すでに変な格好で倒れていること自体変である。
「ミルディ、こんな所でどうしたのですか!?」
 そんなミルディア・ディスティンの第一発見者となった和泉 真奈(いずみ・まな)が、あわてて駆けつけてきた。
「待っててください、今すぐ起こしてあげ……」
「踏んで……」
「へっ!?」
 自分の耳は、今、一瞬、何を聞いたのだろうかと、和泉真奈が凍りついた。
「そのマジカルシューズで、このへんを思い切り……」
「ええっと、肩こりですか?」
「うんうん、そうかも」
 なんだか踏まないとこの場を動いてくれそうもないので、仕方なく和泉真奈がミルディア・ディスティンを踏んだ。さすがに靴を履いたままはためらわれたので、脱いで素足で踏む。
 ふみふみ……。
「ああ、そのへん。もっと……」
「こ、こうですか?」
 マッサージのつもりで踏んでいた和泉真奈が、ふいに周囲の視線に気づいて真っ赤になった。これは、完全に誤解されている。
 通りすがりの百合園生のひそひそ話に耐えかねて、和泉真奈がミルディア・ディスティンを引きずって建物の中に避難した。
「ああ、引きずられるのって気持ちいい……」
「何を言ってるのですか。ミルディ、少し変ですよ」
 恍惚としているミルディア・ディスティンに、和泉真奈がどん引きながら言った。
「だって……」
「いいかげんになさい。そんな変なことを言うならお仕置きです!」
「わーい、お仕置きだ♪」
 なんだか、期待に満ちた目で見つめられて、羅英照の鞭を手にした和泉真奈がまた引いた。とはいえ、いまさら引っ込みがつかない。それに、この鞭は相手に畏怖の念を与えるので、軽く叩いてから説教をすれば効果は抜群のはずなのだが。
「とにかく、そんな変態的なことは許しません!」
 ぺしっ。
「わーい♪」
 叩かれて、喜ぶミルディア・ディスティンであった。
 ぺしぺしっ!
「あっ、これ、ちょっといいかも……」
 喜ぶミルディア・ディスティンを叩くうちに、何かに目覚めていく和泉真奈であった……。