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フリマと少女の本

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フリマと少女の本

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「クラウドさん、こんにちは」
「よぉ、ネーブルちゃん」
 ちょこんとクラウドの前に立ち挨拶を交わしたのは、ネーブル・スノーレイン(ねーぶる・すのーれいん)
「えっと……えっとね?」
 ネーブルはもじもじとクラウドの服を掴む。
「ん?」
「この前は……恥ずかしい姿を見せてしまって、ごめんなさい」
「あ、あの時のことか。いや、全然気にしてないから、ネーブルちゃんもあまり気にすんなよ」
「ふふ。でも、この前のは……内緒にしてて、ね? やっぱり……恥ずかしいから」
「あぁ。分かった。でももしまた何かあったらいつでも頼ってくれていいぜ」
 俯きがちなネーブルに笑って返事をする。
「あの、ところで……」
 ネーブルが顔を上げる。
 視線の先には、サリー。
「その……人って、クラウドさんの……お姉さん、なの……?」
「そうだけど」
「えっと、その……」
 ネーブルは自分の感覚に、自分でも首を傾げる。
(サニーさんとは、お花見で一緒になったけど……なんだか今の人とちょっと、違和感があるような……)
「どうした?」
「ん……なんでもない」
 怪訝な顔をするクラウドに、平静を装って答える。
(クラウドさんには……内緒の方が、いいのかも)
(でも、お友達を、助けたい。クラウドさんも、サニーさんも……)
 必死で頭を巡らすネーブルだった。

「初めまして、可愛いお嬢さん」
 エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)はプチブーケをサリーに手渡すと、笑顔で言った。
「ところで、サニーさんは?」
 ざわ……!
 周囲の空気がざわめいた。
 全員が気付いていて、もしくは気づきそうで、でも触れなかった違和感。
 エースはそこに真正面に切り込んだのだ。
「え……エ、サニーさんっテ? 私は、サリーですヨ?」
「女性を敬う紳士として、別人を同じ人だと見間違える事はあり得ないよ。だって瞳の色も髪の色も違うし、喋り方も違うよね?」
 集まってくる周囲の視線に焦るサリーに、あくまでもにこやかに答えるエース。
「何言ってるんだよ。姉さんは姉さんだろ?」
 サリーに助け舟を出そうとするレイン。
 その前に、リリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)が立ちふさがる。
「何言ってるの?」
「そ、そっちこそ」
「……実の姉と別人を混同しちゃって、あなた達おかしいわよ?」
「別人……? え、ど、どういうことだ?」
 混乱した様子で頭を押えるレイン。
「お、おい大丈夫か……あれ……」
 それを気遣いつつ、自分も頭を押えるクラウド。

(やっぱり……やっぱり、サリーちゃんはおかしい!)
 漠然とした不安が自分の中で確信に変わるのを、ルカルカは感じた。
「サニーさん……一体どうしてしまったんでしょう」
「やっぱりな。あの本が関係してると思ったんだ」
 息を切らせながらウェザーに駆け込んできた占卜大全と結和は、サリーを見て頷き合う。
「やっぱりって、あの本って、どういうこと!?」
 それを耳聡く聞きつけるルカルカ。
 柚に三月、ネーブルにエースたちも集まってくる。
「実はな……」

 占卜大全の話が全て終わる前に、ルカルカは走り出していた。
 ダリルも、それを追いかける。