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【神劇の旋律】旋律と戦慄と

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【神劇の旋律】旋律と戦慄と

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     ◆

 日比谷 皐月(ひびや・さつき)は面倒そうだった。
本当に面倒臭そうに、本当に気怠そうに

 敵からの攻撃を避けている。

「何でこんな事になってんだ? “助けて欲しい”なんて事をきいたから来てみたんだ。来てみたってのに、随分と巻き過ぎな気がするんだけど、どうだろうな。オッサン」
「…………」
 手にする剣やら斧やらを振り回す敵六人に対して、彼は言葉を投げかけてみる。が、当然返事等返ってくるはずもなく、彼に向けられるのは“殺害行動”ただのそれだけ。
それでも彼は気怠そうに、本当に面倒そうに攻撃を避ける。
「そもそもさ。そもそもよぉ……あれだよ、うん。俺そんなに何? この、なんてーかなぁ、そう! “ちょっと格好良い感じ!”みたいな立ち位置じゃなくていい気がするんだわ。そこんとこどう思うよ?」
「…………」
「だよね。“男は硬派で候!”的なね。そんな感じよね、うんうん。いや、良くないけどね。ってか誰か俺の質問に答えろっての」
 ひらひらと攻撃を躱す彼は、そこで思い切り敵の一人に蹴りを放つ。蹴り飛ばし、将棋倒しにしようと考えた。が、二人目がそれをしっかり受け止めてしまったので意味はなくなる。
「だってさぁ、“楽器盗られるからどうだ”的なね、そんな感じだったんだよな? たしか。それがまさか、此処まで団体様ご案内! 的な感じになってるなんて思わないだろ普通」
 彼は尚もぼやいた。蹴りがあまり効かないのは、恐らく彼の中では織り込み済みなことなのだろう。
「ああ、面倒。ほんと面倒。ウォウルかラナに話きかねぇと全くわかんないし。あ、でもこいつら少なくとも敵か。やる気満々すぎだしなぁ、やっぱ」
 蹴り飛ばした事で自分を追跡する敵の勢いが止まった事を理解したのだろう。彼は踵を返して足を早めた。
「まさかあいつ等連れて家ん中入ったら流石に俺が殺されちゃうだろうからなぁ、あの暴力女に。どうすっかなぁ」
 既に日がおちているとはいえ、まだ辺りは僅かに明るい。故に彼は広い場所を目指している。今居るのは、建物の周りに造られている道。建物と木々がある為にそこまで開けた空間でもなく、六人を相手にするには随分と手狭だった。既に何度かこの屋敷にやってきている彼としてみれば、どこに何があるか、どこを目指すべきかは頭にあるらしく、足取りは随分としっかりしている。
「ま。じゃあ俺と同じ感じで此処を防衛してるやつ見つけて事情でも聴いてみっかな」
 自己完結をした彼が足を進めるのは、この屋敷の中からも見ることの出来る、中庭だ。