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【神劇の旋律】旋律と戦慄と

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【神劇の旋律】旋律と戦慄と

リアクション

 2.――奏でる旋律 整えて





     ◆

 彼――瀬山 裕輝(せやま・ひろき)は今、ラナロックの家の、その広大な土地の中にある庭を歩いていた。たった一人、辺りを見回しながら、ただただ歩いているだけである。
彼が今何を思っているのかは定かではないがしかし、それでもこの空間で発生している事象そのものにはあまりポジティブな気持ちを持っていないらしい。
 あくまでも穏やかな顔で。
 あくまでも穏やかな表情で。
彼は辺りに溢れている緑に目をやり、ぼんやりと周囲に目を回しながら肩を竦めた、
既に日が傾き、水平線へと沈んで行くその時刻に、彼は随分物悲しそうな表情を浮かべているが、しかしそれを“物悲しい表情”と捉えるべき人物が、存在が、其処には存在していない。詰まる所で彼は今、その場に置いて一人きりだったわけだ。

「そないなけったいな話があってたまるか」

 呟く彼の顔から、ぼんやりとした表情が消えていく。

「くだらんくらだん。そないなモンは全く以てくだらんよ」

 夕日を前に。沈む太陽を前に。

「“何が悪いか”なんて野暮な問題を突きつけられたら、誰やって気分悪ぅなんねん」

 彼は一人、呟いていた。

「せやから俺が――ふん。……やめとこか」

 完全に表情を消した、その顔が――瞬間的に笑顔になる。
笑顔になって彼は踵を返した。人の気配に気づいたから。
「なんや兄ちゃん、俺は別に敵とちゃうよ? 警戒したかて意味あらへんのと違う?」
 先程話を聞き、自らの成すべき事を実行する為に動き出した彼、安芸宮 和輝、その人。
一人で庭を歩いている彼を不審に思った和輝は、静かに彼の後ろに回り込み、様子をみていたらしい。
「敵か敵じゃないかもわからない人物に、『俺は敵じゃない』と言われても、信用が出来ると思いますか?」
 和輝の言葉を聞き、裕輝は肩を竦めてため息をついた。
「せやな。せやせや。兄ちゃんの言う通りや。ほんならまずは自己紹介。俺は瀬山 裕輝や。一応此処の見回りしてたんで。話の主催者(オーナー)はあの三姉妹か、もしくはラナロックっちゅーけったいな姉ちゃんやんね」
「……そこまで知っていましたか」
「まだ知っとるよ? 俺たちが集められた目的は、楽器の防衛、やろ? んでもって得体の知れない敵がくる、言うこれまたけったいな話や。あの姉ちゃんとはあんまり面識あらへんけど、周りの子ぉ等の話聞く限りやったら、そないなけったいな事ばっかに周り巻き込む言うて評判やってんな」
「それは知りませんよ。私もそこまで親しくはないのでね」
 武器を手にしていないまでも、警戒していたはずの和輝はどうやら、彼の言葉を信じたらしい。警戒を解いて肩を竦める。
「なんや、兄ちゃんもようけ知らんのんかい。ま、どっちにしたって俺の事は敵と違うてわかってくれたんねやったらそれでええわ」
「すみませんね。引き受けた以上は全身全霊でしっかりやり抜かなくてはいけませんから。問題は確実になくしていかなくてはならず――」
「ええよええよ。そんくらいのがええって。まあただ俺の言葉で判断出来るくらいやったら、今のまんまでええんちゃうの? いきなり飛びかかってこられた、言うたら流石にそら考えものやけど」
 言いながら和輝に歩み寄った裕輝は、彼に手を差し伸べて言い切る。
「てなわけで、どうもよろしゅう」
「ええ。こちらこそ」
 出された手を笑顔で握り返した和輝は、自分の名を名乗り、そして今から自分が行う事を彼へと説明する。
「ほう……! 退路の遮断け! そらぁまた! ハッハッハッ!」
「な、何がおかしいんですか!」
「いや、エライ本格的に潰しにかかんねんなぁて思って」
 二人は暫くの間行動を共にするらしく、共に辺りを見回りながら歩いていた。例えばそれは笑顔で笑いあう会話があったし、例えばそれは真剣にこれからの作戦を練る事もあった。兎に角彼等は、話しながらも足を進め、そしてある違和感が為に二人とも、足を止める事になる。
「なあ。変な音せぇへん?」
「……そうですね。何やら――トラックの様な物が近付いてきて――」
「いぃ!? ちょ、ちょ! 兄ちゃん! あれ見てみぃ!」
 言いかけている和輝の言葉を遮り、裕輝が指を指す。玄関でもなければ門でもない、明らかなに出入り口ではないその場所目掛け、大型車両がやってくるのが見えた。
「ちょいちょい待てて! あんな速度だしとったら……!」
「危ない!」
 二人の居る敷地の外。鉄格子で囲われているその屋敷の敷地の外。随分と大きなトラックが、その折をへし折って、恐ろしい速度で敷地内に入ってくる。一台、二台の話ではない。そんな可愛らしい物ではない。最初の一台が衝突し、開いた空間に次から次へと、それこそ絶えず間もなく次から次へと同じ形の車両が二人目掛けてやってきたのだ。
無論、ただただ呆然としている訳にはいかず、二人は慌てて物陰に隠れ、その様子をひたすら見つめていた。
「おいおいおい! 一体なんの祭りやの? これ……」
「わかりません。ですが……こんなに強引に、こんなに威風堂々、来ますか普通……!?」
和輝の言う通り、それは何とも大胆不敵であり、それは何処までも威風堂々であれ、それはどこまでも傍若無人なそれだった。

 相手の都合など構う事無く、敵対する存在、即ちこの場合で言えば和輝と裕輝、その二人の常識などお構いなしに、彼等はやって来る。
敵対すべき存在は――文字通り立ちはだかる壁など蹴破って、やってきた。

 どうやら二人がいたことには気付いていなかったのだろう。施設内に侵入してきた車両から出て来た大勢の敵対者たちは、決して二人が隠れている茂みの方を見向きもせずに辺りを見回しているだけだ。
故に二人は息をひそめたまま、先程以上に小さな声で会話を交わす。無論、世間話などと言った類の物ではなく、今後これからの――話。
「なあなあ、侵入経路と退路の遮断をしたかんと違うの? 自分」
「そうですが……まさか此処まで堂々とやって来るなんて思ってなかったんです……」
「せやろうなぁ……俺がもし兄ちゃんの立場かて、同じ事をやろうとしていたかて、此処までのもんとは思いもよらんわなぁ……あはは……」
「兎に角、このまま考えも無しに突っ込んで行くのはよろしくない。未意味にやられるだけです。無理は承知で――なんて言いますが、初めから何の意味もない無理はただの無謀……そうでしょう?」
「違いあらへんな」
 暫く考える二人はただただ静かにその状況を観察するより他ない。少なくとも今は。

 少なくとも、此処では。





     ◆

 それはもう、壮観と言って遜色ない風景だった。自分たちが追い求めていたそれらが全て――とまでは行かないが、それこそ殆ど踏み揃え。ある種伝説と言っても過言でないそれらが此処で、一同に会していると言って問題ない。
 感慨深げにそれを見つめるトレーネは、しかし決して明るい表情などではなく、何処か気怠そうな、重苦しそうな表情を浮かべながら、楽器たちを一つ一つ見つめている。
その行為そのものには、恐らく意味はないのだろう。ただ何か、感情的な何かを思ってそうしているだけに過ぎず、それは彼女の隣に佇んでいる騎沙良 詩穂(きさら・しほ)にも、容易にわかることだった。だからこそ、彼女は特に何を言う訳でもなく、ただただ彼女と、そしてトレーネが見つめている楽器とを、静かに見つめているだけだった。
時としてそれは、沈黙という物は、そのもの、それ自体がなにがしかの意味を持っているものであり、それを誰よりも知っているが故に、詩穂は沈黙するだけに徹している。

 と――不意に、トレーネが口を開いた。

「何だかすみません。皆様にご迷惑をおかけして――」
 余りに突然の言葉が為に、詩穂は一瞬だけ焦りを見せたが、しかし穏やかな笑顔を浮かべて「いいえ」とだけ返事を返した。
多くを語らずとも、恐らく自分が何を言いたいのか。どういう意味を持って言った言葉なのか。それがトレーネに伝わっていると、確信していたから。
だから彼女はやはり穏やかな、物静かな体でトレーネと楽器たちを交互に見つめる。
 どれほどの時間が経過したのか、それからしばらくの後、楽器が保管されているその部屋。トレーネと詩穂がいるその部屋に、数名がやって来る。
「おっ邪魔っしまーす!」
「こらラブ。そんな挨拶しながら入って行っては相手に失礼だぞ」
「知らないよーだ! だって良いじゃん、別に見ず知らずの人じゃないんだから。ねー! トレーネっ♪ ってことではろはろー」
「………礼を失している、いないに関わらず少しやかましいぞ。貴様」
「あ! ひっどいなー馬超ったら! “やかましい”んじゃなくて、“元気が良い”んだよ!」
 入ってきたのはコア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)ラブ・リトル(らぶ・りとる)馬 超(ば・ちょう)の三人だった。コアと馬超の言葉に頬を膨らませるラブは、しかしトレーネの姿を見つけるや元気に走り始め、彼女の隣に並ぶ。
「これが三人が探してた楽器かぁ……こう見るとなんだか凄いよね! あ、やあやあ詩穂っ! こんばんは!」
「こんばんは、ラブちゃん」
「二人でこれ見てたんでしょ? でも長い時間は流石に飽きちゃうよね! そうだよね! だからさ、ちょっとお話でもしてようよ! どうせ敵が来なきゃ暇でしょ、暇よね! ねっ!」
「こら、ラブ……」
 ラブのご機嫌テンションに若干タジタジのトレーネに対し、慌ててコアが制止する。
「何も私たちは遊びに来たわけじゃないんだぞ。またしてもこの楽器を奪おうとする輩が出て来て、だな――」
「……コア」
 ラブがため息をつき、漸くコアの隣までやってきた馬超がコアの腰の部分を軽く肘で小突いた。
「この女もその楽器を奪おうとしていた過去があるぞ。貴様少し考えて発言をするといい」
「な……そうだったな。私とした事が……。トレーネ……すまない。そこまで他意はなかったんだが、確かに失礼な発言だった。謝ろう……」
 肩を落として頭を下げるコアに、トレーネは苦笑しながら手を振った。
「構いませんわ。事実は事実ですし、わたくしたちも方法が少々不躾だったのは自覚しています。此処の家主であるラナロックさんも、ウォウルと言う彼も、話してみればよかっただけの話、でしたから」「ふふふん、そうでしょ? 結構あの人たち、話通じるのよ。今度あたしも何か頼んでみようかしら」
「こら、ラブ!」
「はいはい」
 コアの言葉にいい加減うんざりしていたのか、彼女は「冗談よ」と付け加えて近くにあった椅子に手を掛け、腰を降ろした。
「それで、今日はまたどういうのが来るんだ?」
 コアの言葉に返事を返したのは、今まで静かに様子を見ていた詩穂。
「どうやらまだわからないみたいなの。トレーネさんも、シェリエさんもパフュームちゃんも、全く話が分からないって感じみたいなんですよ……困っちゃって」
「ほう……敵が攻めてくるかもわからない、と言うのに人を集めて防衛しようとしたのか?」
 馬超がやや怪訝そうな顔でそう尋ねると、詩穂が思わずたじろぐ。
「まあまあ。この案はラナロックさんから頂きましたのよ? どうやら何か考えがおありの様で」
「……ラナロック……あいつの考えか」
「どうした馬超」
 怪訝そうだった顔が一瞬停止し、考え込む彼を見て、コアが尋ねた。
「いや……暴走していたとはいえ、あの女とは手合せした事がある。それこそ暴走していはいたが、あいつは其処まで考えを巡らせて戦う様な女ではないと思ったんだが……」
「要は、“ラナロックは頭が悪い”って事ね?」
「……ラブ。俺は其処まで言っていないが?」
「結構酷いね……ラブちゃん」
 馬超が頭を抱え、ため息をつきながら言うのに対し、詩穂は苦笑を浮かべてそう言った。
「兎に角、あいつの考えと言うのは、どうにも――」
「ウォウルに何か考えがあるのではないのか? 順当にそう考えるならば話はわかるぞ」
 コアが考えながらそう言うと、トレーネが首を振った。否定する為に、首を横に数回振る。
「それはなさそうですわ」
「そうなのか?」
「ええ。どうやらウォウルさん、行方不明なのだとか。この話を頂いた時、ウチの店にドゥングさんとラナロックさんがいらっしゃって、そんな事を――」
「ウォウルがいない……そうか」
 考え込む様に押し黙るコアと馬超。と、彼等の後ろからやってきた新たな訪問者が物音を立てる。次いでそれは――声になる。
「おいおいおい……ウォウルがいないってなぁ一体……どういう事だ?」
 一同がその声の方へと目を向けると、其処にはアキュート・クリッパー(あきゅーと・くりっぱー)の姿がある。彼の隣に浮遊しているウーマ・ンボー(うーま・んぼー)の背にはペト・ペト(ぺと・ぺと)が乗っていて、ペトもアキュートのリアクションに疑問を覚えたのか彼の方を向いている。
「やあアキュート、どうしたんだね? そんな驚いた表情を浮かべて」
「参ったなこりゃ……ただ楽器をどうこうしようってやつから楽器を守れば良いんじゃあ、ねぇのかよ」
「……そうだが?」
 コアも、そして馬超も。言いながら不思議そうに首を捻る。何故アキュートが焦っているのかが全く分からないと言った、その状況が為に。
「ったく……厄介な事ってのはなんだってこんなに重なりやがるんだろうな……」
「厄介な事……? ウォウルさんがいないってそんなに厄介な事なんですか?」
 恐る恐る尋ねる詩穂に向かって、アキュートは力なく頷き、言葉を繋げる。
「ペトも、お前さん等も知らねぇだろうが、前にも同じ様な事があったんだ。急にウォウルの野郎が消えたっつってな。そん時たまたまラナロックと会ったんだが……あいつな、ウォウルの事になると目の色変わって暴れやがるんだぜ? 見境なく通行人やらを撃ち殺そうとかよ」
「……性質が悪いな……」
「馬超……それは言わないであげてくれないか」
「でも、そこまで我を忘れた感じではありませんでしたわよ?」
 トレーネがラナロックの事を思いだしながら呟くと、アキュートは暫く考えてから彼なりの結論を導き出した。
「……じゃあそれは良いのか。ウォウルが裏で何か、みたいな事があるのかもしれねぇし、ラナロックが落ち着いてるなら暫くはこっちに害もないだろ」
 安堵のため息を漏らした彼は、漸く部屋の中央まで足を運び、ラブが座っている椅子の隣にあった椅子へと腰を降ろす。
「まあそんなこたぁどうでもいいんだが。んでもって此処に来たんだから協力はしてやるんだが、その前に一つ、お前さんたち三姉妹に聞きたい事があるんだ。聞いておきたい事がある。正直にその話をしてくれない限りは、俺たちぁこのハナシから降りさせて貰うかもしんねぇ」
「………」
 一同が身構えたのは、そう口火を切ったアキュートの雰囲気が一変したから。弛んでいた糸が一気に張りつめられる様に、突然に彼は表情を、色を、変えた。
「なんでしょう」
 トレーネが口を開き、真剣な表情で彼を見据えると、アキュートは手にしていた酒瓶をゆっくりと机に置きながら、薄らと笑みを溢して尋ねるのだ。本題を――本命を。
「姉ちゃんたち――そこにある楽器を集めて、何をしようってんだ? お前さん等の親父さん、ファウスト・ストラトスの遺品である事や、遺品が故にお前さん等がその楽器を血眼になって探してた。そこまではわかる。そこまではわかってる。が、俺が気になってんのはその後だ。此処まで大掛かりにコントラクターを集めてまで守らせ、お前さんたちは何をしようとしてるんだ? それだけは、此処で嘘偽りなくしっかりと吐き出して貰うぜ? じゃあなきゃ、協力はしない」
 机の上に置いた酒瓶の淵。ゆっくりと指でそれを撫でながら、彼の手の動きに沿って傾いておかれていた酒瓶が回っていた。
まるで今のこの場の状況の様に安定性なく、ゆらゆらと。揺らぎ、傾き、回っている。静かになった室内は、ただその酒瓶の動く微かな音だけが響いていて、そしてそれは随分と長い時間続いた。実質的な時間はさておいても、恐らくその場の全員が、この沈黙を長時間として認識している。
暫くの沈黙は、しかしトレーネの言葉で止まった。終わった、終わりを告げた。時間が戻る。時が再び動き出す。
「何もありませんわ」
 嘘でも偽りでもないのだろう。迷いはなく、恐らくそれは、真実なのだろう。少なくともトレーネは、それ以外の言葉を持っていないかのように言い放った。恐らく今あった間は、彼の放っていた独特な雰囲気に呑まれていたから、だろう。
「何もない。ってぇと……目的はない。そう言う事か?」
「ええ、そのまま――他意なく」
「……この大掛かりな物は、ただ自分たちの大切な物を守る為だけのものだと、そう言う事なんだな?」
「そうですわ」
「………アッハッハッハッハ!」
 突然笑い出したアキュート。手を離した為に酒瓶が机の上で更に不安定となり、大きく大きく頭を振って、そしてそこから落ちそうになった瞬間に、彼はそれを勢いよく、横から叩くようにして受け止め、口に運んだ。
「良いね。下らねぇ思惑その他があれば手伝おう事に迷いがあったが、そこまで言われちゃあ気分がいい。良いぜ、乗ったよ。このハナシ」
 にやりとシニカルに笑顔を浮かべた彼を見て、一同が息をついた。凍りついた様なその場は、先程通り、どこにでもある部屋の内の一つに戻ったのだ。
「よーし! じゃあオジサンが聞きたい事も聞けたって事で、次はあたしの――」
「おい、誰がオジサンだ」
「聞いちゃおう! ねーねートレーネ!」
「聞けよ! 誰がオジサンだって?!」
「トレーネって好きな人とか居るの!?」
「……無視か。あくまで無視を決め込むって腹積もりなんだな? ああそうかい、どうせ俺はオジサンだよ……けっ!」
「アキュートよ」
 不貞腐れて頬杖を突くアキュートに、今まで静かにしていたウーマが声を掛ける。
「……なんだよ」
「それがしがなんとかしてやらんでもないが?」
「……は?」
「それがしが、何とかしてろう! と言ったのだ」
「………」
 アキュートが返事をするのを待たず、ウーマはふわりふわりと浮遊して、ラブとトレーネの間へと入り込む。

「人の話は最後まで聞きたまえっ!!」

 元気よく発光した――浮遊するウーマ。
なんと言うか、テッカテカだった。
 余りの眩しさに小さな悲鳴を上げるラブとトレーネ。部屋に居た全員が眩しさのあまり目を覆う中、ご機嫌にテッカテカしているウーマの元に忍び寄る影が一つ。
「意味もなく光るんじゃあねぇとあれほど――」
 その影は硬く拳を握りしめ、それを思い切りウーマ目掛けて放つ。
「言っただろうがっ!」
「ギョッ!?」
 テッカテカしたままに、ウーマは地面へと落下した。