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幕間:駆け抜ける人々 〜蒼空学園百鬼夜行〜

「うん?」
 宿直室への帰り道。
 廊下の奥から怒声や悲鳴が聞こえてきた。どうやら近づいてきているようで、徐々に声や足音が大きくなってきている。
「うみゃあああああっ!!」
 叫び、目の前を駆け抜けていくのはウサギの着ぐるみだ。
 宙に浮かぶ甲冑がそのあとに続く。さらにさきほど廊下で見かけたゴスロリの女の子が追い縋ろうと手を前方に伸ばしながら駆けて行く。彼女の隣にはマントの怪人風の者の姿もあった。
「な、なんですかこれ」
 クエスティーナの疑問も当然である。
 何の前触れもなく何の関連性もないものたちが目の前を駆け抜けていくのだ。
「いやあ、私にもさっぱり」
 久瀬が言葉を濁していると廊下の奥からさらにアルクラント・ジェニアス(あるくらんと・じぇにあす)シルフィア・レーン(しるふぃあ・れーん)清泉 北都(いずみ・ほくと)モーベット・ヴァイナス(もーべっと・う゛ぁいなす)と、ルーノについて行った人物たちが姿を現した。彼らはそのまま止まることなく、先ほど通り過ぎたものたちと同じ場所に向かって走り去っていく。
「セレンフィリティクンたちの姿もあったように見えましたが……」
 久瀬は言うと頭を抱えた。
 あの様子だと色々なものを壊していても不思議ではなかった。考えるだけで頭が痛くなってくるのも頷けるというものだ。
「ま、まあ今のところは何も問題は起きてない(はずだ)し帰ろうよ」
「朋美の言う通りや。ここで頭抱えとってもしかたありまへん」

 宿直室に戻ってきた彼らを迎えてくれたのはサイアスだ。
「お疲れさん。スープがいい感じになってるぞ」
 テーブルの上には湯気のたっているスープが用意されていた。
「ありがとうございます。色々助かりました」
 久瀬は言うとスープを口にした。皆も同じように飲み始める。
「疲れましたねえ」
「本当にな……」
 先ほどの喧騒が嘘のように、宿直室は静かだった。