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ランチは危険がいっぱい!?

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ランチは危険がいっぱい!?

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「なんだ!?」
 ゆさゆさと巣が揺れ、バランスを崩した一同は慌てて手近な枝などに縋り付く。
「が、ガーゴイル……!」
 気づいたのは誰だったのか。
 悲鳴に近い声が響く。
 ガーゴイルは鋭い爪を巨木の枝に掛け、ゆさゆさと揺さぶりを掛けている。
 こちらへ侵入してこようというつもりらしい。
 特に腕に覚えのある者は急ぎ前線へと踊り出、そうでない者は咄嗟に、攫われた人達を背に庇う。
 だがしかし、自由に宙を舞うガーゴイル相手に、こちらの足場は不安定。自力での飛行が出来る者は良いが、それでも枝が多く、思うような立ち回りは出来ないだろう。何とかガーゴイルの気を逸らすことは出来ないか――数人が動き出そうとした、その時。
「お出ましだねっ!」
騒ぎを聞きつけた騎沙良詩穂と、源鉄心、ティー・ティーら、外からの探索に当たっていたメンバーが、宙を舞って駆けつける。
「ガーゴイルは俺達に任せて、みんなは攫われた人達の避難を、早く!」
 鉄心が、ワイルドペガサスの手綱を取りながら声を張り上げた。その言葉に、木の中に居たメンバーは力強く頷く。
「さあ避難を、急いで!」
 四谷大助が、アルセーネを抱き上げながら声を掛ける。
「きゃっ……ちょ、ちょっと……?」
「大丈夫、オレがちゃんと雅羅の所まで連れて行くから」
 驚いた様子を見せるアルセーネに、大助はウインクを一つ。そして、軽い身のこなしを生かして、ひらりと巣から踊り出た。
 他の面々もそれに続く。
 弱い者は強い者が自然と庇い、手助けをし、迅速にカラスの巣の中は空っぽになった。
 だが、ガーゴイルは尚も枝を払い、木の内部へと侵入しようとしている。
「キミの相手はこっちだよ!」
 詩穂が渾身の力で、龍騎士の槌を振るう。
 ごおん、と重たい音を立てて、槌はガーゴイルの後頭部をはじき飛ばした。
 そこまでされては流石に黙っていられないのだろう、ガーゴイルは鋭いまなざしで詩穂の方を振り向くと、翼をはためかせて進行方向を変えた。
「よし……このまま、みんなの所から引き離そう」
「オッケー!」
 鉄心の言葉に頷くと、詩穂はスレイプニルの手綱を取ると、一気に加速させる。
 しかし、ガーゴイルはそちらに一瞥を呉れたものの、すぐに興味を失ったようで、また巨木の方へと向き直ってしまった。
「何……?」
 鉄心の顔に焦りが浮かぶ。詩穂が慌ててスレイプニルを反転させるが、距離が開いてしまった。
 鉄心は慌てて、魔銃ケルベロスに銃弾を装填すると、ガーゴイルめがけて一撃を叩き込む。ケルベロスの名が示すとおり、三つの砲身を持つ魔銃から、三発の銃弾が飛び出して行く。
 今度は翼の付け根を痛めつけられ、ガーゴイルは再びこちらを向く。
 鉄心に向かって大きく翼を羽ばたかせる。巻き起こる風が、鉄心の乗るペガサスの翼を絡め取る。
「クッ……」
 慌てて手綱を繰ってペガサスのバランスを取るが、攻撃の手が疎かになる。その間に再び、ガーゴイルは鉄心達に背を向けた。
 まるで、虫でも払うかのようなしぐさだ。
「ちょっと、あのガーゴイル変じゃない?」
 詩穂が鉄心の隣にスレイプニルを並べながら呟く。
「ええ、まるで何か、目的があるみたいですね……もしかして、カラスさんの巣とか?」
 援護の為遠巻きに見て居たティーも、愛馬レガートを鉄心の近くまで寄せる。
「とにかく、避難が終わるまでは俺達が引きつけるぞ」
「俺達も手伝おう」
 再び魔銃を構える鉄心の元に、蹂躙飛空艇にのった樹月刀真と漆髪月夜、それからアルバトロスに乗った御宮裕樹が現れる。
「心強い」
「行くよ!」
 詩穂の合図で、六人は一斉に飛び出した。六方向からの一斉攻撃を受け、ガーゴイルはいい加減、無視できないと判断したのだろう。巨木から離れ、ばさばさと翼を羽ばたかせると、油断なく六人へと目を向ける。
 まず飛び出したのは刀真だ。右手のワイヤークロー・剛神力をガーゴイルに向けて放つ。
 翼を絡め取られたガーゴイルはじたばたと藻掻く。そこへ、裕樹が巨大な拳銃サタナエルを、膝打ちの姿勢を取って放つ。時間差で放たれた二発の銃弾は、狙い違わずガーゴイルの翼を捉えた。
「皆さんの避難、完了です!」
 と、そこへ地上の様子を伺っていたティーが叫ぶ。
「よし、もう少しみんなが遠くに行くまで――」
「うおおおっ!」
 持ちこたえろ、と続けようとした鉄心の言葉を遮るように、刀真の悲鳴が響く。
 ワイヤークローで捉えていたはずのガーゴイルが突如翼を強く打ち鳴らした。引っ張られる様にしてバランスを崩した刀真は、飛空艇から放り出されそうになり、慌ててワイヤーを離す。
「行かせないよっ!」
 ガーゴイルの視線は明らかに、地上に降りた人々を狙っている。詩穂が慌てて飛び出し、進路を塞ぐように立ちふさがった。
 しかし、ガーゴイルは怯まずに爪を振り上げる。その爪に触れれば、先ほどまでの那由他のように石化してしまう。詩穂は落ち着いて、手にした盾を振りかざし、爪をいなす。
 が、その隙にガーゴイルは詩穂の横をすり抜け、地上を目指して加速する。
「このっ……!」
 詩穂が慌てて追いかけるが、追いつかない。
 そこへ背後から、月夜の鋭い声が響く。
「避けてー!」
 その言葉に詩穂は、反射的にスレイプニルの高度を下げた。すると、先ほどまで詩穂が居た空間を、月夜が放ったラスターハンドガンの一撃が通過していく。(光条兵器なので目標の指定が可能とはいえ、他人を打ち抜くのはあまり気持ちがよろしくない。)
 月夜が放った一撃は、見事にガーゴイルの翼を射止めた。バランスを崩したガーゴイルは、進路を失う。
 そこへ追いついた詩穂が渾身の力を込めて、龍騎士の槌を振り上げ、正義の鉄槌を下した。
「くらええぇぇっ!」
 すさまじい反動が詩穂の体を襲う。
 ひとたまりも無く吹き飛ばされた詩穂は地面へと落下していく。
 一方のガーゴイルは――

 詩穂渾身の一撃を受け、ぼろぼろと崩れ去って行った。