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大迷惑な冒険はいかが?

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大迷惑な冒険はいかが?

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 街。

「……いきなり迷惑行為をしている魔王軍を発見するなんてね」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)はそう言いながら標的に残酷を永劫刻みつける破壊銃こと擲弾銃バルバロスで双子が作製したと思われるモンスターを容赦なく仕留めていた。
「……そうね。早く見つけて戻らなければね」
 セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は答えながら『凍てつく炎』でモンスターを片付けた。
「……勇者が職務放棄をして魔王軍に助太刀するなんて」
 セレンフィリティは周囲を見回し、標的キスミがいない事を確認しつつ呆れる。
「厳しい更正を施さなければね。増長しないように」
 セレアナも周囲を見回しながら厳しい口調でうなずいた。
「そういうことよ。セレアナ、魔王軍が暴れている場所をしらみ潰しに捜すわよ」
 確認を終えたセレンフィリティは叫び声や妙な騒がしさを頼りに移動。居場所の見当の付け方は大雑把だが確実に合っている。
「そうね。私達のような人が他にもいるかもしれないわね」
 ふとセレアナは、行き交う住人達を見ながらセレンフィリティに言った。
「それならすぐに見つけられて心置きなくしばき倒せるわね」
 セレンフィリティはそう言って魔王軍を探し回った。
「……暴走しなきゃいいけど」
 セレアナは少しの心配を抱えながらも『殺気看破』と『神の目』で周囲を警戒しながらセレンフィリティに続いた。

「……イルミンスールの図書室にしかない画集を借りに来たはずなんだけど」
 師王 アスカ(しおう・あすか)はきょろりと騒がしい城下町を見回しながら言った。
「これはまた何と言うかファンタジーワールドに巻き込まれたわね〜、何か宮廷画家のようだし」
 アスカは自分の設定確認後、横にいるホープ・アトマイス(ほーぷ・あとまいす)の方に顔を向けた。
「何でちみっ子について行くと災難に見舞われるんだよ。家でブログ更新でもしておけば良かった」
 ホープは自分の行動を後悔していた。図書室にさえ行かなければこんな面倒な事にはなってはいなかったはず。そう思うとため息と後悔しかない。
「ここに立っていても仕方が無いから歩こう」
 アスカはそう言うなりさっさと歩いた。何をするにもまずは自分の周囲を確認する必要がある。
「……おい、待てよ」
 ホープも急いで歩き始めた。
「巻き込まれた人がたくさんいるねぇ。早く見つけて元の世界に戻らないと」
 アスカは犯人の一人であるキスミを捜し始める。早く元の世界に戻って絵の具の補充のために画材店に行かなければならないので動きに無駄が無かった。

「これはファンタジーな世界だな」
 鋼鉄 二十二号(くろがね・にじゅうにごう)が城下町を見回しながら言った。
「そうでありますな。どうやら自分達、巻き込まれたでありますね!」
 忍者の葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は、鋼鉄二十二号にうなずきながら動じる事無く状況把握を済ませた。ロズフェル兄弟に巻き込まれたのはこれが初めてではないから。
「……そうね。あの二人どれだけ痛い目に遭えば懲りるのかしら?」
 コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)は、呆れていた。すっかり巻き込まれても順応がスムーズである。
「やる事は一つであります」
 吹雪は人差し指を立てた。
 言わなくてもコルセアには分かっている。
「……お仕置きね」
 これしかない。
「そうであります。その前に少しだけ勇者を楽しむでありますよ!」
 すぐにお仕置きに行くかと思いきや吹雪は勇者を楽しもうとする。
「我はゴーレムらしく振る舞うとしよう」
 鋼鉄二十二号もこの世界に溶け込んだ。
「あの二人を見つけるのは簡単だものね。騒がしい場所に行けば一発だから」
 コルセアは吹雪の寄り道を止めなかった。見つけるのは容易い上に他にもキスミを捜している者はいるだろうと分かっているからだ。すっかり彼らに巻き込まれる事に慣れていた。
「自分に続くでありますよ!」
 吹雪はコルセアと鋼鉄二十二号に言い、勇者の権利を行使すべく近くの家へと向かった。
 ちなみに勇者の権利とは、ある民家のタンスや壺を調べ中の物を頂戴したり倒した相手の身ぐるみを剥いだりする権利である。
 コルセアと鋼鉄二十二号も吹雪について行った。

「……悪ふざけに巻き込まれるとは」
 忍者の熊楠 孝高(くまぐす・よしたか)は呆れたように城下町を眺めていた。
「ぴっきゅー、ぴきゅきゅぴ〜(まったくもー、悪戯にも困ったものなのだ〜)」
 わたげうさぎの勇者天禰 ピカ(あまね・ぴか)も孝高と同じように呆れていた。
「……我も二人と同じだよ。他人にしっかり迷惑をかけているし。双子を見つけたらお説教と少し懲らしめるのだ」
 召喚士天禰 薫(あまね・かおる)は少しため息をつきながらこれからの行動を決めた。
「ぴきゅきゅぴっきゅ、ぴきゅぴ(薫の意見に賛成なのだ、我もお説教するのだ)」
 わたげうさぎ姿のピカは、ぴょこんと飛び上がりながら言った。
「俺も協力しよう。まず、何から始めるんだ」
 孝高も薫の意見に賛成し、手始めに何をするのかを薫に聞いた。
「……悪戯好きという事は騒がしい場所にいるはずだよ。もしかしたら我のように二人を捜している者もいるはずなのだ」
 『心理学』を持つ薫は、すぐにキスミがいるだろう場所を予測し、自分達の他にも捜している者がいる事も考える。
「協力すればすぐに終わるな」
「ぴっきゅー(行くのだー)」
 孝高とピカはうなずき、先頭を歩く薫について行った。

「……魔王軍が支配している街、本当の勇者なら放っておけないはずなのに」
 相田 なぶら(あいだ・なぶら)は遠くに見える魔王城に視線を向けながら呆れたように言った。ロズフェル兄弟とは同じ学校であるため悪戯好きは知っている。
「これは勇者の立ち振る舞い一から教えないといけないようだ」
 勇者を目指しているなぶらとしては今のキスミは断じて許せない。魔王軍に協力するなどあってはならない。
「……まずは捜し出してからだ」
 気を引き締めなぶらはキスミ捜索へ向かった。

「イルミンの合同授業に来てたはずなんだけど」
 賢者となったヴァイス・アイトラー(う゛ぁいす・あいとらー)は見知らぬ世界を見回す。
「ヴァイス、あれはアゾートじゃないか」
 セリカ・エストレア(せりか・えすとれあ)は前方できょろきょろと周囲を見回しているアゾート・ワルプルギス(あぞーと・わるぷるぎす)を発見した。
「やあ、アゾートさん」
 ヴァイスは陽気に片手を上げて挨拶。
「……キミ達も巻き込まれたんだね」
 アゾートはヴァイス達に気付き、言葉をかけた。
「そうみたい。しかもオレも同じ賢者」
「俺は賢者を守る守護騎士と言ったところだ」
 ヴァイスとセリカはそれぞれ自分の役柄を明かした。
「……ところでキスミを見なかった」
 アゾートはずっと捜しているキスミについて訊ねた。キスミ捜索と共に巻き込まれたと思われる人には事情を説明して回っている。その中には説明するまでもなく犯人をしている人もいたが。未だキスミを発見出来ていない。
「いいや、見なかった。時間があれば遊んでも良かったかもだけど。今日、バイトがあって長居出来ないから手伝うぜ」
 ヴァイスは頭を振って残念な返事をするが、すぐに協力を申し出る。
「ありがとう。じゃ、魔王軍がいる所を捜しに行こう。きっとそこにいるはずだから。見つけ出してお説教をしないと」
 アゾートは協力に礼を言うも骨が折れるだろう仕事にため息。
「それなら俺が立派な勇者にしてやろう」
 セリカもキスミのしつけに乗り出す。
「……ありがとう。今回の事で二週間大人しくしてくれれば良い方かな」
 アゾートは呆れ気味に言った。今回も説教をされてすぐに起こした事だ。めげないのは良い事だが、もう少し別の事に使えと思えてならない。
「結構、懲りないらしいね。あっちこっちで悪戯をしている話は聞くよ」
 ヴァイスはそう言った。イルミンスールの合同授業を受けに行くとロズフェル兄弟の話は耳に入るので。
「……二週間ではなく、一ヵ月は大人しくさせてやるさ」
 セリカもヴァイスと同じ理由でロズフェル兄弟の事は知っている。
「とにかく見つけ出して賢者らしくしつけ……じゃなくて導くよ」
 ヴァイスはするりと本来の目的が滑るも言い直し、陽気に笑ってアゾート共にキスミ捜しに奔走した。