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4月生まれ:ルカルカ・ルー(るかるか・るー)のケース


『占いの検証か。面白そう♪』


「ダリル見て♪」
 技術科のコンピューター室にまで出向いて、そこにいるダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)に意気揚々とルカルカが見せたのは、占い依頼の貼り紙を写メに撮ってプリントアウトした紙だ。
 一読したダリルの顔には、冷笑一歩手前といったところの表情しかない。
「これをやるのか? 非科学極まりないな」
 歴然たるテンションの差に、ルカルカはぷうっと頬を膨らませる。
「いいもん、ルカはやるんだからっ」
 ラッキーアイテムとして恋人から貰ったペンダントも身に着け、なかなかの意気込みであるが、ダリルにはその意欲の根源が理解できない。
「で、自分につけるキャッチフレーズだけど……『かよわい普通の女の子』とか?」
「事実と異なる表現だな」
「ぶう。じゃあダリル付けてよ」
「……たんぽぽ頭」
「いつも通りの見たままじゃないの……って、たんぽぽ頭言わないのっ」
「なら異名どおり【最終兵器】でいいだろ。広く知られているし」
「うわーっ、気にしてるのにぃ! 絶対嫌ぁっ」
 絶叫しながらボカボカ叩いてくるルカルカを軽く躱して、なら、とダリルはあっさりと言う。
「ラッキーパーソンに聞いたらどうだ」
「そ・れ・だ☆」
 ルカルカの目は輝いた。報告書まとめてくるっ、と言葉を残してコンピューター室を飛び出していく。占いのアドバイス通り、ダラダラはしない。
「……信じてはいないが」
 静けさが戻った室内で、ダリルはルカルカが置いていった、占いの文言を記した紙を見る。
 脱槽日を完成日とするなら自分の製造は……誕生月とでも呼べるのは、1月。
「丁度良いから、コレクションを一つ増やすか」
 ひとりごちて、ダリルは腕時計のカタログを取り出し、開いた。

 ラッキーパーソンは『好きな人』。恋人は今日は来ていないが、常日頃から「敬愛」している金 鋭峰(じん・るいふぉん)は校長室で執務に勤しんでいる。
 そんな団長のもとに、取りまとめた軍務の報告書を持っていって、ルカルカは占い検証依頼のことを話した。長話で仕事の邪魔をしてはいけない、と思ったが、鋭峰もちょうど一息ついていたところで、ルカルカの話を「奇妙なことに血道を上げる連中がいるものだ」とやや呆気に取られながらも聞いた。
「それで、キャッチフレーズを、か……」
 彼女の話の要点は分かったが、普段そのような要件を頼まれたことがないだけに、急に言われても適当な言葉が浮かばない。
「しかし……新たにひねり出すまでもなく、貴官にはすでに異名が諸々あると」
 考えあぐねて苦し紛れに言うと、ルカルカの顔がズーンと暗くなった。
「……団長も、私に相応しいのは【最終兵器】とかだと……?」
「あ……い、いや」
「ルカ、兵器……?(ずどーん)」
「いや、そのような……、そうだな……貴官には『抜かずの守り刀』であってほしいと思っている」
「『抜かずの守り刀』?」
「いざという時に、己と大切なものを守る、信頼のできる力を持つ刀。しかし、刀に限らず兵器とは、一旦発動させてしまえばあとはそのまま、殺戮や破壊に使うより他ない。
 真に強い刀ならば、抜かぬうちにこそその力を発揮して、平和と身命を守るべき。強き守護者とは、そのような存在であるべきと。
 ゆえに『抜かずの守り刀であれ』と……いや、こういうのでは結局駄目、か……?」
「……、いえ」
 ――執務についている金団長から、かよわき乙女とかそのような可愛らしい愛称を望むのは、そもそも難しそうだ。
 貰ったのは可愛い言葉ではなかったが、国防や国の守護について真剣な意識を持っているルカルカの心には、少なからず響くものがあった。
「ありがとうございます、団長」

 それを今日一日の過ごし方にどう反映させるかは置いといて、彼と話をできたこと自体が嬉しかった。


「それはよかったな」
 ダリルはそう言って、校長室を辞して戻ってきて笑顔で顛末を話したルカルカの頭を撫でた。
 ルカルカは、ダリルの表情や物腰が、先程よりも幾分か柔らかくなったような気がした。何故だろうと思ったが。
「ところで、俺もこれにあやかって時計を買ったからな」
「えっ?」

 プラチナケースの緩やかな曲線と精密な内部が美しい――精密機械の緻密な機能美を湛えた、上質な高級腕時計。
 人、それを便乗と呼ぶ?


『今日もいい日だよー(ほわーん)』


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●委員Cによるチェック●
 ……。何となく、なのだが……。
 この人物は、ここまで気合を入れて占いを実践せずとも、自力で幸運をものにすることができるのではないかという気がする……。