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汝、己が正義に倒れるや? ~悪意の足跡~

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汝、己が正義に倒れるや? ~悪意の足跡~

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幕間:仮面の男

 路地裏、仮面がいくつも飾られた屋台を引く男がいた。
 彼の顔は露店に並んでいる物と同じ仮面が着けられている。
「待ってもらおうか」
 聞こえた声に仮面の人物は足を止めた。
 男が振り向くとそこにはサイアスとクエスティーナの姿があった。仮面に隠れた顔がどのような表情をしているのか、それは分からない。ただこちらを警戒しているようにサイアスには感じられた。
 仮面の男が口を開いた。
「……仮面が欲しいのかい?」
「いいえ。野盗さんにお話を――」
 野盗という単語に反応したのだろう。
 男は屋台に飾られた仮面をいくつか、サイアスたちに向かって投げた。
 仮面が勢いよく回転しながらクエスティーナの前に近づく、しかしサイアスがそれを打ち払った。
 パキッ、と面の割れる音が耳に届く。
 サイアスがクエスティーナのから仮面の男の方へと戻したとき、そこには逃げようと背を向けて駆け出す男の姿があった。
「待てっ!」
 叫ぶサイアスの視界の端、男に向かって黒い影が飛びかかるのが見えた。
「うがぁっ!?」
 低いうめき声。よほどの衝撃だったのだろう。その場で倒れて男は痙攣している。
 呼吸がしにくいのか犬のように荒げた声をもらしていた。
「とりあえず確保、と」
「少しやりすぎたな」
 現れたのは紫月と柊だ。先ほどの影はこの二人であったらしい。
「た、助かりました」
 クエスティーナの声に片手をあげて応える。
「それで……この人なにしたの?」
 柊の疑問に二人が答えた。
 なるほどね、と柊が納得したときその場に誰かが通りかかった。
 皆がそちらに視線を送る。そこには御凪の姿があった。
「おや、一足遅かったみたいですね」
 御凪は倒れた男を見て呟く。
「では御開帳」
 紫月は言うと倒れた男の仮面を外した。
 男は、脱走した野盗の一人であった。
「――では話を聞こうか」
 皆は男を連れて学園へと足を向けた。
 東の街道でこれから起こる事件のことなど知る由もなく――。