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汝、己が正義に倒れるや? ~悪意の足跡~

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汝、己が正義に倒れるや? ~悪意の足跡~

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幕間:夜刀神たちの捜査とその結果

「わしは久瀬から一通りの話とこれを受け取りに行っていた」
 そう告げる夜刀神の手には写真があった。
「野盗の顔写真でありますな」
 葛城の問いに夜刀神は頷くと続けた。
「そのあとはクエスティーナらと同様、街中に野盗どもが潜伏していると考え食料品を取り扱う店で聞き込みをしたのだが、特に不審人物の話は聞けなかった。ああ、もちろん野盗の顔写真を使って街中でも聞いてみたが見た奴はいなかったな」
「顔写真見せても駄目ってことは顔を隠しているのかもしれないな」
 サイアスは思ったことを口にした。
 なるほど、と夜刀神は頷く。
「他にはなにもなかったのですか?」
「そうだな――」
 クエスティーナの問いに夜刀神はしばし考えるように目を瞑る。
 そしてさほど間を置かずに目を開けると答えた。
「そういえば仮装している奴が多かったな」
「祭りですから」
 ホリイの言葉にそんなものかと皆が頷く。

「次はわらわだな」
 草薙は簡潔に捜査の結果を述べた。
「夜にやっている店ならばと思って聞き込みをしたが空振りであった」
「それだけか?」
「ああ」
 サイアスの問いにも簡潔に応える。
 気にかかる点は微塵もなかったに違いない。その言葉には有無を言わさない迫力があった。抜かりはなかったと言葉の端々から感じられた。
「もう少し詳しくお願いできませんか?」
 葛城の言葉に促されて草薙は続ける。
「店の前に座り込んでいた酔っ払いもおったが話にならんかった。ん、そういえば人相の悪い輩が若い女と話していたとか言っておったな。酔っ払いの戯言だと思ったが」
「それ地味に重要だろう……」
 サイアスはため息を吐いた。
「どっちにしろこれだけでは有益ではなかろう」
「そうだがな……」
 夜刀神がホリイを見やる。次はホリイの番だと言っているのだろう。
「では次はワタシですね」

 ホリイは祭りを楽しんでいる子供たちに視線を送りながら話した。
「ワタシは子供たちから話を聞いてみました。子供って純粋ですから少しでも気になったりしたことって覚えてると思ったんです」
「たしかにそうですね」
 クエスティーナが相槌を打った。
 同意してもらえて嬉しかったのだろう。ホリイの声には力が入ったように感じられた。彼女はその後の顛末を語る。
「でもあそこの露店の何々は美味しいとかばかりであまり有益な情報が得られなかったのです。お祭りだったからしかたないのかなぁ」
「子供ですからね」
 クエスティーナは苦笑する。
「他には何もなかったのか?」
 夜刀神に促されるようにホリイは続けた。
「そうですね。仮面つけてる子が多かったのでどこでもらったのと聞いたら配っているお店があったそうです。若い女の人から貰ったって子もいましたね。去年は仮面なんてなかったそうですよ」
「お面ではなくて仮面というのが気にかかるであります!」
「そうだな。野盗が顔を隠しているならそれを使っている可能性もあるか」
 葛城に続いてサイアスが情報をつなぎ合わせていく。
「ワタシは配ってるっていうのが気にかかるかな」
 コルセアも自分の考えを述べた。

「次はワタシです」
 ブリジットの言葉に皆がよろしく、と応えた。
「ワタシは潜伏先のセオリーとして一つ、灯台下暗しと言いますし彼らが捕まっていた施設の周辺、あとは学校周辺を再度調査してみました。しかし特に新しい情報は得られませんでした」
「そう簡単に見つかりはしないか」
 夜刀神の言葉にブリジットは頷く。
「脱走当日、幾人かの怪しい人影を見たという人は多かったのですが、その後の消息に関しては不明の一点張りです」
「そうであろうな」
 草薙は言うとふと思いついたように聞いた。
「仮装をしているものはおったか? 具体的には仮面を着けた者じゃが」
「いない」
 何か思いついたのだろう。サイアスも葛城とコルセアに聞く。
「二人はどうだ?」
「自分は見ていません。このあたりで見るようになりましたけど」
「ワタシは結構見かけたわ」
 なるほど、と草薙とサイアスが視線を合わせた。