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『C』 ~Crisis of the Contractors~(後編)

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『C』 ~Crisis of the Contractors~(後編)

リアクション

「……時間ですね。それでは後ろから回収してください」
 午前の予選会が終わった頃、長谷川 真琴(はせがわ・まこと)は、イコン整備士達に対し簡単なテストを出していた。
「それでは、次は実戦形式のテストに入ります」
 全員が、格納庫へと移動。全員がそれぞれ、担当するイコンへと移動する。
「このパイロットは結構突撃が好きな子よね……。なら、機動力に趣をおいてみたらどうかしら?」
 テストの中、他の整備士達と話しながら作業をすすめているのは荒井 雅香(あらい・もとか)だ。
「この部位のパーツはどうしますか?」
「そうね……。こっちのパーツはどうかしら? 装甲は薄くなっちゃうけど、機動力は上がると思うわ」
「ここは……順調みたいね」
「あ、真琴さん。楽しくやらせてもらってます」
「パイロットの能力もしっかり確認して、それに見合った調整。しっかりと乗り手の事も考えているわね」
「えぇ、真面目な子ですけど、勝負事には熱くなる子みたいで、イコンに乗ると前に出ちゃうらしいです」
「しっかりと話し合っているのね」
「ちなみに、好きなものはイチゴのショートケーキだそうです」
「……食べ物の好みまで聞いていたのね」
「荒井さーん! ちょっと見てくれませんかー?」
 苦笑する真琴。そこに雅香を呼ぶ生徒の声が。
「あ、ちょっと失礼します」
 一礼して、その生徒の元へと駆け寄る雅香。
「いつも終わった後エネルギー不足だとか、脆すぎるだとか言われて……」
「彼はそうね……」
 雅香がシャンバラ電機のノートパソコンを開く、そこには先端テクノロジーや博識でまとめたこのプログラム中に行われたイコン戦のデータやパイロットのデータが入っていた。
「パイロットは、短期決戦よりも持久戦向きなんかも、だから、機動力よりも装甲を強化して、武装もエネルギーの消費が少なく、長時間使用できるものに変えると良いかも知れないわよ」
「なるほど……ありがとうございます!」
「……しっかり、と特性を見抜いているわね」
 真琴はそのやり取りを満足そうに見ていた。

 一方、フリーダムの調整をしているケビン、アリソン・バーグ(キャロライン・エルヴィラ・ハンター(きゃろらいん・えるう゛ぃらはんたー))とベンジャミン・フランクリン(トーマス・ジェファーソン(とーます・じぇふぁーそん))の三人。
「【インディペンデンス・プロジェクト】?」
 フリーダムをいじっていたケビンが話をもちかけたアリソンの元へと降りてくる。
「えぇ、これよ」
 計画書をケビンに見せる。
「フリーダムの設計段階から見直しが可能な部分を見直し、シャンバラ側からのとある機体のデータや設計図の供与打診。デフォルト形態における一点に特化した性能の向上」
「このとある機体って?」
「それはスフィーダの事よ。あれは、どこの学校の管轄と言うわけでもないからシャンバラ側としてもデータの閲覧くらいは認める可能性があるわ」
「そうだね」
「そして、スフィーダなら機体性能的に機動力に限って言えば自衛隊のイザナギと張り合えるはず……」
「ようするにスフィーダをベースにフリーダムを作り直す……そういうことだよね?」
「えぇ。そういうことになるわね」
「私からも一つ」
 ベンジャミンが話を引き継ぐ。
「アメリカの御家芸ともいうべき、ステルス性を機体に付与する件ですが、前回の機体性能を見るに最低水準として全機に求めるべきです」
「……確かに模擬戦はズタボロだったもんね」
「それと、クルキアータ並みの性能水準と仰っていましたが、模擬戦を見るに純粋な機体性能の比較だけで言うならプラヴァーに勝てるかどうかも覚束無いと言わざるを得ません」
「あはは、痛い言葉だよ。でも、だからこそ今回のプログラムが役に立つわけだよ。このフリーダムはまだ試作段階。データは着実に集まっているわけだから、これを元に作り直せば良い。ただステルスに関しては、まだなんともいえないよ。つけるにしても最悪トミー専用機にはつけず機動力を強化するという方法も取るけど……」
「俺がなんだって?」
 そこにトーマスが、やってきた。
「あ、トミー、ちょうどフリーダムについて話しててね」
「まずはこれを見て」
 アリソンが計画書を見せる。
「【インディペンデンス・プロジェクト】……。フリーダムを作り直すねぇ……」
「モデルはスフィーダ。まだ、データを見せてもらえるか分からないから、確定ではないけれど、確実に機動力の向上には繋がるわ」
「……まぁ、強くなるっていうなら俺は特に反論はしないがな。だが、あまり変えられても困る。せっかく馴染んだ機体なんだ。ほどほどにしてくれよ?」
「えぇ、善処するわ」
「おーい、ケビン。せっかくだから休憩しようぜ。こっちもちょうどテスト終わったからよ」
「うん、今行くよ」
「あ、それとトミー」
 去っていくトーマスへ声をかけるアリソン。
「なんだ?」
「貴方の腕は超一流かもしれない。けれど、実戦経験に限って言うなら、天御柱学院や聖カテリーナアカデミーのパイロットの方に一日の長があると言わざるを得ないわ」
「……だからなんだよ?」
「このプログラムが終わったら天御柱学院……それが嫌なら聖カテリーナアカデミーへ留学する事ね。そこで揉まれてこそフリーダムは最強になる」
「……そうだな。善処しておくわ」
 ひらひらと片手を振ってトーマスはその場を後にした。