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再び、みんなで楽しく? 果実狩り!

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再び、みんなで楽しく? 果実狩り!

リアクション

「それでは、集計結果がまとまりましたので発表します」
 収穫を終え、舞花が従者にまとめてもらった結果を発表する。
 ※以下、判定内容です。

 エリザベート陣営
 エリザベート:20
 明日香:0
 ルカルカ:30
 ダリル:10
 ロノウェ:10
 レイナ:10

 収穫量/人数=13.33


 環菜陣営
 環菜:他の人の収穫量1.5倍
 陽太:11
 エリシア:12
 ノーン:12

 収穫量/人数=13.125

「勝ったですぅ!」
「エリザベートちゃん、おめでとうございます〜」
 明日香にたたえられ、エリザベートがえっへん、と胸を張る。一方の環菜は、表情こそ涼しげだが僅差での敗北に、悔しさを募らせていた。
「さあ、カンナ、唄ってもらいましょうか。
 歌合戦の時に、あなたの代わりにリカインと私が唄った歌でいいですよぅ。忘れたとは言わせませんからねぇ。
 もし忘れてても、私が一緒に歌ってやるですぅ。ありがたく思うですぅ」
「覚えてるけど……それ、罰ゲームになってないんじゃない?」
「細かい事は気にするなですぅ。別に罰ゲームをさせたいわけじゃないですからぁ」
 エリザベートの言葉に、環菜がフッ、と笑みをこぼす。
「……変わったわね、あなた」
「そうですかねぇ。私はあんまり自覚してませぇん」
 直後、舞花が検索を終え、該当する曲を流し始める。
「私も、エリザベートちゃんと一緒に歌います〜」
「じゃ、じゃあ俺も、環菜と一緒に……」
「わたしも歌うよ! おねーちゃんも一緒に!」
「仕方ないですわね」
 そこに明日香、陽太とノーン、エリシアも加わり、楽しげな歌声が響き渡る――。

「むにゃむにゃ……もう食べられないよー」
「まったく、食べ過ぎた挙句眠ってしまうなんて、手のかかる子ですわね」
 帰り道、ノーンを背負うエリシアはそう言いつつも、表情は柔らかい。
「今日は本当に楽しかったです。環菜はどうですか?」
「そうね、楽しかったわ。こんな気持ちは久し振り。
 ……また、来年も行けたらいいわね」
 星の浮かぶ空を見上げて、環菜が呟く。
「行けますよ……いいえ、俺が連れていきます」
「あら。頼もしい事、言ってくれるじゃない。……じゃあ、期待しておくわ」
 環菜が微笑む……そして、ふと真面目な表情になって、陽太へ向き直る。
「ところで陽太……舞花から集計結果を見させてもらったけど、あなた、手を抜いたわね」
「え? えーと、何のことでしょう」
 険しい視線を向けられ、陽太は目を逸らす。手を抜いたつもりはないが、懐かしい思い出に浸っているうち、手が止まっていたのは事実だった。
「あなたが後一押し果実を収穫していれば、私が勝ったはずなのよ。どう責任を取るつもりかしら?」
「え、えーと……」
 どう答えるべきか悩んだ挙句、陽太が口にしたのは。
「環菜のためなら、何でもします!
 俺は世界で一番、環菜のことを愛しています!」

「…………」
 その、ド直球ストレートな言葉を目の当たりにして、環菜は暫くの間頬を染めて立ち尽くす事しか出来なかった。
「……ある意味、これが一番の罰ゲームかもしれないわね」
「な、何か言いましたか?」
「何も言ってないわよ! ほら、さっさと帰るわよ! 明日からまた忙しくなるわよ!」
「は、はいっ」

 帰路に着く環菜一行の上空を、流れ星がきらり、と光って流れる。


『対等な関係?』
●イルミンスール地下:大聖堂

「アーデルハイト、あまり思い出したくはないが……私はお前の言うとおりにした。故に此処は私のモノにする、異論はないな?」
 黒の石を盤に打ち、坂上 来栖(さかがみ・くるす)が向かいに座るアーデルハイトに不敵な笑みを浮かべる。
「そう嫌そうな顔をするな、別にお前の部屋を寄こせと言ってる訳じゃない。この馬鹿みたいに広い世界樹の一部屋、いや、一区画を私が使うだけだ」
 挟まれた白の石を返し、手番をアーデルハイトに渡して、来栖は傍らに置かれていたグラスに口を付ける。赤い液体が流し込まれ、口元に付いた残りを舌で舐めとる様は妙に艶かしい。
「ん? これか? ぶどうジュースだよ。色から見て、てっきりマスカット系かと思ったが……搾れば私好みの赤だったわ、クク」
 空になったグラスを来栖が置けば、ジノ・クランテ(じの・くらんて)がすかざす新しい葡萄ジュースをグラスへ注ぐ。
「どうしたアーデルハイト、お前の手番だぞ? 悩んでいるのか、それとも私に負けを認めるのか?」
 伺うような視線を向ける来栖へ、それまで口を閉ざしていたアーデルハイトが耐えかねたとばかりに矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。

「……言いたいことは多々あるがの。
 何故、私とお前が大聖堂の中心でオセロを打たねばならんのじゃ!
 傍から見ればおかしい二人に見えるじゃろ!!」

 アーデルハイトの指摘はまあ、至極尤もと言えなくもない。いわゆる大聖堂(荘厳な雰囲気、絢爛豪華なステンドグラス、神秘性を内包した女神像)の正面でオセロ、はかなりミスマッチであった。
「こういう場合、せめてチェスとはならんのか!」
「それは、私がチェスのルールを知らないからだ」
「しかも葡萄ジュースってなんじゃ! ワインでもいいじゃろ!」
「見かけ幼女の私が酒を飲んでいたら、色々と問題があるだろう。ま、それはお前も同じ事だがな、クハハ」
 その他数々のツッコミに対して、来栖はあくまで余裕の態度を崩さない。その内アーデルハイトもツッコミ疲れて、やれやれと腰を下ろす。
「アーデルハイト様、紅茶のおかわりはいかがですかぁ? それともぶどうジュースはいかがですかぁ?
 本日の果実狩りで、私がとってきて作らせていただきましたぁ」
「おっと、詮索はなしだぞ? 私は『果物を使って』ジュースを作らせた、それだけだ。
 咎められる理由はないし、たとえ咎められた所で……私は、吸血鬼で、化物だ。今更な話だろう?」
「……詮索するつもりはないよ。彼女らは『使われる』ことを望んでおったからの。
 さて……まあ何だ、色々とおかしい気もするお茶会じゃが、これはこれで面白くもある」
 口元に笑みを浮かべ、アーデルハイトが盤に白の石を打つ。
「面白い、だと? また戯言を――おいまて、角を取るな、ずるいぞ」
「お前が隙を見せるのが悪い。それに角ではない『隅』じゃ、覚えておけ」
 それまでとは立場が逆転したようなやり取りがしばらく続いた後、オセロに決着が付く。最初多く石を取っていた来栖だが、結局アーデルハイトに逆転を許し敗北した。
「ふむ、私の負けか。やはりまだなまってるな……。
 次は私から訪ねるとしよう。リハビリに付き合ってくれ。そして力を取り戻した暁には……首を洗って待ってろ」
 鋭い眼光を向ける来栖、受けるアーデルハイトも一歩も動じず視線を返す。二人の視線が交錯して弾け、来栖がフッ、と息を吐いて呟く。
「そういえば、世界樹の寿命がどうとか言っていたな。……その件、少しくらいなら力を貸してやっても良いぞ。此処は私の住処だからな、気にいってる、むざむざ死なすのも惜しい。
 ……あぁ、勘違いするな? 私はお前の部下になる訳じゃない、だからといってお前の地位を狙ってる訳でもない、興味もない。ただ自分のしたいように、誰にも従わずに好きに生きるというだけだ。
 ……生きる、というのもおかしな話だな。私はとうの昔に死んでいる」
 最後の言葉は、自分を嘲るかのような雰囲気に満ちていた。
「……“死”の定義は人それぞれかもしれぬが……お前はまだ、死んでおらんだろうよ」
 去り際、アーデルハイトが放った言葉に来栖が首を振り向ける。「どういう意味だ」という言葉はしかし口をついて出てこず、ただ小さくなっていく背中を見送るのみだった。
「アーデルハイト様、もし御迷惑でなければ来栖様と仲良くしてあげて下さいねぇ」
「そうじゃな。こちらからちょっかいを出すつもりはないが、来るというなら相手をしてやろうではないか。
 我が学校の生徒であるなら、そのくらいの気概がなければな」
 言葉を残し、ジノの見送りを受けてアーデルハイトは地上へテレポートする。


 ……こうして、それぞれが大切な思い出と触れ合った、果実狩りの一日は終了した。
 彼らはまた、日常へと帰っていく。その日常は平和な日常か、もしくは波乱に満ちた日常かもしれない。

 けれど、今日過ごした日のことは、各人の胸にしっかりと刻まれている。
 そしていつの日か、今日のことを思い返してにこやかに微笑むのだ――。


『再び、みんなで楽しく? 果実狩り!』完

担当マスターより

▼担当マスター

猫宮烈

▼マスターコメント

ようじょの描写には定評のある猫宮です(ぉ
なんでしょう……ようじょを書いているとですね、こう、心が高揚するといいますか。紅葉だけに。

……(冷たい風が吹く)

……コホン!
風邪を引く前に(実は執筆中に引いてしまいましたが)さっさと後書きを始めてしまいましょう。


●今回、個別コメントで『登場は〜Pです』の案内を入れました。
 多分、合ってると思います……多分(汗 間違っていたらすみません。

●一人のNPCに複数のPCがアクションをかけられた場合、アクション内容によっては処理の関係上、必ずしも意図通りになっていないかもしれません。
 また、あるPCのアクションによって本来のアクションが変更される場合があります。その場合もしかすると不愉快な思いをされてしまったかもしれません、すみませんでした。


皆様、お楽しみいただけましたら幸いです。
それでは次のシナリオにて、お会いいたしましょう。