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第四章 正確には『増える一方の被害者』だったと今更ながら思う今日この頃

――小暮君の遺影にななな達は事件解決を誓う。
 犯行時の状況、残された物、隠された関係……どれも無関係に見えて疑わしい。
 縺れた糸の様に絡まる謎。しかしななな達は解かなくてはならない。真実へと辿りつく為に。


「というわけで、そろそろ推理始めるよー」
「ノリが軽すぎるよ! さっきそれで被害者出たし!」
「あれは自爆だと思いますけど……ところで、我々しかいませんがいいんですか?」
 ボニーが集められた部屋を見渡すが、そこに居るのはなななとアゾートとボニー、そして若干名の契約者達。
「うん、その方が都合がいいやらなんやら」
「都合がいい……推理に都合がいいって何なのかな?」
「さあ、その辺りはなななにもよく解らないんだけどね。それじゃ、最初の人からいってみよー」
「だからノリ軽すぎるって」
 なななに促されて立ち上がったのはアルクラント・ジェニアス(あるくらんと・じぇにあす)であった。
「最初は私か……教導団の小暮、と言われてもはっぴぃモール空京前でイメチェンがどうのと言っている姿しか見たことのない男だが、『ななな物語』で帽子をパクッた縁もあるんでね……仇は取ってやるさ!」
「いや帽子パクッたなら会ったことあるんじゃないの?」
「さて、私の推理だが」
「ここの人達って人の話聞かないの……?」
 無視されて落ち込むアゾートをボニーがまぁまぁと宥めるが、そんな事知ったこっちゃないようにアルクラントは話を続ける。
「既に何人かの容疑者は上がっているようだが、この場にその容疑者を集めなかったのはわけがある……この流れ、ミスリードを狙っているからだ」
「ミスリード? どういうこと?」
 なななの問いに答える様にアルクラントは一度頷くと、口を開いた。
「容疑者となる者は複数いるが、この中に犯人はいない……真犯人はこれから現れる、という事だ」
「いや容疑者とかいないけどね」
「そもそも最初から犯人もいないんですが」
「この事件は小暮の殺害という小さい事件に見られているが、それこそがミスリード……この事件こそこの後に起こる大事件のきっかけに過ぎないのだよ!」
 アゾート達のツッコミなど全く耳を貸さず、アルクラントの口調が強くなる。それは普段の柔和な口調とは異なる物であった。
「いや殺人事件って小さくないと思うんだけど、この後起こる大事件って?」
「その前に語らなくてはならないな……実はついさっき知ったのだが、小暮はとある組織の重要人物だったんだ」
「小暮君が重要人物?」
「そう、その組織と言うのは教導団の敵対勢力である組織――つまり小暮はスパイだったのだよ!」
 驚き唖然とするななな。別の意味で唖然とするアゾート達を尻目に、アルクラントの口調はヒートアップしていく。
「しかしその正体は暴かれ、殺害されてしまう……これは暗殺だ。だが小暮という重要人物を暗殺された組織が黙っているわけがない。報復が行われるに違いない……教導団と組織との戦いは免れない! シャンバラを守るための行為が新たな火種を生んでしまうとは誰が想像しただろうか!? ちなみに私はこうなる事を知っていた……知っていたのに止める事が出来なかった!」
「いやキミ小暮君をついさっき知ったって言ったよね!?」
「あの、結局それで誰が犯人だというのですか?」
 ボニーの問いにアルクラントはわずかばかり躊躇いを見せ、口を開いた。
「この事件、教導団全体の犯行だと思われるが、直接手を下したのは教導団団ちょ――
 ターン、という乾いた音と、ガラスに罅が入ったのはほぼ同時。
 アルクラントの身体がゆっくりと倒れたのは、その直後であった。
「そ、狙撃!?」
「そ、外に全身真っ黒なタイツの人が!」
 ボニーの言葉にアゾートが伏せつつ窓の外を見ると、今まさに全身を真っ黒なタイツで纏った何者かが走り去る姿が目に入る。
「あちゃー、こりゃ仕方ないね。ガイドにいない人を疑ったんだから狙撃もされるよ」
 そんな中、ただ一人冷静に倒れているアルクラントを眺めつつなななが呟く。
「何でキミそんな冷静なのさ!?」
「さて、推理もここで終わっちゃったから御退場ー」
 そういうとなななはアルクラントの遺体(多分生きてる)をまるで物の様にぽいっと放る。アルクラント氏、ダイナミック御退場によりログアウトなさいました。
「扱い酷過ぎだよ!」
「今逃げた人はなんなんですか!?」
「あー今回の事件とは無関係だから気にしない気にしない。それじゃ次行くよー」
「「少しは気にしなよ!」」

――デッドリスト入り、現在2名