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誰が為の宝

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誰が為の宝

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「巣は直接攻撃しないって言ったじゃないですか!」
「……ウィニカ、落ち着いて」
 焦りで声を荒げるウィニカを宥めるように、セレンが言った。
「女王個体が「巣」に陣取って離れないの。こいつを倒さないと、雑魚をいくら倒しても意味がないのよ」
「でも、そんなことしたら、石が……」
「狙うのは、あくまで「女王」よ。けして巣ごと吹っ飛ばすような戦い方はしないから」
「でも……っ」
「いい加減にしろよ! さっきから聞いてりゃ、石、石って……そんなに石が欲しいのかよ!」
「ダメ、聖夜っ」
 思わず声を荒げた聖夜を刹那が制したが、ウィニカはその言葉に感情を爆発させた。
「欲しいわよ!」
 悲鳴のような声だった。
「決まってるじゃない……絶対、欲しいのっ!」
「……ウィニカ、ウィニカ」
 アイシァがウィニカの腕にしがみついて呼ぶ。
「もう、ほっといてよ!」
 ウィニカの目から涙があふれた。しがみつくアィシアを振り払って、ヒステリックに叫んだ。
「落ち着いて、ね、ウィニカ」
「黙ってよ、アイシァ。あなたなんか、何もできないくせに!」
「ウィニカ!」
 ルカルカの鋭い声に、ウィニカはハッと我に返って片手で自分の口を抑えた。
 周囲がしんと静まり返る。
「……あ」
 目の前で、真っ青な顔に泣き笑いのような歪んだ表情を貼り付けているアイシァを呆然と見つめ、たまらず目を伏せる。
「ご、こめん……アイシァ」
「うん」
 目を伏せたまま、アイシァのか細い声を訊く。
「だいじょぶ、うん。頑張ろ、ね。ウィニカ」
 声は、震えている。
 ウィニカには、顔を上げてアイシァがどんな表情をしているのか、確かめる勇気はなかった。
 ただ、小さな声でもう一度言った。
「ごめんね」
「うん」
 誰かの手が、ウィニカの方を力づけるようにポンと叩く。
 それは優の手のひらだったが、ウィニカには俯いたまま、顔を上げるこちとができなかった。
 
「アイシァ?」
 そっと近づいたルカルカが、アイシァの体を支えるように手を添える。
 小柄な体がいっそう小さくなってしまったように、心許ない。
 それでもアイシァは引き攣った微笑みを浮かべて、言った。
「へいき……ウィニカ、謝ってくれたし。あたしが何もできないのはホントなのに、ウィニカ、謝ってくれたもの」
 自分の足元をに視線を落としたまま、うわ言のように繰り返した。
「うん、ぜんぜん……平気だよ」
「何もできないなんてこと、ないよ、アイシァ」
 そっと手に力を込めて、ルカルカは囁いた。
「アイシァは、ウィニカのためにここまで来たじゃない。アイシァじゃないとできない事は沢山あるわ。それを頑張ろう? ね?」
 項垂れたまま、アイシァは黙って頷いた。