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リアクション
第3競技 綱引き
校庭を横断する大縄が、まだかまだかとその出番を待つ。
本部席から見て、向かって左側に赤組、右側に白組がスタンバイ。
「やっほ、同じチームだね。
そういえばこのあいだはありがとう!
ルカのオムライスを美味しいって食べてくれて、凄く嬉しかったわ」
「おぉ、ルカルカ!
午前中から活躍していたね〜」
「うふふ、今日は全種目に出場するつもりだもん!
スキルは使わないよん」
「これからよろしくな〜」
「うん、私達いい友人になれるよねっ!」
前に立った耀助の肩を、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)はポンっと叩く。
同じ赤組ということもあり、挨拶しておきたかったのだ。
「ちょっと耀助っ、それじゃ駄目よっ!
縄はこうやって脇に挟むの。
あと、腰は低くしてっ!」
「あ、うん、分かったよ〜」
ルカルカの指導を受け、耀助達は自身のフォームを見直す。
ぐいっと、赤組全体の高さが落ちた。
「よーっし、いくぞーっ!」
匡壱のかけ声を合図に、思いきり縄を引き始める。
初撃は、着実に赤組がものにした。
「まだまだ、負けてはならぬっ!」
普段は静かなゲイルが、仲間へ向かって叫ぶ。
5分間一発勝負ゆえ、粘らなければ確実に敗けてしまうと。
(あ、あのスキルってこの競技でも有効なのかな?)
ザインハルト・アルセロウ(ざいんはると・あるせろう)がふと思ったのは、【ヒロイックアサルト】のことだ。
それは、なんとなく英雄っぽいことが起こりやすくなるようなならないような曖昧なスキル。
(ふふふ、これも私が英霊ゆえかな?)
なんてマイペースでいたザインハルトだが、かくんと後方へ引っ張られる。
どうやら、白組の反撃が始まったようだ。
(ふぅ……私も、最後までがんばるのだよ)
斯くして双方、一歩も譲らぬ攻防の末に終了が告げられる。
ハイナの判定に、喚起と哀悔の声が上がった。
「佐保と那由他は良いとして、ティファニー!」
「ン〜?」
激戦のあとには、救護班を訪れる者も少なからず存在する。
参加生徒のなかでも女生徒を中心に、治療は行われていた。
「なんとなくで怪しげな治療をするでない!」
「えぇ〜?
だってこれで大丈夫ダヨ〜?」
「ええい、この天然娘はっ!
違うわ!
ソコはこう!」
しかしティファニーの手当ては、誰が見てもイマイチで。
エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)が、呆れ半分で指示を出していた。
「ん?」
「どうしたでござる、エクス?」
ここで、エクスはあることが気になる。
どうやら、佐保はまだ気付いていないらしい。
「何か、妙に細かい怪我で来る奴が多くないか?」
「う……ん、そういえばそうね」
「先程から感じる気味の悪い視線……まさか!?」
那由他に話を振ってみても、言われて意識した程度。
だがエクスは、確信を持って背後を向いた。
「コラァー!
貴様等下心全開か!」
入口に立っていた男性陣を、エクスは牽制する。
すべての正体が、これではっきりした。
「くくく、よかろう!
そんなに妾達に治療されたいというのなら!
ほれ、こっちには個室がある故な、順番に入るが良い。
入るがよい!」
若干の躊躇いを見せる怪我人達を、エクスは別部屋へと押し込む。
そこに待っていたのは、なんとティファニーで。
「妾とティファニーの2人掛かりで、手厚く看護してやろう」
慣れぬ手が、傷口をなぞっていく。
部屋から出てきた者達は、本当に恐ろしいモノを見た顔をしていた。