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第7章 オークションの準備

 オークション開催日当日。
「ううう……なんだかとってもキンチョーする。まるで自分が競売にかけられるみたい……っ!」
「大丈夫であります! いざとなれば自分がサニー殿をお守りします」
「いやそういう事じゃなくてね…… オークションには色々商品が出品されるみたいだから、参考にしてみたらどうかしら?」
「ううう……ありがとう」
「うん、落ち着いて行こうね」
 ガチガチに緊張しながら会場に入るサニーと、それを護衛するように付き添う葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)、そして三月。
「やあ、サニー君」
「今日は宜しく頼むよ。面倒な事お願いして悪かったね」
「あ、エースさんとメシエさん! そんな、こちらこそ本当にどうもありがとうございます!」
 会場に入ったサニーに声をかけたのは、エースとメシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)
「こちらが委託した品だ。ウェザーから事務局に提出してもらえるかな」
「はい! うわぁ……素敵な絵!」
「タシガンのとある場所の風景画だよ。そうだね……ざっと数えて2、3千年前の絵画かな」
「そ、そんな貴重なものを……! ありがとうございます!」
 何度も頭を下げるサニーに布で包まれた絵画を渡すメシエ。
 サニーに変わって三月がそれを受け取った。
 メシエは、サニーにこの絵画のオークション出品の仲介を依頼したのだ。
 落札価格の2割を仲介手数料として渡すという、ウェザーにとって申し分のない依頼。
 しかもメシエの持ってきた絵画は歴史的、美術的価値も高そうな一品。
 これを出品することは、ウェザーにとって、そしてウェザーが出品した他の品にとっても箔の付く、ありがたい申し出だった。
「あ、レインにクラウドー。出品物の評判はどう?」
「それが……」
 フレンディスとベルクたちと共にネットでオークション関連のサイトを見ていた二人は、サニーの言葉に表情を曇らせた。
「悪いの!?」
「いや、柚さんやマリナーゼさんたちのおかげで、商品の評判は上々だ。けど、ブローチが……」
「どうしたの?」
 柚たちの広告、そしてネット上の解説によって、ウェザーの出品物の予想価格は想定よりかなり上昇していた。
 しかし、その中で何故かブローチだけが急激にその値段を下げていた。
「おかしいわねぇ……このままじゃ、やっぱり赤字になっちゃう!」
「どうやら、会場でブローチの悪評が流れてるみたいだ」
「なにそれ」
「保管状態が悪いとか、盗品だとか、幽霊が憑いてるとか……」
「そんな……っ」
「会場内での評判ってことは、犯人はここにいるってことだろ? 俺ちょっと会場を回ってくる!」
「あ、わ、私も!」
 クラウドと柚は走り出した。

「ん〜ねぇ、おじさまぁ。おかしいと思うでしょ〜?」
「そ、そうだねぇ」
「このウェザー出品のブローチ。これだけやけに古臭いし、いわく付きの品らしいわよ。そんなの誰も欲しがらないと思わない?」
「そうだねえそうだねえ」
「うふふ。もっと皆にも教えてあげないとね」
「……っと待ったぁ!!」
 元凶は意外に早く見つかった。
 というか、非常に近くにいた。
 走り出してすぐ、クラウドは会場入り口近くで男性客らに腕を絡ませ悪評を流しているオルベール・ルシフェリア(おるべーる・るしふぇりあ)師王 アスカ(しおう・あすか)らの姿を発見した。
「あ、やほ〜クラリん♪」
「やほ〜、じゃねえ! 一体何の真似だ?」
「悪いけど今日は私、本気出すからねぇ」
 くすりと笑うアスカに、クラウドは背筋がすうっと寒くなるのを感じた。
「どういう……事だ?」
「あの薔薇と月と雲の紋章が入ったブローチ、私、気に入っちゃったんだぁ。でも当初の設定価格だとちょっと厳しいからぁ……」
「まさか、あの評判って……」
 アスカの冷たい笑みの中に、譲らない意志を感じる。
「忠告するよ」
 青ざめるクラウドに、ホープ・アトマイス(ほーぷ・あとまいす)が声をかける。
「アスカは興味ある物を手に入れるなら何でもするよ? 逆を言えば今ここで望ましい額にしてくれるなら、今後、ウェザーの援助も惜しまないよ」
「一時の利益と継続的利益だったらどっちが得か……分かるわよね?」
 オルベールも口を添える。
「まさか出品者がクラウド達だとは思わなかったけど、何か事情があるんでしょ?」
「……冗談じゃねえ」
 不敵な笑みを浮かべるオルベール達と目を合わさないまま、クラウドは答える。
「こっちには、その一時の利益が必要なんだ。譲るわけにはいかない」
「どういう事?」
「お前……いや、君達には関係ない」
 急に改まった口調でそれだけ言うと、クラウドはアスカ達に背を向け歩き出す。
 慌ててついて来た柚に、クラウドは告げた。
「今の事、姉貴たちには言わないでおいてくれるか?」
「は、はい。でも、どうして……」
「友人だと思ってた相手がやった事を知ったら、姉貴ら、きっと悲しむからさ」
「はい、でも……」
 何か言おうとして、柚は口を噤む。
 そう言っているクラウド自身が、酷く悲しそうな表情をしていたから。