リアクション
其の五
「みなのもの、よーく戦ったでありんす! 熱き戦いっぷり、見届けたでありんす! 誰が優勝
してもおかしくない激闘でありんした。そこから一歩抜きん出たこの男を、今年の一番福に認定
するでありんす!」
「では、シオン・グラートさん、どうぞコチラへ」
房姫に促され、シオンがステージにあがった。わき起こる大歓声に、ちょっと照れながら手を
振って応える。
「おめでたいでありんすなあ! では、今年の抱負をどうぞでありんす」
マイクを手渡され、
「ええと」
と一瞬たじろいだシオンだが、言いたいことはとうに決まっているのだ。
「今年こそ、誰にも影が薄いなんて言わせない! ……絶対にだ!」
ビシリと格好よく決めるのに、歓声はさらに大きく響き渡った。ともに関門に挑んだライバル
たちも、拍手で彼を祝福した。
いつも影が薄いのが嘘のよう。煌びやかなスポットライトに照らされ、大喝采を浴びている。
――主役になった嬉しさを、しみじみと噛み締めるシオン。その肩をハイナがポンと叩く。
「いやあ、見事でありんした。影が薄いのが勝因だったでありんすなあ。いやあ、見事。見事な
影の薄さでありんすっ」
悪気なくニッコリするハイナを、房姫が慌ててたしなめた。
「ちょっ。だ、駄目です! そんなこと言ったら、今年の抱負が……!」
『今年こそ、誰にも影が薄いなんて言わせない! ……絶対にだ!』
さきほど宣言したばかりの抱負をいきなり台無しにされ、
「フフフ、フフ……」
シオンは、なんかもう、笑うしかない。
――こうして、一番福の栄光はシオン・グラートに輝いた。
その栄光が、シオンの影の薄さに打ち勝てるかどうかは、また別のお話――。
‐終劇‐
あけましておめでとうございます!
改めまして、マスターの遠山内侍と申します。
この度は、ハイナ総奉行プローデュースによる仮装バトルロワイヤルにご参加いただきまして
、まことにありがとうございました!
素敵なアクションをたくさん頂戴しまして、誰を優勝させるか、とっても悩ましいマスタリン
グ作業でした。
最終的な判断として、
『一番福になって影が薄いと言われない1年を過ごすため』
という、シオンさまの切実かつ哀愁漂う、あつーい動機が決め手となりました。
……オチについては、本当にすみませぬ。心底お詫び申し上げます(土下座)。
まだまだ拙いリアクションかと思いますが、楽しんでいただけたことを願いつつ……。
2013年も、どうぞ、よろしくお願いいたします。
みなさまのまたのご参加を、心よりお待ちしております。