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摩利支天の記憶

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摩利支天の記憶

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 6 

 竜胆は風太郎とともにぼう然としていた。

 一体いつ、どうやって盗まれたのか摩利支天の像が影も形も見当たらない。

「十兵衛!」

 竜胆は十兵衛をよんだ。

「どうした?」

 十兵衛が駆け込んでくる。

「像が……像が盗まれてしまった」

「なんだと? 取り戻しに行かねば」

 しかし、助けを求めようにもコントラクター達は乱入者との戦いで全て出払ってしまっている。十兵衛はこの部屋の前を離れるわけにはいかない。

 その時、部屋に駆けつけてくるものがあった。

 フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)ベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)レティシア・トワイニング(れてぃしあ・とわいにんぐ)である。

「竜胆さん、十兵衛さん!」

 フレンディスは息を切らせながら言った。

「しほりさんが甲賀の方に攫われたとの事で……駆けつけるのが遅くなり申し訳御座いませぬ。風太郎さん、しほりさんは必ずやお助け致しますのでお気を確かにして下さいませ」

「ああ! フレンディスさん」

 竜胆はフレンディスたちに駆けよった。

「ちょうど良かった。人の手が足りなくて困っていたところなんです」

 そして、わけを話した。

「分かりました。その像を取り戻せばいいのですね」

「はい。お願いできますか?」

「もちろん」

 フレンディスはうなずくと、さっそく像を持って逃げた者の追跡に入った。

 像を手に入れたのは牙狼の配下の忍者だった。彼らは主が像を放棄した後も執拗に奪還するチャンスをうかがっていたのである。



「でかしたじゃん」

 牙狼は配下から像を受け取ると言った。

「これで勝利は俺のものだ。さっさと帰るぞ」

 その時、

「待ってください!」

 フレンディスが叫ぶ。

 牙狼はゆっくりと振り返ってフレンディスを見た。

「なんだよ? お前は?」

 牙狼の言葉にフレンディスは答える。

「牙狼さんには忍者同士お相手願いたく」

 すると、牙狼は肩をすくめた。

「女の子と戦うのは好きじゃないんだけどなあ。子犬ちゃん」

「こ……子犬? 誰の事ですか?」

「君の事だよ。だって、その耳」

「み……耳? 耳ならあなたにもあるじゃないですか」

「俺は狼。だからかわいい女の子が大好きなの。ねえ、せっかくだから、戦いよりもドライブしない? 子犬ちゃん」

「ド……ドライブ?」

「おい、いい加減にしろよ」

 ベルクが怒った。

「やれやれ……フレイの前で言うのも何だが、忍者っつーのはマジで手段選ばねぇ上にしつこい連中だな。ま、ここまで関わった以上はしゃーねぇさ。とっととお前ら全員撤退するかくたばって貰おうか」

 その言葉に牙狼が笑う。

「ヤキモチ?」

「なんだと?」

「ま、いいや、そこまで言うなら相手してやるよ」

「ようやく本気になりましたね」

 フレンディスは刀を構え、戦闘態勢に入った。

 しかし、雑魚忍者に邪魔されて牙狼に近づく事ができない。

 忍野 ポチの助が叫んだ。

「ご主人様援護はお任せ下さい! この犬の頂点に立つべき僕と致しましてはそこのヘナチョコ狼なんかに負ける訳にはいきませんからね! 超優秀なハイテク忍犬たる僕の力を思い知るがいいのですよ?」

 そして、ポチの助は獣人姿になると『猛き霊獣』(でかい豆柴)に乗って戦闘補助に励む。【しびれ粉】で忍び達の動きを鈍らせ、【サンダークラップ】【パイロキネシス】による雷と火炎の攻撃で次々に雑魚忍者を倒していく。【破壊工作】の『ボンバーワン』での爆弾攻撃。【フォースフィールド】での防御も駆使して戦う。

 ベルクは術攻撃でフレイの後方支援サポートをしていた。『魔拘束のチョーカー』で自身の魔術ブーストをかけた上で、各種スキルにて先読み・攻防対応。装備武装では、『闇氷翼』で飛行移動兼氷術、『雷龍の杖』で雷術、『炎龍のバングル』にて炎術攻防、『虚無霊:ボロスゲイプ』に喰わせたり容赦なく雑魚忍者を一掃していく。

 中々十兵衛と手合せが出来ない状況に不満を抱き気味の戦乙女レティシアは、大剣のパワーを生かして次々に雑魚忍者を倒していく。

 その頃、フレンディスはようやく牙狼を捉えて対峙していた。

 【超感覚】と『移動忍術・縮地の術』を使っていても牙狼相手では速度的に不利なので、【行動予測】で先手を打ちながら雑魚共々『忍法・呪い影』【一騎当千】【分身の術】にて応戦していく。フレンディスの息があがって来る。しかし、疲れているのは牙狼も同じのようだった。

「なかなかやるじゃんか」

「当たり前です。こう見えてもマスニンです。さあ、像を返しなさい」

「だーめ」

 そう言うと牙狼は壁抜けの技で隣室に逃げていった。しかし、そこにはレティシアが立ちはだかっていた。レティシアは言った。

「ふむ? やはり忍びというのは面倒なものだな。いちいち遠まわしな事をせずとも直接来れば相手になるものの。全く以て理解出来ぬが……まぁ戦えればよしとしようぞ。我としてはバンビーノとかいう女に興味があったが、おそらく透乃達が戦っているのであろう。透乃達の楽しみを邪魔するのも無粋だからな。致し方ない、牙狼とやら…我は狼には興味がないがお主の相手をしようか。お主が我が興味を抱く戦いをする者だとよいのだがな。つまらぬ戦いをすれば斬って捨てるから覚悟するがよい」

 そして、レティシアは大剣をふるった。しかし、牙狼は素早く攻撃をかわしていく。レティシアは『聖封翼剣』を発動した。簡易結界能力で牙狼が足止めされる。驚く牙狼。さらにポチの助が【サイコキネシス】で牙狼の抱えた摩利支天を取り戻して逃げていった。

「おいおい、そんなん、ありかよ?」

 後を追おうとする牙狼の前にフレンディスが立ちはだかる。ベルクのリゼネレーションの力で牙狼に受けた傷も回復している。牙狼は逃げようとして天井へと飛び上がった。フレンディスはそれを空中で捉え天空落としを決めようとした。

 しかし、形勢不利を見て取った牙狼はフレンディスの攻撃をさらりとかわして逃げて行ってしまう。

「また、今度一緒に遊びにいこうね、子犬ちゃん」

 という言葉を残して。