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温泉を巡る攻防!

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温泉を巡る攻防!

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「ささっ、パッフェルも早くー」
「……待って」
「滑って転ばないように気をつけて」
「いろんな人? がいるねー」
 浴場にやってきた宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)宇都宮 義弘(うつのみや・よしひろ)桐生 円(きりゅう・まどか)パッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)の四人。
「早速混ぜてもらいましょうか」
 祥子はいそいそと近くでつかっているラミアの元へ。
「隣、失礼しますね」
「ん? あぁ、好きにすると良い」
「おー、人間だー!」
 近くにおいてあった桶の中からピクシーが顔を出した。
「やぁ、ピクシーくん。近くいいかな?」
「お話……しよ?」
「良いよー!」
 パッフェルと円も同席する。
「そうだ、おつまみとかいかが?」
 円がピクシーに持ってきたおつまみを見せる。
「あ、食べる食べる!」
「パッフェルもどうぞ〜」
「……ありがとう」
「そちらのお二人さんもどうぞ〜」
「あら、ありがとう」
「すまないな」
 円がおつまみを配っていく。
「ラミアは、お酒とか飲むかしら?」
 祥子がお酒を手に取る。
「あぁ、飲むぞ」
「なら、おつまみもあるし、一杯どうぞ」
 祥子がラミアの杯にお酒を注ぐ。
「ありがと」
 ラミアはそのお酒をぐいっと飲み干す。
「うん、うまいな」
「お口にあってよかったわ。ささっ、もう一杯どうぞ」
「そっちも飲むと良い」
「あら、ありがとう」
 お互いにお酒を注ぎ合う。
「おねーちゃん。この食べ物、もう一つもらって良い?」
「はい、どうぞ。美味しかった?」
「うん!」
 円はおつまみを一つ取り、ピクシーに持たせてあげる。
「……ほのぼの、してて、良い……気分」
 円の隣でその光景をのんびり眺めていたパッフェルが呟いた。

「すいすい〜っと」
 一方の義弘は一人、湯の中を泳ぐように移動してた。
「あら、不思議な子」
 その先には、くつろぐメデューサ。
「わぁ、髪の毛が蛇のおねーさんだー」
「あなたも蛇みたいね……。少し不思議な形をしているけれど。頭のそれは何かしら? 柄みたいだけれど?」
「僕、刀になれるから、その時もつところー」
「そういうことね」
「おねーさん。髪の毛の蛇たちってお名前ついているの?」
 目をキラキラさせながらメデューサの髪でもある蛇たちを見る。
「つけてはいないわね」
「そうなんだ……」
 ちょっとがっかりする義弘。
「でも……」
 髪の毛の蛇の中で一番長い蛇がにょろっと出てきた。
「この子は名前があって、名はニクス。この中でも一番のお気に入りよ」
「そうなんだー!」
 それを聞いて再び目をキラキラさせる義弘。
「お気に入りには名前をつけているのよ。まぁ、まだこの一匹だけだけれどね」
「そうなんだー!」

「あの子も楽しそうにしているわね……」
 祥子が義弘の様子を遠巻きに見ていた。義弘はちょうどセイレーンに話しかけているところだった。
「……お、セイレーンの歌か」
 少ししてから聞こえてきたのは、そのセイレーンの綺麗な歌声。
「……落ち、着く……声、ね」
「そうだねー……」
 その場にいた全員が少しの間セイレーンの歌声を静かに聴いていた。歌が終わると同時に、ちょっとした拍手が巻き起こった。
「流石セイレーン。良い歌声だ」
「モンスターのあなたでも、そういうのは羨ましいとか思ったりするのかしら?」
 ラミアの言葉に祥子が首を傾げる。
「もちろんだ。人並みに羨ましかったり、憧れをもったりはするぞ?」
「ピクシーくんはどう?」
「あたし? 歌ったりするの好きだから綺麗な声はいいなぁって思ったりするよー?」
「……思考は、人間に、似てる……ね?」
「なんか、親近感わくよね」
「……うん。あまり、触れ合う……機会、なかった……から。ちょっと……新鮮」
「触れ合う機会がなかったといえば、貴方達が人里近いこの温泉に来るのを見たのは初めてねー」
「んー……確かにそうだな」
 さりげなく肝心な質問を混ぜていく祥子。
「寒さや雪がひどくて奥の温泉にはいけなかったの?」
「いや、そういうことはないな。自然とここに集まった感じだったしな」
「みんな、喧嘩とかしてないけれど、仲良く温泉に入れてるの?」
「うん! 背中流しっこしたり、一緒に入ったり。仲良くやってるよー!」
「なにか、決まり……とか、ある……の?」
「決まりか……。ピクシー、何かあったか?」
 ラミアは少し考えた後、ピクシーに話を振る。
「ううん。何も聞いてないよー?」
「じゃあ、一番偉い人は誰かな?」
「一番……か。強いて言うならメデューサか?」
「そうだねー。メデューサのお姉ちゃん一番強いもんね」
「そうなの。なら、そのメデューサと交渉するのが一番なのかしらね」
「だが、自然と集まってきただけだからこちらが勝手に決め付けているっというところはあるから。何の交渉をするのか知らないが、全員がそれで動くかは分からないぞ?」
「でも、多分流れで動くよねー」
「……それもそうだな」
 ピクシーの言葉に頷くラミア。
「う〜ん……パッフェルはどう思う?」
「情報は揃ったし、後はパッフェル。貴女が判断なさい」
「……まずは、その、メデューサと……交渉、してみる。それで、ダメなら……根気よく、他のモンスターも、交渉、しよう?」
「うん、了解だよ」
「私も異論はないわ」
「……なんか難しい話をしているようだが、今はなしにしよう」
「そうそう、せっかくの温泉なんだからみんなでのんびりしようよー」
 モンスター二人に言われ、真面目に考えていた三人が笑う。
「……そうね。難しい話はここまでにしてのんびりしましょうか」
「賛成ー!」
「……うん」