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温泉を巡る攻防!

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温泉を巡る攻防!

リアクション

「いらっしゃいませ、素敵なお嬢さん。良ければこちらをどうぞ」
「あ、ありがとう……ございます」
 女湯……。浴場にやってきたドリアードにつかさず花を渡したのはエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)
「本日は、花の香りに満ちた、素敵な湯船をご用意させていただきました。御緩りしていってください」
「は、はい」
 エースに気圧されつつ、湯につかるドリアード。
「いらっしゃいませ、素敵なお嬢さん。良ければこちらをどうぞ」
 その間にも、エースは入ってきたモンスターにドリアードと同じ説明をしていた。
「……本当に素敵な香り。薔薇の花かしら?」
 湯船に浮かぶ、薔薇の花びらをすくうドリアード。
「あはは、びっくりしたよね」
 花の香りを楽しむドリアードに話しかける騎沙良 詩穂(きさら・しほ)
「はい。急だったのでびっくりしました。それに、こちらは女湯ですし」
「そうだね。でも、やましい気持ちはないって」
「えぇ。もし、何か必要なものがあれば、言ってあげて。エースが用意してくれるわよ」
 詩穂の話を引き継いだのはリリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)
「……あれは執事的な何かなのかしら?」
 ドリアードと同じように気圧されつつ湯に入ってきたセイレーン。その手には、一輪の花。
「そう思ってもらっても構わないわ」
「この、湯も彼の演出かしら?」
「えぇ。気分はどうかしら?」
「良い香りね。こういうのも良いわね」
「薔薇の花を使っているようですよ。わたくしにとってはとても嬉しい限りです」
 うっとりするドリアード。
「お嬢さん方、何かお困りの事はございませんか?」
 そこにエースが様子を見にやってくる。
「わたくしは特にありませんよ。というよりもすでに満足しています」
「それはありがとうございます。用意したかいがありますよ」
「そうだ。みんな、何か飲むかしら?」
 リリアが三人に聞く。
「ワイン、ハーブティがありますよ」
 エースが準備を始める。
「詩穂はハーブティもらっていいかな?」
「わたくしもハーブティを頂いてよろしいですか?」
「私はワインを頂こうかしら」
「じゃあ、ワインとハーブティ二人ずつお願いね」
「かしこまりました」
 エースが、ワインとハーブティを注ぎ、四人に渡す。
「どうぞ」
「ありがとー」
「ありがとうございます……。良い香り。至高です〜……」
「ドリアードってば、この上なくうっとりしているわね……」
「自分の身近なものだからかしらね。用意したほうとしては嬉しいわよね。あ、お菓子もあるわよ。せっかくだからこっちも頂いて」
「こちらです」
 リリアが指示するとエースがつかさずお菓子を差し出す。
「至れり尽くせりだねー」
「まさか、こんなところにまで来て、こんなに良い接待されるとは思わなかったわ」
「そんなお嬢さん達に質問があるのですが、よろしいですか?」
「はふ〜……。あ、なんでしょう?」
「この温泉に入る理由などはあったりするのでしょうか?」
「あ、それ、詩穂も聞きたいなぁ。やっぱり、美容に良かったりするからなのかな?」
「わたくしは特に理由はありませんよ。皆さんがこちらに入っていたので便乗して、入りに来た。という形です」
「私も同じね。寒かったから何処でも良いってのはあったのかもしれないわ。でも、人間達の輪に入れないから。モンスター達の沢山いるここに自然と決まったってところかしら」
「なるほど……」
「それでは、もし別の場所に温泉をご用意したのでそちらに移動して欲しいと言われたら移動しても良いとお考えですか?」
「私は別に構わないわよ」
「わたくしは……。その、この薔薇の香りの湯に入れるなら……」
「それはもちろん。お嬢さんに頼まれたら是非ともやらせていただきますよ」
 恥ずかしそうに聞くドリアードに笑顔で答えるエース。
「ほ、本当ですか!?」
「はい」
「まぁ、その事は置いておくとして。なぜその質問を?」
 セイレーンが至極最もな質問をしてくる。
「それはね、ここって奥の温泉地に行ったりする交通の要衝なんだって。一般人に見つかったとき争いになる可能性があるの」
「それにほら、ここは人里に近い位置にある温泉だから余計にね。せっかく温泉でのんびりしているのに、争いになったりするのは嫌でしょう?」
「だから、それを回避するためにも。そして、もっと良い温泉へ行く為に!」
「もっと良い温泉かぁ。それは確かに移動するのもやぶさかではないわね」
「美容にも効果のある温泉をご用意いたしますよ」
「美容に良くて、薔薇の香りを楽しみながらゆっくり温泉につかれる……。とても良いですねぇ〜……」
 すでにトリップしているドリアード。それを見て苦笑するセイレーン。
「そういうことなら良いのじゃないかしら? ドリアードも楽しみにしているみたいだし」
「そして、その温泉のお供にこのお風呂のアイドル『およげ! 湯太郎』を是非!」
 詩穂がつかさず取り出したのは『およげ! 湯太郎』。
「……それは?」
「『およげ! 湯太郎』。こうして……」
 湯太郎を湯に沈める。
「手を離すと……!」
 魚が泳ぐが如く湯太郎が湯の中を縦横無尽に泳ぎ回る。そして、水面をジャンプ!
「わー、面白そう♪」
 それを見て釣れたのはピクシー。
「もう一回やってー♪」
「もちろん♪ 行くよー」
 泳ぎ回る湯太郎を楽しそうに見ているピクシー。
「すごいすごい♪」
「温泉を移動すれば、もっと広々とした場所で楽しめるよ♪」
「移動するするー♪」
 ピクシーの心を見事掴んだ湯太郎。
「……まぁ、移動に反対するモンスターは居そうにないみたい」
「それは良かったわ。すぐにというわけじゃないし。もう少し楽しみましょう」
「そうね」
 リリアとセイレーンはどちらからともなくグラスを交わした。