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強襲のゆる族 ~可愛いから無害だと誰が決めた?~

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強襲のゆる族 ~可愛いから無害だと誰が決めた?~
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三章

「それー! 突撃―!」
 ゆる族の一団がスタジアムの中を走り回っている。
 暴れているというよりは子供たちが通路ではしゃいでいるという感じではあったが、それでも迷惑には違いない。
 そんな走り回るゆる族の前に、三つの影が立ちふさがった。
「な、何者だ!」
 ゆる族の一人が叫ぶと、三つの影はそれぞれポーズを取る。
「ピヨレッド!」
 一人が叫び、
「ピヨレッド!」
 もう一人が叫び、
「ぴ、ピヨレッド!」
 最後の一人が遅れて叫ぶと、
「「「ピヨれんじゃい!」」」
 三人は決めポーズをして一斉に叫んだ。
 真っ赤なピヨぐるみに身を包んでいるのはレティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)佐野 悠里(さの・ゆうり)の三人だったがどれが誰だかは見ているだけでは分からない。
「さあ、悪いゆる族たちよ観念するですぅ!」
 レティシアがもこもこの身体で一歩前に出るが、ゆる族たちの表情はどこか納得がいかないと言ったようなものだった。
「どうしたんですぅ? その不満そうな表情は」
「だって、同じ色が三人っておかしいよねー?」
「ねー?」
 ゆる族たちは顔を見合わせて不満の声を募らせる。
 それを見て、悠里が着ぐるみの状態で頭を掻いた。
「ほら、やっぱり文句言われると思ったんだよね」
「そんなことは関係ないですよぉ? 問題は心なんですからぁ」
 文句を言う、悠里にルーシェリアがのんびりした口調でなだめた。
「それで、これからどうするのレティシアさん」
「ふふふ、任せてくださいですぅ」
 レティシアは自信満々に言って、ゆる族を指差した。
「見た目は同じ色でも中身を見てもらいたいですねぇ。ほら、お近づきのしるしにこれを進呈しましょう」
 そう言って、レティシアはゆる族の一人に近づくと、ピヨぐるみを着せたあげた。
「ほら、これであなたも立派なピヨレッドですよ」
 ピヨぐるみを着せられたゆる族は俯いて一言、
「ブラックがよかった」
 そう呟いた。
「だ、だから言ったじゃないですか、ようは中身なんですよぅ」
「そんなの関係ない! 見た目がおんなじなんてイヤ!」
「イヤだー!」
 そう叫ぶと、ゆる族は着させられた着ぐるみを脱いでレティシアに襲いかかった。
「むむ、結局こうなりましたか……ならばお相手しましょう!」
 レティシアは着ぐるみを着たままゆる族と激突した。
 厚い着ぐるみにゆる族は果敢に攻撃するが、決定打は浴びせられず着ぐるみ状態のレティシアも決定打を与えられない。
「なんだかじゃれあってるみたいねぇ」
 なんとなく微笑ましい光景にルーシェリアは微笑んだ。
「楽しそうだけど、本人は真面目なんだから助けてあげようよ……」
「そうねぇ、それじゃあいきましょうか」
「うん!」
 悠里たちはレティシアに加勢するべくゆる族たちの群れに割って入った。
 が、数が増えたからと言って状況が有利になるということも決してない。
 数分後、着ぐるみを着ていたレティシアたちとゆる族はおしくらまんじゅうを繰り返して体温を上げ、暑さでぐったりと倒れてしまった。