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リアクション
■幕間:不確定要素
トマスや月摘といったシャンバラ教導団が調査に乗り出し、エンジェルを中心に集まった綾原やリースたちがニルヴァーナへの回廊施設を目指して街を散策していた頃、以前に白骨の見つかった廃墟で高笑いをしている男の姿がある。
「ククク、ヘスティアよ。我がオリュンポスのために……分かっているだろうな?」
ドクター・ハデス(どくたー・はです)の声にヘスティア・ウルカヌス(へすてぃあ・うるかぬす)は頷いて見せた。
サッと懐から小型の機械を取り出す。
電子音が鳴りヘスティアが真剣な面持ちで口を開いた。
「あ、アリスさんですか? ヘスティアです。お久しぶりです」
「ヘスティアさんお久しぶりです。今日はどうしたんですか?」
彼女はアリスが電話に出ると途端に笑顔になった。
楽しそうに話を続ける。
「……えっと、よくわかんないけどミリアさんたちといっしょにそっちに向かえばいいんだよね?」
「はい。お願いします」
ヘスティアは答えると電話を切った。
ハデスが「首尾は?」と聞くと彼女は口を開く。
「上々ですご主人様……じゃなくてハデス博士」
うむ、とハデスは大仰に頷くと高笑いをした。
「フハハハ! この極秘書類に書かれているニルヴァーナの秘密研究所とそこにいるであろう怪人に興味は尽きないが、今日はコイツをエサに我がオリュンポスの誇る機晶合体技術の実験だ」
笑い続けるハデスを遠目に見つめる人影があった。
葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)だ。彼女の口の形がωのように変わる。
「これは良い話を聞いたであります」
葛城はハデスたちにバレない位置まで近づくと懐から機晶爆弾を取り出すと設置していく。口は相変わらずωだ。とても楽しそうな様子である。
「秘密研究所にはきっとお宝が眠っているに違いないであります。絶対お宝は独り占め……いや悪の組織には渡さないであります!!」
これは正義の鉄槌であります、などと呟きながら次から次へと爆弾を仕掛けていく。
ハデスたちを囲むようにまんべんなく、だ。
彼女は一通り設置し終えると街へ向かう。
回廊施設の方へ向かう途中。巡回していたシャンバラ教導団員を呼び止めて告げた。
「一刻ほど前にあっちの方で言動の怪しい白衣を着た眼鏡が不審な行動を取っていたであります」
情報提供感謝する、と答えて駆け出した彼らを見送って葛城は満面の笑みを浮かべた。
「善良な市民の一人として悪事は見逃せないであります」
むふー、と鼻息を荒くする。
良い仕事をしたと言わんばかりの笑顔がそこにはあった。
ハデスたちのいる廃墟の方角へと街の通りを歩く二人の姿がある。
富永 佐那(とみなが・さな)とエレナ・リューリク(えれな・りゅーりく)だ。
「武道大会の時に逃したのはハデスの仲間だったようですわ」
エレナが申し訳なさそうに言った。
警備中に遭遇しながら逃げられてしまったことに責任を感じているのだろう。
その表情は硬い。
「あんな挑戦状を出してくるということはあちらも罠や伏兵を用意していると考えるべきです。私は伏兵の方を警戒して叩かせてもらいます。汚名返上といきましょう」
「はい。でしたらその間はわたくしが時間を稼ぎますわ」
二人は各々戦闘と魔術のサポートプログラムを読み込む。
身体の調子を確かめると拳を合わせた。
二人は街外れで別れるとハデスが待ち受けている廃墟へと向かった。
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