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蠱毒計画~プロジェクト・アローン~

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蠱毒計画~プロジェクト・アローン~

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  第1章 EJ社・周辺


「陽動なんてケチくせーことはいわねぇ! 正面から叩き潰すぜ!」
 シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)が、シュヴェルト13を駆りながら叫ぶ。
 彼女は煮えたぎる怒りで震えていた。
 創世学園初等部の教師。子供たちの未来を背負っているシリウスは、EJ社の非道な行いが絶対に許せない。
『降伏勧告に応じない敵は殲滅してもいいか?』
 空京たいむちゃんこと、ラクシュミ校長へ、事前にとった確認。
 たいむちゃんは『やむを得ず、無茶をしない範囲なら』と返答した。
 それを聞いたシリウスの解釈はこうだ。

『殺れる奴は、殺れ』

 ふぅっと一呼吸するシリウス。彼女は、メイン席に座るパートナーへ告げた。
「……叩き潰せ。救出対象以外は殺す気でいい」
「承った。じゃあ、殺ろうか?」
 サビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)が勇ましく微笑み、敵の戦力を分析する。
「敵の軍事兵器だけど……。イコンが出てくると思ったら、地球の既存兵器じゃん」
 呆れたようにつぶやくサビク。だが、すぐに認識を改めた。
 たしかに地球の兵器ではあるが“既存”ではない。次々に発進される、戦車や装甲車の群れ。
 見覚えはあるが、違う。
 どうやら、地球の兵器に、大幅な改良を施しているようだ。

「油断は禁物。でも、遠慮はいらない。俺たちのイコンで叩き潰してやろう!」
 柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)が、シリウスたちを激励した。
 自機の機動要塞ウィスタリアから飛び立つ、シュヴェルト13。
 虹を纏うイコンが真に輝くのは、蠱毒計画という雨が上がった後だ。
 計画の打破を目指し、桂輔は戦況を見守る。
「私たちも派手に戦うとしましょうか」
 ウィスタリアを操縦するアルマ・ライラック(あるま・らいらっく)が、機体を着陸させる。
 機体の扉が開くと同時。搭乗する契約者が一斉に降り立った。
 蟲にされた子供たちを、救うために。


「子供を買い漁った上に、改造して殺し合いだと? ――狂ってるな」
 大田川 龍一(おおたがわ・りゅういち)が吐き捨てる。
 彼の駆動させる加賀も、ウィスタリアと同じ機動要塞。
 龍一は【根回し】で用意させた、緊急の査察令状を取り出し、警告する。
「ここで違法な生体実験を行なっていると通報を受けた。施設内を調べさせて貰おうか」
 警告に対して、EJ側は武力で応じる。
 施設を囲む砲台が一斉に動き出した。さらに、アサルトライフルを構えた部隊が雪崩のごとく出動。
「こんな組織は徹底的に潰すべきですわ」
 加賀のオペレーター席で眉をひそめた天城 千歳(あまぎ・ちとせ)
 龍一は応える。
「ああ。抵抗してきたからには、心置きなく破壊できる。……主砲、重力砲弾装填、根こそぎ吹き飛ばせ!」
 睨みをきかせる砲台へ、加賀の主砲が炸裂した。

「良い感じに釣り出されてるな」
 岡島 伸宏(おかじま・のぶひろ)が、閃電の操縦席で戦況を見つめる。
「伸宏君、徹底的にやるわよ」
 そう意気込むのは、パートナーの山口 順子(やまぐち・じゅんこ)
 自分の過去を思い出させる残虐なEJ社を、順子は焼け野原にするつもりだ。
「ああ。だが、俺たち目的を忘れるな」
「わかってるわ」
「俺たちは、加賀を援護する。――加賀を注意を引き付けるためだ」
 つまり、陽動のなかの陽動を買ってでたのだ。
 彼らの狙いどおり。
 EJ社は、兵力を加賀に集めた。
「これを待っていました……。喰らいなさいっ!」
 逆サイドから放たれたのは、アルマの【大型荷電粒子砲】。

 爆風を伴う砲撃。
 自動小銃を携えた生身の部隊は、風圧だけで吹っ飛ぶ。
 城壁は崩壊。突破口は開かれた。
 内部調査へ向かう者は、壁をくぐり抜けていく。
 見届けた桂輔は、修理の準備にとりかかった。
 この戦いは長丁場になる。イコンの傷ついた翼を癒す人間が、必要だ。
「さすがに大破した機体は直せないけど。少しくらいの損傷なら、直してみせるぜ」
 腕をまくった桂輔に、ふと、ある憂慮が過る。


「……ところで。蠱毒計画の前回優勝者って、何者なんだろう?」