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リアクション
南の入口までやってきた酒杜 陽一(さかもり・よういち)と高根沢 理子(たかねざわ・りこ)。
「理子さん、この先何があるか分かりませんし、禁猟区を掛けても良いですか?」
そう言って以前彼女にプレゼントしたサード二クスのペンダントに禁猟区を掛ける陽一。
「ありがとう」
「いえ、では行きましょうか」
二人は並んで森の中へ入っていった。
だんだんと濃くなっていく霧の中進んで行くと、隣にいたはずの理子の気配が消えてしまう。
「理子さん?」
当たりを見回す陽一。
けれども、近くに理子の姿は見つからない。
「理子さん!!!」
焦る陽一。そこへ霧の向こうから理子が姿を現した。
「良かった。どこも怪我してないですよね」
「大丈夫よ。さ、早く行きましょう」
陽一を連れて奥へ行こうとする理子。
そんな彼女に陽一はどこか違和感を覚える。
「あなた、理子さんじゃないだろ。本物の理子さんをどこにやった?」
「え? な、なにを言ってるの」
「本物なら、サードニクスのペンダントをしてる。それにどんな思いを込めてるか知ってるか?」
「それは……」
「ニセモノはさっさと消えて、本物の理子さんを返せよ」
睨みつけると、ニセモノの理子は声なき声を上げ消えていった。
「俺は理子さんの影武者を務めてきたし、いつも彼女を異性として意識して見てきた。間違うなんてありえない」
霧が晴れていくと、理子が少し離れた場所に立っているのが見える。
どうやら理子の方もニセモノの陽一が現れていたようだった。
二人が再開し、双樹の樹を探しにさらに奥へ進んで行く。
「あ、あれじゃない?」
理子が指さす先には太い幹が絡み合った巨大な双樹の樹がある。
樹の下に立つ陽一と理子。
「理子さんのことも、高根沢家のことも守っていけるよう、これからも頑張っていきますね」
「ふふ、今でも十分あたしを支えててくれるじゃない」
陽一の手を取って微笑む理子。
それにドキリとして、微かに陽一は顔を赤らめる。
「(理子さんとの関係を深める機会をつくってくれたことに、感謝の気持ちを忘れないようにしよう。ありがとう……)」
陽一が雨姫様に届くよう感謝を伝えると、それに答えるように霧のような水分が二人を包む。
手には透明ながらも綺麗な水が入っている。
それはすぐに消えていく。二人に沁み込むようにして。
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