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リアクション
カフェにやってきた5人は、飲み物を飲んで一息ついていた。端から見れば、キロスが4人の女を侍らせているハーレム状態に見える。
と、近くを危険な水着を着たルカルカ・ルー(るかるか・るー)が通りかかった。
「キロス、ヴァレリアとのデートは順調……って、なんかたくさんいる!?」
ヴァレリアがルカをじっと見つめる。
「あなたは第何妃ですの?」
「え、ちょっと待って。話が読めない」
マリカとヴァレリアは、ルカに騒々しく「現在重婚デート中である」という話をした。そろそろキロスは訂正すべきである。
「――なので、第何妃なのかと……」
「私は妃じゃないわ。私にとって、キロスは『親友より強い信頼の戦友』なの」
「戦友?」
不思議そうな顔をするヴァレリア。
「彼は女の子大好きだけど、でも決してイヤらしくなんかない。裏表がなく、小気味よく、サッパリしていて、男気があって、根に持たず、実は凄く優しい。一緒にいて凄く楽しいし気持ちいい相手よ」
「ふむふむ」
ヴァレリアが真剣に話を聞いている横で、どことなくキロスがそわそわとしている。目の前で褒められて照れているのか??それとも千載一遇のハーレムモテ期を満喫しているのか。
「それに戦闘でもとても強い。彼なら背中を、命を預けられる」
「素敵な方ですのね」
うんうん、と頷くヴァレリアの前に、ルカはダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)を引っ張り出してきた。
「というわけで、比較対象にダリルを持ってきたわ」
「持ってきた、はないだろう」
ダリルは呆れたように言うが、すぐに真面目な顔つきになる。
「……で、ルカの周りを取り囲んでいるのは何だ?」
気がつくと女性陣、主にルカの周りに男たちが集まっていた。
「その水着に反応しているみたいだが」
「そんなホイホイ集まっちゃっても!!」
男たちは
「……このハーレムな状況を見て『お前そこ替われ』と思っているんだろう……?」
ダリルの甘い囁きが、男たちの欲望を増大させる。
「何としても、そこを替われ!!」
早速飛びかかってきた男Aを、ダリルは涼しい顔で当て身、気絶させる。
「何としても、彼女を奪ってやる!」
「こちらも、馬脚を現したな……」
ルカ目掛けて飛びかかってくる男Bと男Cも、眉ひとつ動かさずに対処する。
ヴァレリアとキロス、マリカとテレサ、玄秀の5人はプールサイドまで避難しに来ている。
「わあ……かっこいいですわ」
次々と男たちを倒して行くダリルの様子を見て、ヴァレリアが呟く。
「何としても、モテた……ぐはっ」
「何……ごふっ」
「何としても、キロスを救うであります!!」
「!?」
振り返ったダリルは、プールの水面にぬっと顔を突き出した葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)に気がついた。
「仮に、キロスに彼女ができたりしたら、彼は『リア充爆発しろ』というアイデンティティを失って、消えてしまうかも知れないであります! そうなる前に……」
ヒュン、と空を切り、テンプテートチェーンがキロスの足に巻き付いた。
「なっ、何しやがる!」
隙をついて勢い良く巻き取られた鎖につられて、キロスは近くのプールに引きずり込まれた。キロスは足に絡み付いたままの鎖をぐんと引いて、吹雪を引き寄せる。
「がぼぼぼ、ごぼっ!(こうして、やるっ!)」
キロスが鎖ごと吹雪をプールサイドに投げ飛ばそうとした。??瞬間、吹雪はすかさず海パンを脱がせた。
「がっ!?(はっ!?)」
海パンを手に、意気揚々とプールから出ていく吹雪。
「てめっ、卑怯だぞ!?」
プールから出られなくなったキロス。
「すべては、キロスくんのため……仕方のないことなのです」
吹雪はキロスの海パンを持って、逃げていく。
「キロスの海パンを取り返さなくちゃ!」
「もちろんだ」
ルカとダリルは顔を見合わせると、その後を追った。
「わ、わたくしも微力ながらお手伝い致しますわ!」
「それならあたしも」
「それならわたくしも」
「それなら私も」
その後、ウォーターパーク内では、女性陣が男物の海パンを追っているというシュールな絵面が見られることとなった。
そうこうするうちに、1対6の圧倒的人数差を用いて、ルカたちは吹雪を取り囲んだ。
「さあ、海パンを返しなさい!」
「なっ……まさか、その構えはカップル入刀でありますか!?」
ルカとダリルは、空中に現れた光の剣を二人で取り、振り下ろした。
「そんな……キロスに彼女ができるはずがないであります……ぐふっ」
こうしてキロスの元に、海パンが戻ったのであった。めでたしめでたし。
「大丈夫か? 痕が残るといけない……」
ヴァレリアの掠り傷を、ダリルはブレスで回復させる。そんなヴァレリアの目が、きらきらと輝き始めた。
「ああ、あなたも王子様でしたのね……」
そう言ってヴァレリアは頬を染め??
ルカに手を差し伸べた。
「……えっ、そこで私の方なの?」
「ええ。キロス様の戦友、ということは王子様側の方でしょう?」
どうやらヴァレリアの中で、初めから壮大な勘違いが起きていたようである。
「そればかりでなく、女性らしくて素敵ですわ。……その、胸があって」
「しかもそこなの!?」
これも危険な水着の影響なのだろうか。
「ということでお二人とも、わたくしと是非お友達になって下さいまし!」
「ええ、もちろんよ」
「ああ……いや、構わないが」
ヴァレリアは上機嫌になる。
「そうだ、一緒にウォータースライダーに行かない?」
「はい!」
と、ルカの誘いに乗り、キロスそっちのけで遊びに行こうとするヴァレリアだった。
「え……お二人はこの前お知り合いになったばかりなんですか? それで結婚というのは……重くありません?」
一方、無事プールから出てきたキロスは、玄秀と話をしていた。
「いや、まあ、結婚というのはヴァレリアが一方的に言っている事なんだがな」
「貴方は、もう身を固めるつもりはあるんですか? それとも、先ほどみたいにまだ女の人たちに囲まれていたいですか?」
「そ、それは……」
キロスは、今までのモテない遍歴を思い出し、口ごもる。
「こうして女の子たちと遊ぶのも悪くないとは、思うが……」
「ははは……そう言って頂けると光栄です。あ、最後に言っておくと、僕は男ですので。では」
さらりと玄秀は言って、その場を去って行った。後に残されたのは、呆然と立ち尽くすキロスである。
「そっか、キロスは女装した男性とも結婚するんだ……性別や見た目にとらわれず結婚する人を選ぶんだから、強い王様になるんだね……」
その会話を聞いていたマリカが、盛大な勘違いをしていた。
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