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架空大戦最終回 最後は勇気で!

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架空大戦最終回 最後は勇気で!

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01 ふんどしというラスボス

「敵部隊を確認しました。ふんどしの……姿が。陣営から見て敵将と思われます」
 乃木坂 みと(のぎさか・みと)は呆然としながらそう告げる。
「……ふんどし? ふんどしだと!? ふざけるな! ……ふざけるな!! あんなもののために国軍は勇者を使い、兵士を死なせ、ここまでの騒ぎを作ったというのか! 洋孝! リミッター解除! ブースター加速、ジェネレーター危険域まで回せ! 一刀両断にしてみせる!!」
 その報告を受け取った相沢 洋(あいざわ・ひろし)は憤慨しながら叫ぶと、パートナーに全力を命じる。
「あー、やっぱり怒るよねえ……。仕方ない。リミッター解除プロトコル発動! 全機能臨界点突破への移行を確認、ジェネレーター限界出力へ。ブースターの推進力、限界限度へ加速。ミサイル、バルカン、全弾発射確認。弾薬の尽きたミサイルコンテナをパージ! ディンギルシステム、最大出力! 刀身へのエネルギー供給率、限界突破!全制御システム、開放!」
 そして相沢 洋孝(あいざわ・ひろたか)覇王・マクベスのリミッターを全部解除し、すべての出力を限界を超えて叩きだす。
「敵の総帥は変態なのでしょうか? ふんどしに指揮される組織とは……どう考えても夢の話です。以上」
 エリス・フレイムハート(えりす・ふれいむはーと)がそうつぶやく中、マクベスはひとつの剣、ひとつの弾丸となってふんどしに突入していく。
  そしてそんな光景を見ながらツッコミを入れている科学者が一人。
 三船 甲斐(みふね・かい)だった。
「うん、まぁ、ここが夢の世界だってのはいい。
 それはいいんだがアリスよ、ラスボスの姿はもうちょいなんとかならんかったんか?
 なんでよりにもよってふんどしなんだよ!
 ラストバトルなのに緊張感が息してねぇじゃないか!
 シリアス展開のアクションかけた連中がシュールになってるじゃねぇか!どうしてくれる!
 つーか、これ下手したら放送事故おきるんじゃないか?
 やだぞ、コリマのおっさんのごりっぱ様がポロリなんて俺様は見たくねーぜ!
 だー、話を聞け!ダメだこいつら早くなんとかしねぇと!!!」
 そう。ふんどしがラスボスなせいでシリアスさんが息をしていないし大変なところがポロリしそうで非常に逆の意味で緊張している状態だったのだ。
 そして、そんな中
「超・電・磁! ねーーーーーっと!!!」
 往年のロボットアニメの必殺技のノリで叫んだのは大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)。泰輔はすでに夢の中と認識して割合好き勝手に遊ぼうと決めていた。
「どうせ夢のなかなんやから多少無茶しても死なへんやろ?」
 泰輔はふんどしに向かってそう告げると、超電磁ネットで捕縛する。
 だが、そこに大量の機械の昆虫や幻想生物を模した魔獣が突如として出現し、泰輔の登場するバンデリジェーロの前に立ちふさがる。
「邪魔だ! どけえええええ!!」
 洋はそう叫びながら敵の群れに突入し、海を割るモーゼのごとく、敵の群れを切り裂いていく。
「やるなあ! こっちも負けてられん。ハイパーアクティブモードや!」
 泰輔が嬉しそうにそう言うと、パンデリジェーロがキラキラと輝き出す。
「……」
 泰輔を独占できて嬉しいらしい讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)が泰輔にしかわからない程度にハイテンションになりながら能力を発動する。
 即ち、ワープ。
「所詮は夢。いずれ覚めるもの。思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを……くすくすくす」
 敵中に出現したパンデリジェーロはタブルビームサーベルを振り回しつつ敵陣を突破すると、再びワープでふんどしの側に出現しエアブラスターを撃ちこむ。「夢の中なら……急旋回のGだって!!」
 トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)はそう叫びながら突っ込んで、ふんどしが打ち出すミサイルやビームを略垂直に上昇して回避する。重力は耐えるどころか存在しない勢いだった。
 乗機ザンダーレーヴェを操り、接近するミサイルを機体を5度だけ横にしてやり過ごし、そのまま操縦桿をひいて急上昇する。
 追尾してくるミサイルを人型に変形することで急激に高度を落としやり過ごすと、そのまま銃弾やミサイルをお見舞いする。
 そして即座に再び変形してジェットを吹かし、高度と速度を回復させる。
 そんなふうに、納豆のようにジェットの軌跡で空を埋めるミサイルを、ゲームかアニメのような非常識な動きで回避しながら、ふんどしや機械の昆虫たちに攻撃を加えていく。
 「夢の主人(あるじ)よ、声が聞こえて!? こんなばからしい夢、いいかげんに切り上げたがいいわよ。私も気が狂いそうだけど、あなただっていい加減に、こんな出鱈目な夢、耐えきれなくなってきてるでしょう!? 見るなら、もうすこしマシなラスボスの夢を見なさい!!」
 ミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)が叫ぶと、それに答えるかのように声が響く。
《んー、たしかに?》
 そして、その声とともにふんどしがふんどしをはいたジャバウォックに変化していく。
「なんだそりゃ!!!」
 トマスは思わず突っ込むと、
「こんなバカげた世界に、付き合ってられない、現実に戻る!」
 そういってジャバウォックに特攻を仕掛ける。
 そしてトマスのザンダーレーヴェはジャバウォックのアギトに噛み砕かれる。
 国軍のモニタに浮かぶトマスのアイコンには【大破】のスタンプが押されたのだった。
 そして、そんな中で覚めるようで冷めない悪夢を見ている少女が一人。
 その娘の名は高崎 朋美(たかさき・ともみ)
 朋美はここが夢の世界かなとは考えつつも、これが万が一現実だったらと考える強すぎる理性のせいで、逆にこの夢の世界に取り込まれ、抜け出せなくなっていたのだ。
 それというのも、彼女の祖母とその分霊であるところの高崎 トメ(たかさき・とめ)高崎 シメ(たかさき・しめ)が、何故か宙に浮かび、リリーが投影したコリマとともに、わけの分からないリズムとともに踊り出したからだった。
 ズンドコドコドコとリズムが刻まれる中、盆踊り、どじょうすくい、クラシックバレエ、ワルツ、ロンド、ジャズダンス、ブレイクダンス、テクノ、メヌエット、ジルバ、チャールストン……あらゆるジャンルのダンスが無規則かつ不節操に取り込まれて、リズムも変わるしテンポも変わる。転調も激しく、まるで勘違いしている出来の悪いプログレ音楽を聞いているかのような不安感に、朋美は陥れられる。
「もー! おばあちゃんたちいい加減にしてよ!!!」
 朋美は叫ぶが祖母たちは取り合わない。
「え? なに? 夢? そんなの気のせい木の精どらいあ〜ど♪」
 シメがそんなお気楽なことを言うものだから、朋美はさらにイラッと来る。
 大事な、大好きなおばあちゃんが、朋美の邪魔をする。
 それが朋美にとっては一番のストレスであり不条理だった。
 朋美は当初ウルスラーディ・シマック(うるすらーでぃ・しまっく)とともにふんどしいっちょうのコリマにまともな服を着せるべく努力していたが、ジャバウォックと姿を変えた現在、そんなことはもはやどうでも良かった。
 とはいえ、この悪夢の国のアリスのようなこの世界を崩壊させようとする魔獣ジャバウォックを倒さないことには、万が一現実かもしれないこの世界が滅んでしまうことにもなりかねない。
 そのためにジャバウォックを攻撃しようとする朋美の意思を挫き、時にはジャバウォックの側に来て攻撃を阻害する祖母たちのせいで、朋美は軽く発狂しかけようとしていた。
「ふざけないでよおおおおおおおおおお」
 朋美が絶叫する中、逆にシマックはおかしな程に冷静だった。
 そして冷静に、ジャバウォックに姿を変えたふんどしに対してイコンを使って服を着せようと試みている。
「シマック、なにやってるの!?」
「なにって、服を着せようとしなきゃダメなんだろ?」
 熱くなる朋美に対して、シマックは一切動じずに冷静にそう指摘する。
「あー! そうだけど、そうだけど!!! って、そもそもなんで服を着せなきゃいけないのよ!!!」
「知らん。着せなきゃいけないからだろう?」
 シマックは冷静だが、逆にその冷静さが異様さを醸し出していた。
 何しろ当初の目的はすでに消失しているのに、そのことに気が付かないでシマックは冷静に当初の目的をそのまま遂行しようとしているのだ。これほど異様なことはそうそう無いだろう。
「もう、おばあちゃんの馬鹿ああああああああああああああ」
 イライラでストレスが溜まりきった朋美は、ついに祖母に悪態をつく。
「もう、しらない。おばあちゃんなんかどっか行っちゃえばいいんだ!!」
 そして、ついハンドガンを発射してしまう。
「だめええええええええええええええ!」
 そしてそれに気づいた朋美が大きな声で叫ぶと、祖母たちに向かっていたハンドガンは急激に軌道を変えてコリマを貫いた。
 銃弾に貫かれたコリマは描写することすら悍ましい奇っ怪な叫び声をあげると、その断末魔を最後に粒子状に変化して消失する。
「やっぱり夢だ! こんな世界嫌だ! お家帰るううううううううううううううううう」
 そして、朋美がこの世界を否定する勢いで絶叫する。
《しょうがないにゃあ……お帰りはあちらですよー》
 そんな声とともに、朋美の意識は消えたのだった――
「……そげぶ」
 意識が戻ると、そこは学校の机の上。
 はっと朋美が顔をあげると、トメとシメが心配そうに朋美をのぞき込んでいた。
「……よかった。帰ってこれた……」
「おかえり、朋美」
「おかえり」
 そして、祖母たちが朋美を迎え入れてくれた。
 こうして朋美は夢から現実に帰還したのである。
「シマックは?」
「ご飯食べに行きましたぇ?」
 祖母のご飯という言葉を聞いて、朋美はお腹が空いていたことを思い出した。
「おばあちゃんのちらし寿司食べたい……」
 なんか夢のなかでちらし寿司をおばああちゃんが作っていた気がしたのだ。
「よろしおす」
 祖母にそう言って甘えると、祖母は二つ返事で作ることを承諾した。
「おばあちゃん、大好き!」
 そう言って笑顔を見せる朋美に、トメは苦笑しながら、
「ほんにもう、しかたありまへんなあ……」
 と言って朋美の頭を撫でたのだった……