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平行世界からの贈り物

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平行世界からの贈り物
平行世界からの贈り物 平行世界からの贈り物

リアクション

「……あ、始まった。どんな世界だろ」
 招待を受けて上映会に参加した騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は平行世界がどのようなものか流れる映像に目を向けた。

 ■■■

 どこかの学校、掃除の時間。

「……ここの窓は終わったから次はあっちの窓を」
 廊下側から教室の窓を拭いていた掃除当番の詩穂は一カ所終了し、次の窓へと移動した。
「よし!」
 移動を終えた詩穂は、早速窓拭きに取り掛かろうとした時、はたと
「アイシャちゃん」
 教室側から窓拭きをする同じく掃除当番のアイシャと目が合った。
「あ、詩穂」
 詩穂と目が合ったアイシャは思わず手を止めてにっこり。
「窓ガラス越しでも綺麗だね。もっとアイシャちゃんの瞳が見たいからがんばって綺麗に拭くね☆」
 自分だけに向けられた笑顔が嬉しくて窓を拭く手にも力が入る詩穂。
「……」
 アイシャはじっと手を止めて窓拭きをする詩穂を眺めるばかり。
「アイシャちゃん? そっち終わったの?」
 ふとアイシャが手を止め、自分を見ている事に気付いた詩穂は不思議そうに訊ねた。
「……いいえ」
 アイシャはぷるりと左右に頭を振り静かに答えた。
「こっちが終わったらすぐに手伝うね!」
「……詩穂、窓ガラス越しでいいの?」
 笑顔で窓拭きをする詩穂にアイシャはほんの少しだけ不満そうな顔で訊ねる。こちらのアイシャは口調も違うらしい。
「……?」
 質問の意図が分からぬ詩穂は手を止め、小首を傾げた。
 するとアイシャは、窓拭きをやめて廊下側にいる詩穂の所にやって来た。
 そして、
「詩穂があんな事言うからちょこっとだけ怒りに来た」
 そう言ってアイシャは詩穂を背後からぎゅっとして可愛らしく口を尖らせた。
「……怒ってるの? もちろん、窓越しじゃないアイシャちゃんの方がいいよ?」
 大好きな人を怒らせるような発言をしたつもりのない詩穂は少しだけ戸惑うも先ほどのアイシャの質問に答えた。
「詩穂、嘘つき」
 まだ不満のアイシャは口を尖らせたまま。
「えぇ、嘘なんかついてないよ?」
 まさかの嘘つき呼ばわりに詩穂は困惑。
「だって、伊達眼鏡してるもの。せっかく、窓ガラスの向こうから来たのに、それじゃ意味が無いんだもの」
 アイシャはそう言うなり抱き付いたまま詩穂から伊達眼鏡を奪った。
「あっ、アイシャちゃん、返してよ!」
 詩穂は伊達眼鏡を取り返そうとするが、アイシャは軽やかに身長差を利用して取り返されるのを防御。
「伊達眼鏡越しもダーメ、没収! これは私が掛けるの。いつも詩穂が見ている視点で詩穂の顔が見たいから」
 取り返そうと腕を思いっきり伸ばしたりジャンプしたりする詩穂の相手をした後、アイシャは詩穂の伊達眼鏡を掛けた。
 そして、
「詩穂からはこういう風に見えていたのね」
 周囲の景色を伊達眼鏡越しに確認し、最後は振り回され口を尖らせる詩穂に行き着いた。
「もう、アイシャちゃんったら」
 両腕を組み、口を尖らせる。本当はそれほど怒ってはいないのだが。
「似合う?」
 笑顔で眼鏡な自分についての感想を求めるアイシャ。
「……可愛い」
 口を尖らせる表情をゆるめ、素直な感想をぽろり。
「ありがとう。眼鏡の無い詩穂も素敵よ」
 詩穂に褒められて嬉しくなったアイシャはまた詩穂を抱き締めた。
「……アイシャちゃん、こんなところ見られちゃったら、噂になっちゃうよぉ」
 頬を染める詩穂は背後の窓をちらり。今は誰もいないが通り掛かったら一発で噂になる。心のどこかではそれもいいと思っていたりと複雑。
「大丈夫よ」
 積極的なアイシャは詩穂の訴えなど聞き入れず、ぎゅむっとしたままだった。

 ■■■

 鑑賞後。
「……あんなアイシャちゃんを見るなんて初めて……でも仲良しで良かった」
 現実とは違い積極的にアイシャが自分をぎゅっとする姿を見て詩穂は嬉しさとちょっぴりの恥ずかしさで顔が赤かった。

「どのような映像か楽しみですね。映像も上映後、希望者には配布するそうですし」
 仕事で忙しい御神楽 陽太(みかぐら・ようた)御神楽 環菜(みかぐら・かんな)に依頼され御神楽 舞花(みかぐら・まいか)が上映会に来ていた。
「それより本当に平行世界の映像なのか、どうやってこの世界とコンタクトを取ったのか気になりますね」
 舞花は『エセンシャルリーディング』で思索を巡らしながら映像全編を鑑賞するつもりだ。

 ■■■

 イルミンスールの町。

「打ち合わせの予定時間よりも早く着きましたね。先にお昼をとっておきますか?」
「そうね。舞花はどう?」
「私も賛成です」
 鉄道関連の打ち合わせのために御神楽夫妻と舞花はこの町に来ていた。
 打ち合わせ予定時間よりも随分早く到着したため三人は近くの食堂で早めの昼食をとる事にした。

 食堂。

「ヴァイシャリーからザンスカール間に路線を開通させる打ち合わせなんだけど、エリザベート達も出席するのよね?」
 環菜が食事をしながら今日の打ち合わせの確認を始めた。ちなみに現実と違いエリザベートと陽太にはいがみ合った過去が無いためそれなりに良好な関係だ。
「そうですね。魔法系で何かしたいそうです。成功させるには互いに潤ってこそですから。舞花もここまで同行してくれてありがとうございます」
 環菜の相手をした後、陽太は何かと自分達を手伝ってくれる舞花に改めて感謝を示した。こちらの舞花は現実でもしていた陽太達の事業の手伝いの度合いが高い。
「いえ、少しでも早く陽太様と環菜様の夢が叶えば私も嬉しいですから」
 舞花は食事の手を止め、笑みを浮かべた。
「ここを通る鉄道の方は大丈夫よね。ここは魔法が多いから。交渉の方は上手く行ったのよね?」
 環菜は魔法関連が集まる地特有の何かが起きるのではと少々危惧し、ある交渉の案配を舞花に訊ねた。
「はい。技術者に加え、腕の良い魔術師にも作製に加わる事を交渉したところ上手く行きましたので」
 舞花は出発するまでしていた交渉の結果を改めて話した。
「……助かるわ。開通した際の利潤を算出した書類も忘れずにあるわね。他の書類や設計図も大丈夫ね」
 環菜は念入りに本日の交渉に必要な物について確認を入れる。
「心配ありませんよ。不足はありませんから」
 陽太は妻を安心させようと笑顔を浮かべながら答えた。
「そうね、二人共頼りになるというのは分かっているけど、一つでもミスをしたら台無しになってしまう気がして、ついね」
 陽太に気持ちを見抜かれた環菜は軽く苦笑いをしてから息を吐いた。
「必ず交渉は上手く行きますよ。上手く行ったら……」
 陽太が環菜を元気付けようとある提案をしようとするも
「何か美味しい物を作ってちょうだい。陽太の作る物は何でも美味しいから」
 察した環菜が先回りをしておねだり。
「分かりました」
 陽太はにっこりと引き受けた。
「……」
 舞花は仲の良い夫妻を嬉しそうに邪魔をしないよう静かに眺めていた。
 この後、昼食を終わらせた御神楽夫妻と舞花は打ち合わせ場所に赴き、エリザベート達とヴァイシャリー側の担当者を交えて交渉を始めた。
 そして、交渉は上手く行き、この日の夕食は環菜のリクエストで陽太が腕を振るい豪華であった。

 ■■■

 鑑賞後。
「陽太様と環菜様は殆ど変わりませんね。平行世界の『私』もこの時代に来ているのが興味深いですね。後は……」
 舞花は映像に満足した後、真剣な表情に様変わりし、撮影者についての情報収集モードに変化。
 ちなみに上映終了後、貰った映像データを籠手型HC弐式で本日の報告メールと一緒に送った所、陽太達から驚きと感心に満ちた返信メールが届いたという。