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序章
古きより封印されていた七つの大罪が解放され、逃げてしまったため、手伝い等に生徒達が駆り出され慌ただしいイルミンスール魔法学校。そんな中、ゆっくりと目的地を目指して学校内を歩く二人の姿。
目的の部屋へとたどり着き、ドアをノックする。
「……誰ですぅ〜?」
「ドクター・ハーサン(どくたー・はーさん)だ。少し聞きたいことがあってお伺いしたのだが」
「入るですぅ〜」
「失礼するよ」
ドアを開けると中に居たのはイスに座るエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)。
「……二人とは聞いてないですぅ」
「失礼。私はアリス・バックフィート(ありす・ばっくふぃーと)です」
「そうですかぁ〜。それで聞きたいことってなんです? これでも忙しいから手短に話すですぅ」
作業をしつつ、大して興味はないとでも言いたげにさっさと話を終わらせようとするエリザベート。
「その忙しいというのは解放された七つの大罪の事であろう?」
ハーサンの言葉を聞き、エリザベートが二人を睨む。
「分かっているのならこんなところで油を売ってないで、さっさと手伝いに行ったらどうですぅ?」
「その前にいくつか気になる事があったからこうして赴いた次第さ」
「……なら要件を早く言うですぅ」
「解き放ってしまった七つの大罪。これを回収させることは特に問題はない。だが、それを手中に収め悪用しようとする輩が現れるのではないかということだ。これについてどう思っている?」
「たとえ、そんな輩が出たとして使役出来ると思っているのですぅ?」
質問に対し、すでに答えは出ていたのか即答するエリザベート。
「まぁ、簡単に出来ることではないだろうな」
「ならそれは愚問というものですぅ。そんなことのためだけで来たのならさっさと出て行くですぅ」
「聞き方を変えようか。使役するのではなく、扇動して手駒にするとしたら……どうだろうか?」
その質問に興味を示したようで作業の手を止め、ハーサンに向き直るエリザベート。
「それはなかなか面白い発想ですぅ」
「傲慢や怠惰はともかく、嫉妬や暴食などはやりようによっては動かすことが可能なのではないだろうか?」
「その矛先を自分の目的対象へと向ける。確かに使役せずともやれる方法ではあるですぅ。でも、そううまくいくかは分からないですよ? 最悪自分の身が滅ぼされるだけかも知れないですぅ」
「まぁ、そうだろう。だが、いないという可能性はない」
「可能性としてはあると思うですぅ。でも、そんなにリスクのあることをおいそれとやる人物がいると思うです? よほどの事がなければやらないと思うです。それならもっと確実性のある方法を取るべきですぅ」
「……ふむ。なるほど。それは一理あるな」
「お話はそれだけですぅ?」
「あ、私の方からも良いですか?」
今まで黙って話を聞いていたアリスが小さく手をあげた。
「なんですぅ?」
「なんでも、憤怒の化身が扇動して集めた蛮族達は丸太を常に常備し、スタイリッシュに戦うという蛮族という話だけれどこれはどうなのでしょう?」
この質問にはさすがのエリザベートも訳が分からないという表情をしている。
「……そんなものは知らないですぅ。仮にいたとしてもやることに変わりはないです。邪魔をするなら倒してでも憤怒の化身を回収するですぅ」
「もう一つ。契約者の中に約一名、いるだけで物事が厄介な方へと進んでいく超不幸体質の人が現地に行っているという話ですが?」
「雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)のことですぅ? なんでも傲慢側の勢力が古代兵器を復旧しているとかで、その兵器の破壊で行っているそうですぅ」
「なるほど……」
「それだけですぅ? 用事が終わったのならさっそく現地に赴き回収の手伝いをしてくるですぅ」
「うむ。では失礼するよ」
一礼して部屋を出ていく二人。
「ドクター。どうしますか?」
ある程度歩いてからアリスが口を開いた。
「ふむ……まぁ、聞くことは聞けた。必要な事だけ連絡して、後は他の皆に任せるとしよう。今更俺達が行ったところでどうこうなるものでもあるまい」
「了解です」
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