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平行世界の人々と過ごす一日

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平行世界の人々と過ごす一日
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リアクション

 喫茶店、店内。

「まずは元に戻る事が出来てよかった」
 陽一はまずはとここにいる皆を代表して言う。
「ありがとう」
 ロズは礼を述べるだけだった。
「では、早速ですが、本題に入ってもよろしいでしょうか」
 リーブラが本題に入ろうとロズの心の準備が出来ているか訊ねた。
「構わない」
 覚悟をしていたロズはこくりとうなずいた。
「いきなりで悪いが、ロズ、お前がしている腕輪を見せてくれ。外さなくてもいい、ちょっと裏側を見たいんだ」
 シリウスは同化現象事件の最後に見たロズの銀腕輪を思い出していた。それが答え合わせに必要だと。
「この腕輪か」
 ロズはもそもそと両腕にはめている銀腕輪を見せた。
「僕達、その腕輪にとても見覚えがあるんだよ。それがきっと僕らの知り合いの物じゃないかとね」
 北都の脳裏にも自分が知る銀腕輪の持ち主が思い浮かんでいた。

 その様子を眺めるフレンディス達。
「……(やっぱり、あいつらの腕輪にそっくりだな。とすると……)」
 ベルクは静かにロズと皆のやり取りを見守っていた。大人人数のためフレンディス達の座席は隣の別席である。
「えぇと……? マスターはロズさんの事を何かお気づきのようですが……私は一体何が何やらです」
 フレンディスは小首を傾げるばかり。これまで散々騒ぎに関わって来たというのに天然のためかロズの正体や真相に本気で察していない模様。
「……フレンディスさん、良かったらオレが説明するよ。オレが理解した範囲でよければだけど」
 保護者であるフレンディスよりも頭の良いジブリールはすでに察しておりベルクの代理として説明係を買って出た。面倒臭がる様子は無くむしろ家族団らん気分で楽しそうであった。
「ジブリールさん、何か知っているのですか?」
 フレンディスは素直に驚いていた。
「……フレンディス」
 ベルクはフレンディスの様子を見るなりただ溜息しか出なかった。
「むむ」
 ポチの助はむっとした様子で対抗心を向けるジブリールをにらんでいた。
「……という事なんだ」
 ジブリールはロズの正体の可能性など詳細を話した。
 しかし、
「……つまり、大変だという事ですね」
 フレンディスは疑問符を顔に浮かべたまま。内容はともかく大変だという事は理解した模様。
「……フレンディスさんの言う通りだよ」
 ジブリールはそう言うだけでフレンディスがどこまで理解したかは追求しなかった。そもそもまだ話し合いでは結論が出ていなかったので。

 再び。
「……」
 ロズは右腕から銀腕輪を外し、テーブルに置いた。
 シリウスはその銀腕輪を手に取り、
「……(オレの予想通り、ロズフェル兄弟の腕輪なら、見分けのための名が入っているはずだ)」
 そろりと内側の確認を始める。
「……見た目は間違い無くあの腕輪だね」
 北都はシリウスの行動を静かに見守っていた。自分の推測を確認するために。
「シリウス、どうですの?」
「あぁ、刻まれている……名前が、ヒスミ・ロズフェルと」
 リーブラの確認する声にシリウスは推測が確定した事を告げた。
「……やっぱりか」
 陽一は覗き込み、刻まれてる名前に納得した。何もかも予想通りだと。
「それでそっちの腕輪の内側にはキスミ・ロズフェルとあるのかな?」
 北都は残る左の腕輪を指し示した。
「……」
 ロズはそろりと左にはまっている腕輪を外し、北都に差し出した。
 受け取り内側を見ると
「……あったよ」
 北都は皆の予想が的中した事を告げた。
 それを受け、
「確かお前を製作したのは、兄の方だと言ってたな。という事は、ヒスミか?」
 ベルクが改めて製作者の名を問うた。
「……」
 ロズは返された銀腕輪を静かに付けるだけで答えない。表情は隠れて見えないが、打ち明けるのを躊躇っている模様。
 その事を読み取った北都は
「大丈夫、ここまでキミが話した事、これから話す事はあの二人には話さないから」
 内密にする事を約束した。他の皆も同意見らしく異論は出なかった。
「……何もかもその通り」
 北都の言葉とこの場にいる皆の事を信じ、ロズはゆっくりと口を開いた。
 ここで
「……ロズさんはヒスミさんが作ったんですね。凄いです!」
 皆の追求とロズの告白によりさすがのフレンディスも理解し声を上げた。
 フレンディスの発言を受け、
「本当にそうですわ。事故のことは本当に残念ですけれど……。シリウスがいつも言っている通り、あの二人にはあなたを作るほどの素晴らしい才能があったってことですもの。喜ばしく思いますわ」
 リーブラが微笑みながら言った。
「やっぱり、噂の双子は凄いんだな。ちょっと興味はあるかな。面白そうだし」
 ジブリールも同年代の友達が欲しいのか発言に加わった。
「また話を戻すが、つまりお前に与えられるべき本当の名はキスミだったという事か?」
 同化現象騒ぎでのやり取りを振り返りベルクが少々脱線した話を本筋に戻した。
「……おそらくそうだったと思う。前にも話した通り、もう確認は出来ないが」
 ロズは静かに答えた。
「そうか。となればお前が名乗っていた名前……ロズは、ロズフェルから取った名か?」
 ベルクは皆が感じてるだろう事を代表で聞いた。
「あぁ、思いついたのがそれしかなかった」
 ロズはうなずき言葉少なに理由を述べた。
「そうか。やっとすっきりしたな。聞いているとお前のいた世界ってのは、ここの二人が未来体験薬で見た未来に似ているな」
 シリウスはいつぞやの事を思い出していた。
「それはどういう……」
 何も知らぬロズは事情を訊ねた。
「実はあの双子、別の未来を体験した事があるんだ。魔法実験でキスミの制止を振り切ってヒスミがやり過ぎて調子に乗った挙げ句実験は失敗暴走。暴走は阻止出来るもヒスミは左足に損傷をキスミが廃人同然となった未来だ」
 ベルクは簡単に事情を説明した。
「……似ている。いた未来に……」
 ロズは納得した。
「そうか。しかし冷静に一連の事件を考えなおしてみたらやってる事がどれもあいつらの悪戯によく似てるよな……何で気付けなかったんだろうな……」
 ベルクは魔術師が起こしたこれまでの事件を振り返り溜息を吐き出した。
「確かに。あの二人のいつもの悪戯を凶悪にした感じだな」
 陽一も溜息混じりに。
「……そうですわね。やんちゃが過ぎれば確かに同じですわ」
 リーブラも同じく溜息。