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飛び交う光線と博士の砦

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飛び交う光線と博士の砦

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第1章 砦

「侵入者を確認、排除を実行します……」
 警報音を鳴らしながら、どこからとなく警備アンドロイドがルカルカ・ルー(るかるか・るー)達の前へ現れる。
「セキュリティを解除すれば良いんだよね……ここはダリル頼んだわよ!」
「お、おい!」
 ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)の制止を聞かずにルカルカは”壁抜けの術”で隣の部屋へと姿を消してしまった。

「で、どうするんだ?」
 泡銭 平助は拳銃を構え、ダリルを見た。
「……ルカがセキュリティを解除してくれるまでこいつらを大人しくさせるとしよう」
「おう、分かったぜ」
 ダリルと平助はそれぞれ目の前の警備アンドロイドと向き直る。

「対象02を捕捉、バレット発射します」
 警備アンドロイドのうちの1体がダリルへ向けて銃弾を放つ。
 ダリルは”行動予測”で銃弾を予期し、軽やかに左右へとかわす。
「誤差修正23度……バレット最重点完了、発射」
「っとっと!」
 警備アンドロイド達はセンサーを巧みに使いながら、ダリルや平助の位置へ目がけて銃弾を発射する
 平助はそれらを前転ローリングでどうにかかわしていく。
 平助は壁に隠れながら、警備アンドロイドを持っている拳銃で撃ち抜く。
「ちっ、頑丈な奴だ」
 が、1発程度では全く倒れる気配はない。
 その数秒後、警備アンドロイドたち銃が埋め込まれた右腕で平助をねらう。
 そのときだった、ビキニ姿の女性が目の前を遮った。

「新たな敵を補足……対象03を通達」
「こっちよ」
 ビキニの女性、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は”神速”と”軽身功”で隙を与えず警備アンドロイドの背後に回り込む。
 警備アンドロイドはすばやく背後へ振り返り電撃を放とうとする。が、セレンフィリティの姿はない。
 敵であるセレンフィリティを見失った警備アンドロイドは左右を確認し始める。
 狙い通り警備アンドロイドは混乱し、セレンフィリティを探し続ける。
「こういう錯乱にはやっぱり弱いのね」
「音声確認……180度」
 警備アンドロイドがようやく場所を把握した時には、セレンフィリティの”雷霆の拳”が警備アンドロイドの腹部へ命中していた。
「ピピピ……異常……イジョウ……カクニ……」
 黒い煙を上げながら警備アンドロイドは倒れる。

「対象03……危険有効数値最優先と確認。捕捉」
 別の警備アンドロイドが、無機質ながらもピコピコと音を立ててセレンフィリティを捕捉する。
 だが、その後ろにはセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が立っていた。
「油断は大敵よ」
 2挺の”ラピッドショット”で警備アンドロイドを狙い撃つ。
 体内に”ライトニングイエロー”を取り込み、”ライトニングウェポン”により稲妻を帯びた銃弾2発が見事に警備アンドロイドへと命中する。
「ピー……深刻なエラーが発生……電気系統エガガガガ」
 電撃は警備アンドロイドへと深刻なダメージを与えた。

「やってみる価値はやっぱりあるだろうな」
 ダリルは”水銃【破流】”を取り出した。
 警備アンドロイド達に何発も水銃を放つ。が、警備アンドロイドは俊敏にそれらを避けて見せた。

「いったい、どうするつもりってんだ」
「……あ」
 何が起きているのか分からない平助を横目に、セレアナは何かに気がついたようだった。
「知ってるか。水は電気を良く通すのだよ?」
 ダリルはふと笑みを浮かべると、床に向けて”機晶ビーム”を発射した。
 セレアナもそれに合わせ、電撃を帯びた銃弾を床に放つ。
 床は水銃により水びだしとなっていた。
 放たれた電撃やビームの電流は水を伝い、全部の警備アンドロイド達へと行き渡る。
「ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイガガガガガガ」

「まさかこれ……爆発とかしないわよね?」
 体中に電流を走らせ、けたたましい音を鳴らす警備アンドロイドにセレンフィリティは危惧する。
 幸い、警備アンドロイドたちは爆発せずに、煙を上げながら倒れていった。

 あとは、目の前の扉が開くのを待つのみのはずだったが、一向に扉は開かれなかった。

     §

 そのころ、”壁抜けの術”を使いセキュリティ解除ルームへと進んでいたルカルカは。
「あっちは……だめね」
 ”銃型HC弐式”を使い、ロボットの温度を感知してはよけるように進んでいた。
 そして、ついにセキュリティを解除するための部屋へとたどり着く。
 高さ5メートルくらいの巨大なモニターには、様々な部屋のカメラ映像が表示されている。
 そして、それを操作する巨大なキーボードにルカルカはあることを悟った。
「うっわ、これは専門家が要る」
 
     §

 ダリルは駆けつけると呆れた表情でルカルカを見た。
 その後ろには、平助をはじめとしセレンフィリティたちも集まっている。
「お前、何のために侵入したんだ」
「想定外」
 ルカルカは目を【><】にさせてごまかした。

 ダリルはゆっくりと、”機晶技術”をもとにそびえるモニター達を調べる。
 そして、その背後へと回り
「え、コンセント?」
 コンセントを引っこ抜いた。
 どこかのドアが開く音が廊下を響き渡った。
「え、今ので本当に開いたの!?」
「ああ、間違いない。というか、中身は思った以上にシンプルだ、言うなら電気のスイッチだ」
 ルカルカはうなだれた、見た目以上にシンプルだったなら壊れても良いからいじれば良かったと思うのだった。

 その時だった、閉まっていたはずの背後の扉が開かれた。
「……博士のセキュリティはあってないようなものです……」
「お前は!」
 そこにいたのはてペーパの助手だった。
 助手が一礼すると同時に、消えたはずのモニターが再び明かりを灯す。

「ようこそ我が砦へ、デカ助と契約者の諸君」
「ペーパ!」
 突然姿を現した白衣の男に平助は驚いた。
 まさか、自分から姿を現すとは思ってなかったからだ。
 すぐに平助はペーパ・ドクに向けて銃を向ける。
「はっはっは、デカ助はバカだなあ。これはモニターだ。つまり私はそこには居ない」

「まさかこれは罠だったの?」
 セレアナの言葉ににペーパは笑みを浮かべた。
「そのとおりだ。そこに来ればセキュリティー解除できると思っているお前たちは滑稽だったぞ」
「……罠だったら良かったのですが……それに解除できています。そもそもこの館のセキュリティーは誰でも解除できる謎の仕様……」
「うるさいぞ助手。セキュリティーは誰でも解除できなければ我が身に何かあった時に対応できないではないか」
「……先日、セキュリティー解除に失敗して、警備に追いかけられていたのは誰ですか」
「シャァラーーーーップ」
 ペーパとその助手の淡々としたやり取りを平助たちは茫然と眺めた。

「コホン。まあ、そのなんだ」
「あ、持ち直したわ」
「助手よやれ!!」
 そういうとモニターの電源は消えた。
「……はあ」
 助手は小さくため息をつくと再び一礼した。
「申し訳ありませんがそういうことで、貴方たちをここから先お通しすることはできません。できることならこのままお帰りください」