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1・2・3、ボム! 緊迫と危険のショッピングモール

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第3章 爆弾魔

「こっちだよ」
「ちっ、どんだけ入り組んでんだよこのショッピングモールは」
 泡銭 平助はルカルカ・ルー(るかるか・るー)に案内され、放送室へと向かっていた。
 先ほど運良く事務所から手に入れることができた、メンテナンスマップを元にルカルカは先を進む。
 そして、1つの小さな部屋にたどり着く。
 予想以上の大きい扉にダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は驚いた。
「ほお、放送室ってのはもっとこぢんまりした物を予想してたんだが」
「何でも、放送室というよりはテレビ配信が出来るスタジオなんだって」
 ルカルカは手元のマップを見ながら答える。
 マップを見る限り、人が100人は入りそうな広さがあった。

「あら?」
 扉の前でルカルカ達はビキニ姿の女性、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)に鉢合わせする。
 セレンフィリティの手元にも、ルカルカが持つものと同じメンテナンスマップが握られていた。
「あなた達、それに警部までいる、ちょうど良いわね」
「なんだあんたは」
 平助は怪訝そうな表情で、全身ビキニ姿のセレンフィリティを見る。
「一応、シャンバラ国軍の中尉よ? ああ、この姿はちょっと水着ショーのバイトやってたのよ」
「……は、そんな冗談」
「本当よ」
 セレアナが声のトーンを低くして言う。
 ただ、ルカルカはそのやりとりを聞きながらダリルと耳打ちする。
「あの2人、いつもあれよね」
「ああ」

 ようやく、平助は中尉であることを信じる。
 それでもなお、態度は変わらなかった。
「悪いが、ここは俺の島だ、俺が捕まえるぜ?」
「好きにどうぞ、さて」
 セレンフィリティは”籠手型HC弐式・P”のサーモグラフィを使いドアの向こう側をで調べる。
 どうやら、1人の人間反応しかない。つまり、犯人は1人なのだと、セレンフィリティは判断する。
「さて、じゃあそろそろこんなくだらないことを起こした奴と対面と行きましょうか!」
「ああ、頼む」
 平助とルカルカ達はそれぞれ武器を構え、突入の準備をする。
 ここで失敗すれば大爆発だってあり得る、何が起こるか分からない、そんな緊張感があたりを包む。
 不思議と鍵のかかっていない放送室のドアノブをセレンフィリティは掴むと、勢いよくドアを開け放った。

「動くな!!」
 セレンフィリティは先頭で放送室へと入り込むと、”洗礼の光”を部屋中に展開させる。
 後に続いて平助達が部屋へと突入する。
 イスに平然と座っていたのは黒マスクを被った男だった。
 セレンフィリティはゴッドスピードでひとたび黒マスクへと近づいた。
 「ふんっ、やっと来たか。待っていたぞ?」
 次に男の声がセレンフィリティの背後から聞こえた。
 先まで前に座っていたはずの黒マスクの姿はなく、いつの間にかセレンフィリティの背後に立っている。
 洗礼の光を受けてるにも関わらず、怯む様子すら見せず、淡々と喋り始める。

「この声……少なくともペーパではないな」
「当たり前だ、あんなヘボサイエンティストと一緒にするな。私の発明品こそが本物だ」
 爆弾魔の言葉にダリルは眉をひそめた。
「人を殺す爆弾が……か?」
「ああそうだ!! どうだ、芸術的だろ?」

「……とんでもなく狂ってるわね」
「人間誰しも狂ってるさ、あんた達だって何故怯えずここへ来た? 普通なら今頃怯えて、少しでも安全な所に逃げるだろう?」
「……」
 平助達は黙り込む。
 この男には何を言っても通らない、それだけがハッキリとしていた。

「話合うのも憚れるわね」
「うん、とっとと終わらせよう」
 セレンフィリティはため息交じりに、ルカルカは真剣な眼差しで爆弾魔を睨み付ける。
「おまえたちの相手はこっちだ」
 爆弾魔はパチリと指を鳴らした。
 途端、何処からともなく機械音が鳴り響き、影からアンドロイドが現れる。
 だが、形は今までのよりも角張っており、ペーパの作ったそれよりも武器を積み、戦闘に長けているように見えた。
「ハデスとかいうのはダメだったみたいだが、こいつらは別格だぞ、さてどこまで戦えるかな。行けっ!」
「Checked Battle Order...」
 
「電源を落としてたってわけね、どうしりでサーモグラフィでも見つからないわけだわ……でもこっちは4人、勝て――」
「Completion analysis...Attack!」
「痛っ、な、何……あれ、動けない?」
 セレンフィリティに背後に振り返る暇も与えず、その体に電撃のような物が走った。
 よく見ればアンドロイドの手に電流のような物が走っている。

「セレン!!!」
 セレアナは歯ぎしりさせながら、”絶望の旋律”をアンドロイドに向けて放つ。
 しかし、アンドロイドの動きは銃声をも凌駕していた。

「はっはっは、我こそまさに最高の発明者だ!!」
「ちっ、うぬぼれてやがる!」
 平助はアンドロイドと対峙する、セレアナを援護する。
 だが、セレアナの目の前までアンドロイドは平然と詰め寄ってくる。
「行って!」
 セレアナは”機晶バード”を取り出すと、アンドロイドに向けて攻撃するように指示を出す。
 小鳥の姿をした機晶バードは空へ飛び、上空からアンドロイドへとビームを発射する。
 だがアンドロイドの装甲は銃弾どころかビームにも耐性がついているようで、傷をつけるのがやっとだった。
「ちっ、銃弾どころかビームも――ってうおっ!!」
 平助の目の前で電撃がはじけ飛んだ。
 幸いルカルカの布都斯魂によって、平助は電撃から護られた。

「あっ、あそこに”まもる君”があるのだ!!」
「へ、何で分かるの?」
 夏侯 淵(かこう・えん)の言葉にルカルカは目を丸くして驚いた。
 淵は頬に汗を垂らしながら、爆弾魔の横にある机を指さした。
「……堂々とまもるくんと書いてるのだよ」
「一々、丁寧ね……」
「だがルカ、これはチャンスだ。あれさえ奪えれば」
「うん、援護を頼むわ!!」
 ルカルカは”超加速”を発動させると、光のような速度でまもる君の元へと追いかける。
 だが、アンドロイドはルカルカの行動を見逃しはしなかった。
「Tracking Release...Go to Attacke」
「ちょ、は、早すぎ!?」
 ルカルカはまもる君へ向かっていた足を90度切り替え、アンドロイドの追尾から逃げ回る。
 その間、ルカルカを援護するようにセレアナの機晶バードも追撃するが、レーザーはアンドロイドの装甲に弾かれてるようだった。
 それはダリルの予測通りだった。

「今だな」
 ダリルは”雷光のフラワシ”を放つと、”ポイントシフト”で、まもる君の前へと急接近する。
 アンドロイドの追撃は来ない。
 ルカルカへの追尾とセレアナへの攻撃に向かってるせいだ。
「CompleteError...SetDecoy」
 アンドロイドはモードを切り替え、ダリルやルカルカ達を一斉に倒すべく、何かを発射しようとする。
 だが、そのタイミングでダリルの雷光のフラワシが、アンドロイドを電撃で一瞬の怯みをださせた。

「このタイミングを待ってたのだっ!!」
 淵は一際大きな弓、”神弓『妙才』”を顕現させると、アンドロイドへと向けて構える。
 ”戦乱の絆”を結んだ”神威の矢”は”金剛力”が収束し、強い光を放つ。
 麻痺が切れたアンドロイドは回避行動をとろうとする。
 だが、淵の指は其れよりも早く、今かと飛び出しそうな矢を解き放した。

「逃がさぬ!」
「Analys Error...!」
 光を伴った矢はアンドロイドの腹部へと直撃し、大きな穴を上げる。
「Error...Err...」
 ぷつんという音とともにアンドロイドはたちまち静寂し、穴の開いた大きな人形となってしまう。

「ばっ、ばかな!! 物理装甲は完璧だったはず!!」
「終わりなのだ」
 淵は神弓『妙才』を、爆弾魔へと向ける。
 あれほどの力を出すには少々きついが、爆弾魔を射止める分には問題が無かった。
 爆弾魔は後ろへと下がろうとする。

「この状況でもまだ逃げるつもり?」
「ぐがっ」
 爆弾魔の背後に立って居たセレンフィリティは、爆弾魔へと控えめに”裸拳”を繰り出した。
 そのまま爆弾は床へと座り込んでしまった。
「さっ警部、手錠をかけて」
「お、おおう」
 平助はいまだに目の前の出来事に唖然としながらも、爆弾魔の手へ手錠を掛ける。
「協力は感謝するが、あんたら本当恐ろしいな」
「そうかしら?」
 平助の言葉にセレンフィリティは肩をすくめて見せる。

「そうだ! また、ルカを囮にしたっ!!」
 ルカルカは目を><にさせ、ダリルへと責め立てる。
 ダリルはそれを鼻で笑って見せた。
「確実だっただろ?」
「ぶーっ!」

「ぐっ、この天才発明家の我がこんなはずない……こんなこと――なーんてな」
「な、なんだ、こいつ急に笑い始めたのだ」
 淵は思わず気味悪さに、爆弾魔から1歩後ろへと下がる。
「おめでたいなあ!」
「ちっ、奥の手を持ってたか」
 爆弾魔は懐から、”まもる君2号”と書かれた発明品を持っていた。

「まだカーニバルは終わっていない!!」
「それはどうだろうな」
 突然扉の方から声が飛んできた。
 全員がそちらへと振り向くと、我が目を疑った。
「ペーパ・ドク……」
 まるで鬼の敵と言わんばかりの怒りの篭もった声で爆弾魔は名前を呼んだ。