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魔王からの挑戦状? ~起動せよ魔王城!~

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魔王からの挑戦状? ~起動せよ魔王城!~

リアクション

「全砲門開け! いちいち照準なんかつけなくてもいいわ! あの要塞を黙らせるのよ!」
 一際足の速い戦艦のブリッジで怒号を上げるセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)
 勝手に出てきて、勝手に沈黙したハデスを無視しようとしていたのだが、航行は最低限できるのかふらふらと魔王城と自軍の間へと進行している。
 唯の戦艦ならばそれすら無視すればよかったのだが、相手は巨大要塞、完全に進路妨害だ。
『どうやら、進路変更を行う余力もなさそうだ。 頼めるか、中尉』
「了解! 最大船速で突撃、ゼロ距離砲撃で勢いを止めるのよ!」
「全く、もう!」
 セレンの無茶ともいえる指示に一応の否定を示しつつもセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は舵を握る手に力を込める。
「いい、合図したら砲撃よ?」
 勢いよく走りだす、艦の中で2人は軽く視線を交わし、意思を疎通する。
 下手に喋ってタイミングを逃せば、それこそあの要塞に押しつぶされるだろう、だからこそ余計な会話は不要なのだ。
「今よ!」
「全砲門、斉射っ!」
 セレアナの合図に間髪入れず、セレンが叫ぶと要塞の側面ギリギリに面した状態で一斉に砲撃が放たれ、強烈な爆風が発生する。
「離脱!」
「わかってる、わよ!」
 爆風の次には砕かれた破片が襲ってくるのだ。
 それに巻き込まれない為にもセレアナは精一杯舵を切り、艦隊を大きく逸らして離脱する。
「……はぁ、よかった。 無事みたいね」
 爆風により、オリュンポスパレスは前進を止めてその場に静止、艦隊も多少のダメージはあるものの無事だ。
「何言ってるの? このまま敵陣に突撃して攪乱よ!」
「は、はぁ!?」
 一息つく間もなく、突撃しようとするセレン。
 しかし、辺りを見回して情報を集めると、ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)の駆るオクスペタルム号に文字通り乗っている紅龍やヒュドラーンの姿が見え、船自体も突撃準備をしているのが目に留まった。
「ああ、もう。 やるしかないのね……!」
「頼むわよ? 信じてるんだから」
 セレンの言葉を聞き、セレアナは目を丸くする。
「まったく。 自分でやれ、なんて言えないじゃないの!」
 信じている、そう言われれば応えるしかない。
 そして、セレアナは再び舵を握る。

「みんなー、準備はいい?」
 オクスぺタルム号に乗っている突撃部隊の全員にノーンが声をかける。
「突撃援護は任せるであります!」
 直ぐ横を航行する伊勢に乗り込んだ葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)から真っ先に通信が入り、他の乗組員からも了解の返事が来る。
 戦闘開始直後から、前線で暴れまわってくれたイコン部隊や他の部隊のおかげで敵部隊の意識はそちらに集中していた。
 つまりは、今がチャンスというわけだ。
「じゃあ行くよ、全速前進っ!」
 ノーンの合図と同時に、2隻の艦は魔王城へ向かって直進する。
「よぉし、あの悪趣味な要塞に風穴あけるであります!」
「はいはい……うん?」
 荷電粒子砲の準備をしながら、送られた標的データを確認するコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)は標的を見て不思議な顔をする。
「ああ、そう言う事……」
「ややこしくなるから一緒に吹き飛ばすであります」
 ニタリと笑う吹雪。
 送られてきたデータは魔王城とその射線上に入ってしまっているオリュンポスパレスだ。
 どうせなら一緒に吹き飛ばしてしまえ、そう言う事なのだろう。
「じゃあ、あっちにも伝えておくわね。 再起動前に沈黙させるって」
「おお、頼むであります!」
 やれやれ、と呆れつつもオクスぺタルム号に通信を送る。
 内容は進路妨害となるオリュンポスパレスを薙ぎ払う為に協力求む、だ。
「うん、オッケーみたいね。 中尉の砲撃で崩れたところもあるし、ついでに薙ぎ払っちゃいましょう」
 了解の返事の後、エネルギーの充填を開始し始める。
「荷電粒子砲、発射であります!」
 吹雪の合図に合わせ、同時に放たれる荷電粒子砲はオリュンポスパレスを巻き込み、魔王城までの道のりを遮る敵軍を見事に薙ぎ払った。
 後は真っ直ぐ進み、魔王城の城壁を崩して突入するだけ。
 ここまでは予定通りに進んでいたはずだった。
「な、なんですかぁ、あれ!」
 コックピットで魔王城を指さす魔王。
 彼女の悲鳴に近い叫びを聞いて魔王城を見直すと、それぞれの出撃口からゴブブリンが再度出撃しているのが見える。
 それも、先ほど大多数を撃破したにもかかわらず、その数は数え切れそうもない。
「あのままでは突撃もままならない、ならば!」
 魔王城へ向けて進撃するオクスぺタルム号から飛び降りたコア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)は魔王城から出撃する敵イコン群に向き直る。
「私は蒼空戦士ハーティオン!正々堂々、勝負!」
 敵軍に向け、堂々と名乗りを上げるハーティオン。
 彼の呼びかけは通じたのか、敵軍の視線は彼に集中する。
「さぁ、ゆくぞ!」
「ああ、もう。 無茶してるなぁ」
 ヒュドラーンのエネルギー補給を行っていたゲシュヴィントヒルフェのコックピットで突撃したハーティオンを見て、鬼龍 白羽(きりゅう・しらは)はそう呟いていた。
「どうする?」
「そりゃあ、行く方がいいよね?」
 サブパイロットシートに座る鬼龍 黒羽(きりゅう・こくう)に問いかけると、彼は直ぐに助けに行くことに納得してくれた。
「じゃ、そう言う事で」
「そう言う事って……」
 突入はどうするんだよ、と言いたげな鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)はその体をゲシュフェントヒルフェの腕に捕まれた。
「こうするのさ!」
「……え?」
 次の瞬間、貴仁の体は宙を舞う。
 それも、魔王城目がけて。
「む、無茶苦茶な……」
 ハーティオン以上に無茶苦茶している様子を見て酒杜 陽一(さかもり・よういち)は驚きを隠せない。
「って、放ってはおけないな!」
 彼ならきっと無事だろうが、放っておいては寝ざめも悪い。
 そう思う陽一はナノマシンによって構成された漆黒の翼を羽ばたかせ、貴仁を追いかける。
「城壁を壊して侵入するぞ!」
「あ、はい」
「冷静だな?」
「作戦は作戦。 うまくできるかは時の運もありますからどうなるかはわかりませんがヤれるだけヤってみようと思いますよ」
 やけに冷静な様子に呆れつつ、陽一が振るうソード・オブ・リコの光の刃が城壁に亀裂を走らせ、そこへしがみ付いた貴仁が魔王城の大地そのものに宿るエネルギーを呼び寄せ、流し込むことで大きく破壊する。
 結果として、綺麗に城壁は崩れて人が無事に侵入できるほどの空間が生まれ、2人はそこから城内へと消えていった。
「うん、無事みたいね」
 無事に侵入したのを確認した白羽は荒野で敵に囲まれるハーティオンの姿を見やる。
「補給も終わり、援護はお願いするね!」
「お、おう。 任せるですぅ!」
 軽く微笑んだ黒羽に対し、魔王はどこかしら不安げだ。
「じゃ、ちょっと行ってくるね!」
 ゲシュヴィントヒルフェは甲板から飛び降り、文字通り滑空しながらハーティオンの元へ向かう。
「予備の武器だがこっちの方が使いやすい。使え。 弾数は20」
 スティンガーは紅龍の予備装備として持っていたツインレーザーライフルを握らせると自身はブレード搭載型ライフルを構え、撃つ。
 見事に直撃し、頭部が吹き飛んだ敵機はその場に棒立ちになる。
「あそこ、狙えます? 止めをお願いします」
「お、おう。 任せろですぅ!」
 動かない相手の照準データが送られ、それにエリザベートが照準を合わせ、魔王が引き金を引く。
 光線を阻む障害などなく、直撃と同時に敵機は爆散する。
「ウイルス退治が終わったら私がイコンの操縦を教えますよ、だから今回は大人しくやりましょう」
「うぬぬ、是非もないですぅ」
 蓮華に応えながら、魔王は紅龍から送られてくる照準データを元に援護射撃を繰り返す。
 そんな2人のやり取りを見て、エリザベートとスティンガーはやれやれという気持ちを隠せなかった。
『そろそろ到着するであります! 全員衝撃に備えろ、であります!』
 吹雪から通信が入ると、魔王城はもう目と鼻の先。
『では、手筈通りに』
『で、あります、だね! 気を付けてね!』
 通信でやり取りをするノーンと吹雪はどこか楽しそうだ。
『ビックバンブラストで城壁を崩してやるであります!』
 距離の詰まった魔王城の城壁へ向け、伊勢から1発のミサイルが放たれ、起爆すると同時に当たりに凄まじい衝撃波が走る。
『そしてオクスぺタルム号のドリルで突破口を開くよ!』
 崩れかけた城壁にオクスぺタルム号の艦首に備え付けられたドリルが穿たれ、壁は崩れて入り口が作り出されていた。
「いたた……」
 衝突の衝撃はすさまじく、備えていたノーンは頭を正面のモニターにぶつけてしまい、額をさすりながら甲板へ出てくる。
 穴を穿ったオクスぺタルム号は突入した部隊の為の拠点及び脱出要素になる為動けない。
「ノーン、大丈夫ですぅ……?」
「うん、大丈夫。 そっちも気を付けてね、ウイルスが何をしてるかわからないから」
「ふふん、魔王はこの城なんて熟知してるですぅ! さぁ、魔王に続きやがれですぅ!!」
「あれ? もうみんな行っちゃったみたいだよ?」
 その場に残っているのは突撃をせず、入り口を防衛する為に残った面子ばかりで、エリザベートは早くしろと言わんばかりに床を踏み鳴らしている。
「ぬぁーっ! 置いてかれたですぅ!」
「お前のせいですぅ」
 大慌てで城へ飛び込んでいく魔王とエリザベート。
 そんな彼女の姿を見て、ノーンは少し心配になりつつも無事に戻ってきてくれると信じていた。
 先日育児で手一杯な御神楽 陽太(みかぐら・ようた)に魔王の話を聞かせたところ、非常に楽しげに聞いてくれていたのだ。
 今回も楽しい結末を彼に伝えられるように、ブリッジへ戻ったノーンは侵入したメンバーを追いかけに城内へ戻ろうとする敵イコンに照準を合わせ、ミサイルと同時にガトリングガンを連射する。
「ここから先は通さないんだから!」
 彼女の声に呼応するように、他の防衛部隊も一斉に砲撃を開始した。